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Replicant_World 〜ようこそ! ゲームの世界へ!〜  作者: ねぎとろ


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28話 『死に物狂いの攻防』

「っ! これは痛すぎてやばいかも……」


 立ち上がり、状況を打破するために考えを巡らせようと思ったが、そう簡単に考えさせてくれるほど甘くはなく、むしろ弱っている私を確実に殺す為にゴブリンたちは囲むようにして私へと攻撃を仕掛け始めた。

 勿論、易々と攻撃をくらってあげるわけにはいかず、なんとかして避け続けているが、それでも完璧に避ける事は不可能であり、私の体には傷がどんどん増えていった。


 また、それに加えて激しく動き続けているからなのか、腹部の傷がどんどん広がっていき、痛みは増していく。

 そして、その痛みは体を徐々に動き辛くさせていき、思考はどんどん蝕まれていった。


「はぁはぁ、目の前がフラフラする……」


 なんとかゴブリンたちの包囲網を抜けれたのはいいものの、血を流し続けたからなのか、視界は少しだけ歪んでいた。

 まだなんとか抑えられる段階ではあるが、これ以上の出血と激しい動きは控えた方が良いかもしれない。

 当然、そんな事をゴブリンたちが許してくれるとは思えないが、とはいえ今は何故か私へと迫ってきてはいない。何か企んでいるのか、それとも警戒しているのか。


 けど、どちらにしてもこれは有難い。回復中に攻撃をくらった弊害なのか、ポーションでの回復も遅かったし、今ならもう一本飲むことも出来る。


「――やばっ! あいつらが止まってたのはそういう事か!」


 ポーションを飲みながらゴブリンたちを観察していたが、どうやらリーダーと話していたようで、私へと視線を戻したその瞬間に、どうして距離を取ったままなのかを理解した。

 全員が離れて盾を捨て、剣に炎を纏わせている。そして、複数の斬撃はまるで吸収されるように一つの巨大な斬撃へと変貌していった。

 それはこの場所の温度を数度上げる程に熱く、当たってしまえば死ぬのは確実だろう。


 とはいえ、今ポーションを飲み切った私が今更避けようにも距離が足りずに飲み込まれてしまうし、耐えようと思って地面に伏せたとしてもきっと耐えられない。


 だとしたら、私に残された選択肢は一つだけだ。


「大丈夫。落ち着いて狙えば止められるはず」


 余程力を溜めているのか、未だに斬撃を放って来ないのは不幸中の幸いと言える。

 けど、それもいつまでかは分からない。今こうして私が銃を向けている事で早まって放ってくる可能性もあるし、私が止めるのが間に合わない可能性もある。


 そうなってしまえば私に与えられるのは死。それも、確実な死だ。

 だからこそ足掻いてでも止めなきゃいけないのに、私の手は震えて照準が合わない。辺りを包み込む熱気で汗はとめどなく溢れてくるし、未だに痛む傷が恐怖をより増長させていく。


「撃たないと、早く、早く!」


 時間にして数十秒も経っていない筈なのに、私の鼓動はどんどん早さを増していき、焦った私はそのまま引き金を引いてしまった。

 どっちにしても撃たないと死ぬからこそ、撃ったこと自体は悪くないが、問題は照準が定まっていなかったことだ。


「よ、良かった、止まった……」


 照準が合っていなかったものの、奇跡的に中心に居る一体のゴブリンへと直撃し、そのゴブリンが死んだことによって、巨大な斬撃は暴走したかのようにその場で爆発した。


「うわっ!」


 激しい熱風と砂埃が私を包み込み、思わず目を閉じたくなってしまうが、爆心地に居たゴブリンたちの生死を確認するまでは油断出来ない。


「――えっ!? はぁ!? あっぶな!」


 飛び交う砂嵐の中、一瞬だけ見えた光を怪しんでいたこともあって、私へと向かって放たれていた炎の斬撃をなんとか避けることが出来た。

 どうやらゴブリンたちはあの程度の爆発じゃ死ななかったみたいだ。


「とりあえずあの斬撃をどうにかしないとまずいな……」


 ポーションのお陰で腹部の傷はようやく治ったものの、ゴブリンたちが斬撃を使ってくる以上はまた同じような傷を負う可能性がある。

 それに、避けるのが難しい攻撃をされ続けるのは厄介極まりない。


 ただ、どうにかするにしても既に私への有効打として確立されている以上はそう簡単に止めることは出来ないだろう。


 それから砂嵐が収まり、視界が安定するまでの間、四方八方からの斬撃をなんとか避け続けた私は、完璧には避けきれずに少なからずダメージを負ったが、お陰で攻略方法を見つけることが出来ていた。


 まぁ攻略方法と言っても、単純に使われる前に倒すというだけなのだが、作戦自体はそう簡単にはいかない。

 そもそも、ゴブリン達も使う斬撃は連発というのが出来ないらしく、使う前の溜めと、放った後にも反動があるのか動きが止まってしまっている。

 そして、使う前と使われた後でどちらが隙が大きいのかといえば、圧倒的に使う前だ。


 だからこそ、使われる前に倒すのが私の作戦であり、わざと隙を作って斬撃を使わせなきゃいけない。


「炎で近付けないし、反動が怖いけどやるしかないか」


 高鳴る心臓を深呼吸して落ち着かせ、私はゴブリンに対して背を向けて銃と共に手を上へと上げる。

 そうして隙だらけになった私に対して、当然の様にゴブリンは斬撃を放とうと構え始めた。

 正直、近づいて攻撃してくる可能性もあったから警戒していたが、これで私の作戦の第一段階はクリア出来た。


 後は、私の射撃の腕次第だ。


「っ! 反動がやばいけど……!」


 斬撃が放たれるより早くに貫通弾を放つと同時に私の手は痺れていく。倒れてしまわない様に、必死に体へと力を込め、撃ち続ける。

 最初の一発はちゃんと当たったものの、それ以外はまともに狙う事が出来ず、心臓、頭、腹、足と、バラバラな部分を撃ち抜いてしまった。

 けれど、どちらにせよ最初の一発が致命傷になっていたようで、ゴブリンは絶叫することもなくその場に崩れ落ちていった。


「盾は拾わせないよ!」


 私を狙っていたのは一体だけではなく、もう一体居た為、そのゴブリンが死んだゴブリンを見て慌てて盾を取ろうと走り出すが、そんな事させるわけがない。

 背中をわざわざ見せてきている相手を見逃すわけもなく、その無防備な背中へと雷の弾を放って痺れさせた後、走り寄って貫通弾を放ち絶命させた。


 ただ、反動が収まる前に更なる反動を無理な体勢のまま重ねた結果、手だけじゃなく足までも痺れだし、これが収まるまでは貫通弾が撃ち辛くなってしまったのは非常にまずい。

 なにせ、数は減らせたものの、狙えるのが防具を装備していない頭だけになってしまったのだから。

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