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沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た2  作者: 椎家 友妻
第二話 ずぞぞぞぞ
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1 本坂先輩とランチタイム

 ずぞぞぞぞ。

 翌日の昼休み。

俺は学校の食堂で、カレーうどんをすすっていた。

ここの学食のカレーうどんは一杯二百円。

値段がお手頃なだけあって、味はうまくもまずくもなく、入っている具も少ない。

そんなカレーうどんをすすりながら、俺は昨日の出来事をぼんやりと考えていた。

 昨日は矢代先輩の事で色々あった。

 矢代(やよ)先輩を(ねら)うという謎の黒い車が現れたり、

矢代先輩のお父さんが沢凪荘に来て、何やら重大な事を矢代先輩に告げ、

九州に出張に行ってしまったり。

それから矢代先輩はすっかり元気をなくし、今朝もげんなりした顔をしてたけど、詳しい事情を俺達に話そうとはしない。

この事について沙穂(さほ)さんは、

『これは矢代ちゃんの身内の問題みたいだし、私達は黙って見守ってあげましょう』

と言っていたので、俺や美鈴(みすず)も矢代先輩をそっと見守る事にした。

 でも、本当に大丈夫なんだろうか?

面倒な事(具体的に言うなら、俺が巻き込まれるような事)にならなきゃいいんだけど・・・・・・

ずぞぞぞぞ。

 そう思いながらカレーうどんをすすっていた、その時だった。

 「あの、お隣よろしいですか?」

 という声とともに、フワフワの髪を背中まで伸ばした、おっとりした笑顔が素敵な女子生徒が、焼き飯が乗った盆を持って、俺の(かたわ)らに現れた。

彼女は三年の本坂夕香奈(もとさかゆかな)先輩。

この学校の生徒会長にして、ミナ高三大美女の一人と言われる程の絶世の美女そしてナイスバディー

 性格はほんわかでおっとりしていて、誰からも好かれるタイプだ。

いささかおっちょこちょいな所もあるけど、それがかえって周囲の男子達のハートを鷲掴(わしづか)みにしている(俺もその一人だ)。

 そんな本坂先輩の申し出を断る理由は何処(どこ)にもないので、俺は(こころよ)く、

 「どうぞ」

 と言って隣の席の椅子を引いた。

すると本坂先輩は、

 「ありがとうございます」

 と言ってその椅子に座り、天使の様な微笑(ほほえ)みを俺に向けてくれた。

 う~む、相変わらず素敵(すてき)な笑顔だ。

ちなみにどうして俺みたいな特に取り柄のない一年の男子生徒が、こんな素敵な上級生の女子生徒と知り合いなのかというと、実は俺と本坂先輩は、おなじファミレスでアルバイトをしているのだ。

そのバイト先で仲良くしてもらっている関係で、学校でもこうして気安く声をかけてくれる。

それは何とも(うれ)しい事なんだけど、あんまり調子に乗ってると、本坂先輩のファンの男子達にシメられるので注意が必要だ。

ミナ高三大美女の人気はダテではないのだ。

 その本坂先輩は、テーブルに置いた焼き飯に、一味トウガラシをこれでもかというくらいぶっかけて(この人は、見かけによらす『超』が付くほどの辛党(からとう)なのだ)、それを一口頬張(ほおば)ってから俺に言った。

 「ところで、昨日は大丈夫だったんですか?」

 大丈夫というのは、矢代先輩の事だろう。

昨日バイト先で美鈴が本坂先輩に話したんだな。

 それに対し、俺は軽い口調で答えた。

 「まあ、何とか無事に(さわ)(なぎ)(そう)に辿り着きましたよ」

 「矢代さん、でしたっけ?美鈴ちゃんが言うには、何者かに狙われているらしいじゃないですか」

 「ああ、それがどうやら、相手は矢代先輩の身内らしいんですよね。

だからそんなに心配する事でもないかなと思うんですけど」

 「そんな事はありませんよ。最近は身内同士でも殺人事件が起こったりしていますし、下手をすれば、矢代さんの命に関わる事かもしれません」

 「そんな大げさな。そもそもあの人は何も話そうとはしないし、俺達にはどうする事もできませんよ」

 「それなら、こちらで独自に矢代さんの事を調べるまでです」

 「ええ?調べるってまさか、あの(・・・)に頼む気ですか?」

 「はい、尾田(おだ)さんにお願いしましょう」

 「・・・・・・」

 その名前を聞いた俺は、言葉を詰まらせて冷や汗を流した。

 尾田(おだ)清子(きよこ)

ミナ高新聞部の部長にして、本坂先輩と同じく、ミナ高三大美女に数えられるほどの美貌(びぼう)の持ち主。

しかしその影では『裏の生徒会長』とも呼ばれ、ミナ高の内外に幾多(いくた)の情報パイプを持ち、その情報力は、そこいらの私立探偵をはるかに(しの)ぐとも言われている。

そしてそんな彼女を敵に回し、恐ろしい目にあわされた人間が数多(あまた)に居るという(うわさ)もあるようだ。

 俺はその尾田先輩に以前お世話になった事があるけど、できればもう、あの人とは関わりたくないと思っている。

あの人と関わると、ロクでもない事に巻き込まれるような気がするのだ。

 なので俺は両手をブンブン横に振って、本坂先輩に言った。

 「いや!それはよしましょう!それだけはやめた方がいいと思います!」

 「そうですか?私は尾田さんに頼むのが一番いい方法だと思うんですが・・・・・・」

 「いえ!俺的に遠慮します!この件は矢代先輩個人の問題なんで、他人である俺達は何もしない方がいいんですよ!だから尾田さんにもこの事は黙っておいてください!いいですね⁉」

 「はあ、まあ、稲橋君がそこまで言うのなら・・・・・・」

 「お願いしますよ?この事はくれぐれも他言無用という事で」

 「分かりました。ところで、稲橋君は今日のバイトには来れるんですか?」

 「あ、はい。今日はちゃんと行きますんで」

 「そうですか、それは良かった」 

 「え?良かったって、どういう事です?」

 もしかして俺がバイトに行かないと、本坂先輩が淋しいって事ですかい?

という期待を込めて聞き返すと、本坂先輩はニコッと笑ってこう言った。

 「稲橋(いなはし)君が来てくれないと、岩山(いわやま)店長が(さみ)しがりますから」

 「ああ、岩山店長が・・・・・・」

 その名を聞いた俺は、ガックリとうなだれた。

俺のバイト先の店長は、尾田先輩とはまた違う意味で、関わりたくない人物だった。

 やっぱり今日も、バイト休もうかなぁ・・・・・・。



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