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ワープ!白い光!そして再度戦闘!

 交代してからの自由時間も終わり、ゲート付近まで接近した。


 ワープ装置には制限があり様々な条件をクリアしないといけない。初心者はまずワープゲートを使えるようになることを目標にしてゲームを進めることになる。無論信濃は使用条件をクリアしているので何も問題ない。


「ワープゲート視認しました」


 シャーロックさんからの報告を受けてインベントリから双眼鏡を取り出して覗くと海に半分沈んでいるゲートが見える。鉄のような物がゲート外周部を覆い中を青く薄い膜のような物が張られている。あのゲートから大大西洋、北極、南極、大太平洋アメリカサイドにワープを行うことが出来る。


「機関最大船速」


 今回のイベントに参加する為にこのゲートを使う艦艇も沢山いる。ゲートが小さいわけではないが、ここで低速とかで航行していると渋滞を作ってしまうので出来る限り最高速度を出して突っ切る。


「「機関最大船速」」


 シャーロックさんと黒雪さんが反復ながら最大船速を出す。

少しずつ速度が上り、振動が大きなっていく。立っていると転びそうになる程振れが大きくなっていき、豆粒程度だったゲートが段々と大きくなり遂に見上げるほどにまで接近をする。巨大な半円が海に浮かんでおり薄いしょぼん玉の膜のような物がゲートの中に張られている。


「ワープゲートに侵入します」


 信濃が艦首からゲートに入っていき、信濃の周りの膜反応して青白く光りながら信濃を包み込んでいく。

主砲を飲み込み、ついには艦橋を飲み込む。

艦橋の正面のガラスから漏れる光に思わず目を瞑るがそれも一瞬の出来事でワープゲートを過ぎてしまえば光は収まり目の前に今までと同じように大海原が広がっている。


「梵天丸さん」


 仕様ゲートは間違えてないとは思うが一応信濃のマップで現在位置を把握する。あとワープ先は決まっているが一か所に集まりすぎないようにワープ先はある程度バラシてワープするように作られている。


「マップ情報更新されました。緯度60度経度0度、多少ずれはありますが大大西洋近海にワープされました」

「わかりました」


 ではこのままイベント海域まで進みましょう

そう言おうと口を開いた時だ。突如前方の海上に白く発光する球体が現れた。こちらが何か反応する前に発光する球体は急速に大きくなりながらこちらに向かって接近してくる。


「何の光?!」


 漆捌さんがそう叫ぶのを聞きながら俺達は光に包まれた。






「艦長、艦長」


 聞き覚えのあるようなないような声が聞こえる。優しく透き通るような声だ。そしてその声に合わせて体が揺さぶられている。誰が俺を揺らしている?


「んぅ……」


 瞼を開けながら頭を抑えて起き上がる。俺は気絶していたのだろうか?でも気絶や寝落ちをしてしまった場合は安全面を考慮して自動でログアウトされるようになっているはずだ。

でも、あの光に包まれてからの記憶が無いから俺は気を失っていたのかな?

とりあえずお礼を言わないと、俺は起こしてくれた人の方を向きながらお礼を述べる


「…えっと、起こしてくれてありがとうございま…す…」


 振り返るとスーシアが後ろに立っていた。あれ?誰か起こしてくれたんじゃないのか?そう思って周りを見るとシャーロックさん達も同じように気を失っている。なら一体誰が俺を起こしたんだ。突然のホラー展開に背中に冷たい汗が伝う。

しかし、答えを示すようにスーシアから声がかかる。


「大丈夫ですか?艦長、お顔が骸骨なので顔色が分からないのですが…」


 振り返るとスーシアは心配そうな顔を浮かべて俺を見ている。そんな表情を作れるほど俺は凝った操作をしていなかったはずだ。いや、それよりも俺はスーシアを座らせていたはずだ。それに俺が目を開けた時スーシアが俺に手をかけていたのを憶えている。


「…スーシア?」


 もしかして、スーシアが起こした?そして喋ってる?いやいやNPCがプレイヤーの指示なしに自発的に動くなんてAI的にあり得ないし、アップデートでしゃべれるようになったとしてもそんな事運営からのお知らせに書かれてなかったはずだ。

もしかしてサイレントアップデートしたのか?ここの運営は偶にサプライズで追加したりするからな。もし、それだとしたら運営神過ぎないか?しかも頭の中で妄想していた声の通りで神過ぎる。今度の課金額は少し奮発して運営にささげよう。


「あの、艦長そんなまじまじと見られると大変困るのですが…」


 スーシアが少し頬を赤らめながら目を逸らす。その仕草はAIとかそんなちゃちな物ではなくまるで本当に生きている人がしたような仕草に見えて思わず目を逸らして謝る。

やべぇ、声が出てさらに動くようになってめっちゃ可愛く見える。

モデルがあの人たちなのも一因だとは思うが声も俺好み過ぎる。

はぁ…尊い


 …っとずっとスーシアに気を取られているのも良くはない。俺はもう一度艦橋を見回す。

他の皆も気を失っているみたいで倒れている。やはり自動ログアウト機能が機能していないみたいだ。これは後で運営に報告しないといけないな。


 まずはシャーロックさんを起こさないと信濃が動かせない。外の景色が動いていないのを見るにシャーロックさんがオートパイロットを設定する前に気を失ってしまったようだ。このまま漂流状態ではいつ他の船から襲われるか分からない。

