表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編ホラー集

カワイイ怖い

作者: Sasanosuke

 我々の食事に於いて最も気を付けなければならない言葉がある。


 それは


「カワイイ」


 である。


 その言葉は彼奴等が同胞を呼ぶ合図である。


 少し前までは彼奴等の雌の個体しか発しなかったこの警戒すべき鳴き声だが近年雄の個体も発声する様になっている。


 彼奴等が仲間を呼び多勢に無勢となってしまえば儂らが生きる為に必要な恐怖という感情を呼び起こすことが困難になる。


 それどころか彼奴等から眼の付いた板を振り翳しながら執拗に付き纏い挙げ句の果てに彼奴等の大きな手によって捕縛され連れ攫われる事になる。


 身を守る為には一撃で悲鳴が得られずこの鳴き声を狩猟対象が発声したら彼奴等が眼が付いた板を取り出すまでに逃走し隠れる事である。


 構造物の隙間や汚れた水が溜まる管や洞窟、彼奴等の縄張りは隠れる場所も多い。


 陽が昇っている間の狩猟は極端に成功確率が低く彼奴等から逃げ出す事も困難だ。


 次から夜を狙え。


 君儂の話を聞いているのかね?


 先達達の有難い忠告を聞かなかったから君は連れ攫われ彼奴等の巣にある堅牢な牢獄に捕まったのだぞ?


 何?


 小言は後にしてくれ?


 早く逃げよう?


 何を肝が小さい事を言っているんだ?


 まあ無理もないか……


 君最後に食べた悲鳴はいつだ?


 なんと! 一人で狩猟に成功した事が無い?!


 だから眼の付いた板を振り翳されても逃げずに脅かし続けたのだな?


 無謀な奴め。


 君をいじめた奴らも偶然に遭遇した臆病な個体の狩猟に成功しただけかもしれんのに……


 仕方ないあまり褒められた方法では無いが儂が編み出した彼奴等の巣でやれる成功確率が比較的高い狩猟方法を教えてやろう。


 君にとって恐怖でしかない彼奴等の巣だが狩猟場所として案外悪くない。


 隠れる場所も豊富で即席罠の材料となる物も多く正攻法で狩猟を行う同胞も少なくない。


 だが危険性が高いのも事実だ。


 彼奴等は巣に異物が侵入する事を極端に嫌い、彼奴等の巣を警護する獣や彼奴等が武装して襲い掛かってくる事がままあるからな。


 もしこの方法を試すなら警護する獣の有無は事前に確認しておくのだぞ?

 

 む……


 疑っておるな。


 まあ良い。これで口を覆って付いてこい。


 彼奴等の巣に侵入したならこういった巣の端にある埃っぽい隙間に入り込む。


 埃を吸わない為でもあるが決して手拭いは取るなよ?


 分かればよろしい。


 そして彼奴等に聞こえない高い声で叫ぶんだ。


 簡単だろう?


 騙されたと思って叫んでみろ。


 ハハハッ! エライでかい声だな!


 おっと笑ってはいるが騙してはいないぞ?


 この方法には時間がかかる。


 それに彼奴等の中でも悲鳴をあげない個体は多い。


 だがその場合は違う個体の巣で試せば良いだけだ。


 悲鳴をあげるまで何度でも。


 少なくともこの方法であの忌々しい「カワイイ」は聞く事はない。


 何? 彼奴等が聞こえない高い声で何故悲鳴をあげるか分からない?


 なに仕掛けは単純だ。


 彼奴等に悲鳴をあげさせる才能に持った儂らよりも臆病な存在にやってもらうのさ。


「いやぁー! ゴキブリ!」


 あぁ極上の悲鳴だ。


 君もそう思うだろう?


 さて急いで逃げようか!


 彼奴等が毒ガスを使う前に……

最後までお読みいただきありがとうございます。


面白いと思われた方は是非ブックマークや評価での応援をよろしくお願いします。


次回作の励みとなりますのでご協力お願いします。


※この作品は「ノベルアップ+」にも掲載されています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