ブラック企業に勤めていた俺が、転生から逃げて幸せを掴むまで
ゆるーいのです。
「だ、誰か助けて!」
会社の帰り道で、かわいい女の子が強盗に襲われているのを見つけた。
俺は、ナイフを持った強盗に思い切りタックルして、一緒に倒れる。
「早く逃げて!」
女の子は、ためらいながらも、この場所から走って逃げていった。
獲物が居なくなった強盗は、舌打ちをすると、その場から去ってく。
異世界に行けるチャンスだったかもな。
そう思いながら自宅のマンションに帰る。
すると、道の真ん中で猫がゴロゴロとしていた。
向かい側からトラックが走ってくる。
「危ないっ!」
俺は、間一髪で猫を助けることができた。
危なかった……今度こそ異世界に行くところだった。
そんなワケないと自嘲しながら、俺は部屋に帰って寝た。
「ん……えっ!?」
目が覚めると、俺はマンションの屋上に立っていた。
「うわあああぁっ!」
危なかった、もう少しで……。
「ちゃんと死んでください!」
そこに現れたのは、白い翼の見間違えようもない女神様だった。
「異世界に行く気があるんですか!?」
「し、死ぬのは嫌です」
「もう異世界申請は通ってしまったので、変更は不可能です!」
そんな……俺は死ぬ……いや、女神様に殺されるのか。
おかしいと思った。
強盗に襲われている女の子とか、トラックに轢かれそうになってる猫とか。
「一生ブラックでも良いですから」
「逃げた場合、会社に飛行機が突っ込んで、あなたを仕留めることになります」
そんな……。
最低なクソ部長も、お子さんが大学受験だと言っていた。
オレが異世界転生を考えたから……。
「スローライフ系が良いんですが」
「人気があって倍率激しいですよ」
選べないのか……でも、巻き添えを作ることはできない。
「さあ、怖がらずに一気に行きましょう」
「ううっ……」
そこに、さっき助けた猫が現れた。
「きゃっ!」
猫は、女神様に襲いかかると、そのまま威嚇するように吠える。
すると……驚いた女神様のスカートから、悪魔の尻尾が見えた。
「お、お前! 悪魔だな!」
「バレたか! 人間を転生させて、悪魔の手先として使うのが私の仕事なのだ!」
「さっきの話は嘘なんだな!」
「お前は、また異世界に逃げたいと願う、そのときにまた会おう!」
俺は、懐いてくる猫を連れて、部屋に戻った。
翌日、仕事に出ると昨日強盗がいた場所に、かわいい女の子が待っていた。
「あの、昨日は本当にありがとうございました……」
悪魔の導きでも、いいことはあるものなんだなぁ。
俺は、そんなことをしみじみと思っていた。
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