立ち上がりシャーロックさんに近づいて声をかけながら肩をゆする。


「シャーロックさん起きてください、シャーロックさん」

「んあ?……ヒッ!」


 目を覚ましたシャーロックさんが俺を見るなり恐ろしい物を見た顔をした。


「シャーロックさん、起きましたか良かったです」

「え?…あ、春雷さんでしたか、すみません。目を開けたら目の前に骸骨が見えたのでビックリしてしまいました」


 そうだ俺のキャラ骸骨の見た目している。その状態で起こせば怖がらせてしまうのは火を見るよりも明らかだ。スキン変えよっかな……


「そうですね。すみません、気が利かなくて」

「いえいえ、私も気を失って…あれ?自動でログアウトしなかったんですか?」

「ええ、そのようなので皆さんを起こしてくれませんか?本当は私が起こしたいのですが先ほどのように怖がってしまうと嫌なので」

「わかりました」

「私も手伝わせていただきます」


 スーシアもこちらに来て参加してくれるみたいだ


「はい、よろしく…え?動いた?なんで?」


シャーロックさんは動き出したスーシアに戸惑った顔を向けた。




 あれから数分後、艦橋にいる人に限るが全員を起こすことが出来た。皆スーシアが言葉を話して動き出したのに疑問を持つが運営のサイレントアップデートだろうと誰もが結論付けた。それ以外考えられない。


「とりあえず、医務室とコバンザメには通信で呼びかけて起こすことにします。シャーロックさん達はイベント海域への航路を設定しておいてください」

「わかりました…ってあれ?」


 シャーロックさんがマップを呼び出そうとカーソルを操作したがしばらくして手を止めて首をかしげる。


「どかしましたか?」

「いや…マップが出てこないんですよ」

「え、マジですか?」

「マジですね。レーダーがマップと同期出来ないので……レーダーは使用できますが現在位置を特定することは出来ません」


 梵天丸さんか管理しているレーダーを試しに見ると片方に『同期できません』と表示されている。

幸いレーダーそのものが使えなくなるわけでは無いので大丈夫だが、それでもマップ確認が出来ないと現在位置が何処なのかが分からなくなる。


「まずは進みましょう。動けば他のプレイヤーの船に出会えるかもしれません」

「わかりました。第三船速で航行します」


 しかし、マップが使えないとかこのゲームをやるうえで致命的なバグだ。今の内にカスタマーセンターに連絡しようか。そう思いメニュー表を出そうと腕を振る。

しかし、現れない。


「あれ?」


 もう一度腕を振るが現れない。メニュー画面も現れないし、よく見れば船の耐久値や俺のHPを表示するUIも見当たらない。メニュー画面が出ないと言うことはログアウトできない。しかも、睡眠や気絶による自動ログアウトが出来ないということは自発的なログアウトが出来ないと言うことだ。つまり俺達はこのゲームを止めることが出来ない。


「どうかしましたか?春雷さん?」


 俺の様子に気が付いた黒雪さんが問いかける。


「え、いや、それが…」

「前方にレーダーの反応があります」


 ログアウト出来ないことを相談しようとしたら梵天丸さんから報告が上がる。


「え、取り合えず映像をこちらに頂戴」

「わかりました」


 ひとまず椅子に深く寄りかかり深呼吸をする。

落ち着け、ひとまずこのことは後回しにしよう。今話せば確実にパニックが起こる。その間に向こうが襲ってくることがあったら、確実に負ける。

モニターに映る船はさっき攻撃した初心者狩りの船と同じガレオン船、しかも海賊旗を掲げている。


 違う点と言えば船の形が今まで見たことのある船よりも違うように感じる。

大体の船は自分流に改造が施されているが、それでも元となる船の面影は多少残っている物だ。だがこの船は元になった船が分からない。ガレオン船ならアークロイヤル号等の有名どころがゲームで使える船だ。それがこの船から見られない。だが、どちらにしてもあの船はこちらに海賊旗を掲げながら向かってくるなら撃沈するのみだ。


「この辺りに他の船はありますか?」

「いえ、レーダにこの信濃以外の船はあのガレオン船だけです」


 つまり相手はこちらを襲う気満々という訳だ。旗を出しておいて襲わないなんてこともないだろう。それに向こうもこちらに艦首を向けているから気が付いているはずだ。なら襲われる前に襲い返す。


