21/75
9 矢代は人気者
商店街を歩いていると、
「おーっ!矢代ちゃんやないか!久し振りやな!」
とか、
「何年ぶりかしらねぇ~、すっかり大きくなって」
とか、
「また昔みたいに遊びに来てや、矢代ちゃん」
という具合に、商店街のおっちゃんや道行くおばちゃんが、親しげに矢代先輩に声をかけて行き、矢代先輩もそれに気軽に受け答えしている。
矢代先輩って地元でも人気があるんだなぁ。
まあこの人の性格なら、何処でも誰とでも仲良くなれるんだろうけど。
そう思いながら、俺は隣を歩く矢代先輩に声をかけた。
「人気者ですね、矢代先輩」
すると矢代先輩は、何やらバツが悪そうに頭をポリポリかきながら言った。
「ウチのおじいちゃんが、この街では結構有名やから」
「そういえば、さっき矢代先輩が指さした住宅街は結構高級そうでしたけど、矢代先輩って、実はお金持ちのお嬢様だったんですか?」
俺がそう尋ねると、矢代先輩はこれまたバツが悪そうに、
「う~ん、まあ、家はそれなりに大きいかなぁ」
と言って頭をかいた。
やっぱり、矢代先輩はお金持ちのお嬢様だったんだ。
でも、矢代先輩のこのバツの悪そうな素振りは何なんだろう?




