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Replicant_World 〜ようこそ! ゲームの世界へ!〜  作者: ねぎとろ


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27話 『失態と重傷』

 銃を向けるだけで逃げようとする相手など取るに足らないと思い、油断して慢心したのが間違いではあるが、なによりも狙うべき相手を間違えた事で、最初よりも最悪な状況へと陥ってしまった。


 ――まず私は一体ずつ倒していこうと狙いを定め、貫通弾を放つことに決めた。

 これで上手くいって倒せれば御の字だし、ダメージを与えられればそれはそれでより恐怖を与えられると思ったからだ。

 しかし、標的にした相手は周りのゴブリンとは雰囲気も何もかもが全く違った。集団に紛れて気付かなかったが、このゴブリンは一切怖がっていなかったのだ。


 そして、既に撃ってしまった以上どうする事も出来ず、まるで自分が狙われるのが分かっていたかのように不敵な笑みを浮かべた後、盾を上手く傾けることで軌道を逸らしたのだ。

 確かに貫通弾は貫く事に特化している為、正面からの力には強いものの横から衝撃を加えると簡単に軌道を逸らすことは出来る。


 とはいえ、逸らすにも技術が必要だしなによりもタイミングがシビアで至難のはずだ。


 なのにも関わらず、目の前に居るゴブリンは最初の一発で完璧に防いでみせた。

 恐らく狙ってのものだろうが、少なくともその行動は私を驚愕させると共に、反動がある分安易には使えないと暗示させるには充分だった。


「――! ――!!」

「「――!」」


 私が驚愕して次はどうするべきかを考えて立ち止まっていると、弾を逸らしたゴブリンが私を指差し、他のゴブリンへと聞き取れはしないものの、明らかに命令しているのが理解できた。


 そうして命令を聞いたゴブリンたちの様子はうって変わり、逃げ腰だったゴブリン達は既に存在せず、目には死をも恐れない揺るがぬ意思を持った兵士へと変貌した。

 あくまでもそうさせたのはただの一声であるが、それだけで充分だったのだ。


「はっ? ――っ! クソっ、やっぱり一人だけ別格っぽいし、あいつがリーダーって事か……」


 咆哮とも、鼓舞とも取れる声は確かにゴブリンたちの戦意を取り戻させたが、それと同時に私の意識も現実へと引き戻され、ここからが本番だと改めて認識し、気を引き締めることが出来た。

 それに加えて、リーダー格の存在も確認できたし、そいつさえ倒せば統率は取れなくなって、私の勝利は揺るがないものになるだろう。


 だからこそ、狙うべきはそいつしかいない。


「ま、そう簡単にやらせてはくれないよね!」


 銃を向ければ、それを庇う様にして盾となるゴブリンと、撃った後の隙を狙う為なのかジッと睨んでくるゴブリン、それに、撃たせないように私へと隙を曝け出して攻撃してくるという風に分かれていった。


 どうやら周りから削っていかないと簡単には攻撃させてもらえそうにないようだ。


 そうして戦意を取り戻し、指示を出すリーダーが頭角をあらわしたことで、連携はより洗練されていき、私が攻撃できずに逃げ続けるという失態を晒す羽目になってしまった。


「えっ!? 嘘でしょ!? きゃあっ!」


 逃げ続ける私をいい加減仕留める為なのか、前衛を務めていた数体のゴブリンは盾を捨てて、剣を両手に持ち始めた。

 そして逃げ場をなくすように離れた位置から私へと向けて剣を思いっきり振り下ろし、まるで焔ちゃんが使う斬撃と同じ様に飛ばしてきたのだ。


 それもボスでもない取り巻きにも関わらず、斬撃は炎を纏っていたし、なによりも焔ちゃんより筋力があるからなのか斬撃は大きく、こんな事が出来るなんて予期していなかった為に、迫りくる斬撃を避けることが出来なかった。


 結果私は炎に包まれ、情けない声を上げてしまったのだ。


「雫!? 大丈夫?」

「う、焔ちゃん。大丈夫、だよ……」


 取り巻きの強さがボス並みに強いという事は、私の様子を見て焔ちゃんも理解したらしく、私を心配しながらも「まずは二人で取り巻きから倒した方が……」なんて呟いている。

 確かに二人で戦えば取り巻きを倒せるとは思うけど、今なお迫ってきているゴブリンキングがそこに乱入してくるのは必然だし、どうしてもそれは悪手だと思えてしまう。


「ううん。こっちはなんとかするから焔ちゃんはボスをお願い」

「ホントに大丈夫なの? だってその傷じゃ……」


 焔ちゃんの視線が私の傷口へと向いたのが見え、私は慌てて傷を隠す。

 腹部へと直撃した斬撃は、酷い火傷と傷を与えてきているが、別に動けないわけじゃない。痛みはあるし、動けば激痛が走るけど、それもポーションを飲めばいずれ治るから問題ない。


 こうして私が焔ちゃんに心配かけようとしないのはあくまでも私の強がりであることはきっと焔ちゃんも理解してくれているだろう。


「分かった。雫にそっちは任せるよ。でも、一つ約束して。無茶はしないって」

「うん。もう焔ちゃんに心配かけないようにするよ」


 私の目を真っ直ぐ見た後、はぁ、仕方ないなぁっと言ってから、焔ちゃんは取り巻きへの牽制をした後にゴブリンキングへと攻撃を仕掛けた。

 そして、残された私は腹部を抑えながら立ち上がり、この危機的状況を脱する為の手段を模索するのだった。

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