「では撃沈しましょう。主砲発射用意、コバンザメも発進させるので誰か起こしてください」

「ではコバンザメに関しては俺が通信しよう」

「お願いします黒雪さん」


 手を挙げた黒雪さんにコバンザメは任せて、まずは前方の海賊船に集中する。


「主砲発射用意!ただの海賊船とは思いますが、戦艦に無策で突っ込んでくるとは考えにくいので十分注意をしてください!」

「オッケー!主砲発射用意!目標、前方の敵海賊船!主砲一番二番魔力供給開始!」

『了解しました!』

「あ、本当に受け答えしてくれるんだ」


 砲手とのやり取りに漆捌さん少し驚きながら発射準備を進める。やはりスーシアだけではなく全NPCに適用されているのか、それにして動きがリアルだし、声にしても棒読みではない所を見るに声優を起用したと思うのに俺の記憶にない声だ。しかも受け答えも自然で違和感が一切ない。どんだけ運営頑張ったんだろう。

そんなことを考えている最中でも射撃準備は進んでいく。


「レーダーとの同期を開始、完了次第自動照準を開始します」


 この船の照準機能は自動照準と手動照準の二つがある。自動照準は仰角や距離を自動で測定し、回避行動が無ければ確実に当たる位置に自動で照準を合わせてくれる機能で、対して手動照準は先ほどの入力を全て手動で行う必要があり手間取っていると先手を取られる危険性があるがその分細かく調整を行うことが出来る。

先ほどの戦闘では細かく発射角度を設定する必要があったので使えなかったが、今回は真正面から吹き飛ばすので自動照準を使う様だ。


「照準よし、測敵よし、エネルギー重点完了」

「よし、撃ち方はじ――「敵船から熱源反応!」」


 梵天丸さんから言葉と同時に敵船から閃光のような物が一閃、艦橋を掠める。幸いにして直撃はしていないが掠めた衝撃により船が少し揺れる。幸いにして直撃はしてなさそうだがガレオン船だからだと完全に油断していた。


「まさかのビーム兵器完備かよ!」


 ビーム兵器は最高建造度のww2の船舶を建造することが出来るレベルまで上がったプレイヤーに対して解放される追加要素で、エネルギーを大食いする点に目を瞑ればゲーム内で最大火力を発揮する平気だ。その代わり場所は取るし、水中では撃てないし、ビーム兵器一発撃つのにとんでもないエネルギーを消費する欠点を多く抱えた扱いどころの難しい平気だ。この信濃にも採用しようか検討されたが採用すると魔力水のリソースを多く消費して他に回せなくなるので採用を見送った事情がある。


 まさか海賊船にビーム兵器を搭載するとは、調子に乗ってラムアタックを仕掛けなくてよかった。そして撃ってきた言うことはこちらが狙いと言うことが確定した。しかもこの攻撃は沈める気満々の攻撃だ。やったらやり返す!


「反撃しろ!!」

「第一、第二主砲撃ち方始めー!」


 主砲から発射された閃光は真っ直ぐに飛んでいき、そのままの勢いのまま敵海賊船を貫通した。艦首から艦尾にかけてぽっかりと大きな穴の開いた海賊船は主砲の砲撃が終わるのとほぼ同時に爆発した。

「敵船沈黙、沈んでいます」

「あれ?思ったよりもあっさり片付いたな」


もっと反撃してくると予想していた漆捌さんが拍子抜けしたこえをだした。戦艦に向かってきてビーム兵器も搭載しているならもっと抵抗してくると思ったが、思ったよりもあっさりと沈んだ。一応警戒はしたまま黒雪さんに話しかける。


「フソウさんは?」

「起きていたぞ」

「わかりました。ありがとうございます」


 俺は艦長席にあるコンソールを操作してコバンザメと通信をする。


「おはようございます大丈夫ですか?」

『「ああ、済まねえな。気を失っちまったみたいだ。幸いログアウトはしなかったようだがな」』

「そのようですね。それと早速ですが発信して海底に沈んだ資材やら荷物を取って来てもらえますか?」

『「了解した。それが俺達の役割だからな。すぐに出発する」』

「お願いします」

『「それと一つ聞きたいんだが…」』

「なんですか?」

「何か俺のNPC達が話すようになったんだが何か知ってるか?」


 ああ、なるほどコバンザメにも乗組員としてNPCが配備されている。アップデートで自発的に行動できるようになって起こしてくれたのか。これなら医務室にもナースNPCがいたから大丈夫だろう。


「ああ、多分ですが、運営のサイレントアップデートかと」

『「ああ、なるほどな。納得できた、すぐに出発するよ」』

「いえ、それと収納されている船を出して海面上に浮いている物も拾って来てください」


 この船には俺の他に信濃に乗っているプレイヤーが乗っていた船が収納されている。流石にガレオン船程の大きさではなくボートレースに使われるような小型のモーターボートぐらいの大きさからゴンドラ程度の大きさの船が収納されている。沈没した船からドロップした物は上と下両方から回収することで効率を上げている。


「じゃあ、俺が行くね」


 そう言って漆捌さんが席を離れてエレベーターに乗り込んだ。まだ言いたいことがあったけど仕方ない、漆捌さんには帰って来てから伝えることにして今いる人たちに向けて指示を出す。


「信濃はそのままの速度で敵海賊船付近に近づいて停泊、コバンザメと零船を回収後に少し話したいことがあるのでこの場で待機します」

連続更新はここまで

以後不定期に投稿します。

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