4 犯人は矢代先輩
するとその人は、
「きゃははは!」
と無邪気な笑い声を上げ、俺から一目散に逃げ出した!
「待ってください!」
俺も慌ててそれを追う。
「ちょっと!話はまだ終わってないわよ⁉」
そう言って美鈴も廊下に飛び出す。
朝から何とも騒がしいけど、この沢凪荘では割と日常的な光景である。
とにかく今は、犯人であるあの人を捕まえる事が先決だ。
そんな中犯人は沢凪荘の八畳間の食堂に駆け込んだ!
俺もそれに続いて食堂に駆け込み、犯人の華奢な右腕を掴んでこう叫んだ。
「俺の部屋に美鈴の下着を置いたのって、矢代先輩でしょ!」
すると犯人である彼女、張馬矢代先輩は、何ら悪びれる素振りもなくこちらに振り向き、
「にゃはは~、バレたか~」
と言って笑った。
この人は見た目は中学生(下手をすれば小学生)で通る程にちっこい体つきだが、歳は俺や美鈴よりもひとつ上の先輩だったりする。
ただ、極度のイタズラ好きという困った性格なので、この人のイタズラに、俺や美鈴はいつも振り回されているのだ。
「矢代ちゃん先輩!どうしてこんな事したんですか⁉」
後ろから追いついてきた美鈴が、あっさり罪を認めた矢代先輩に食ってかかる。
それに対して矢代先輩は、頭をポリポリかいてこう答えた。
「実は夕べ、洗濯をしようと思って洗濯機の中を見たら、中に美鈴ちゃんのパンツが残ってたから、これをお兄ちゃん(※矢代先輩は年下の俺の事をお兄ちゃんと呼ぶ)の部屋に置いといたら、お兄ちゃんはどういう行動を起こすかなぁと思うて」
そしてまた小悪魔な笑みを浮かべる矢代先輩。
まあ何というか、この人はこういう事をする人なのだ。
とにかくこれで俺の無実は証明されたので、俺はグッと右拳を握り、美鈴に向かって言った。
「ほれ見ろ!俺は何も悪くないんだよ!頭ごなしに俺を変態扱いするんじゃねぇよ!」
それに対して美鈴。
「だったらその右手に力いっぱい握ってるモノを、さっさと返しなさいよ!」
「あ」
そういえば美鈴のパンツを握ったままだった。
とか思っていると、美鈴は俺の右手からパンツをふんだくり、再び俺にビンタを炸裂させた。
ぶゎちこぉん!「ぶふぅっ⁉」
悪いのは矢代先輩なのに、結局俺が叩かれるのかよ・・・・・・。
俺は人生の不条理を嘆いた。と、その時だった。