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あの花のように。  作者: Ryo-u。
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それぞれの色

百合ものにチャレンジいたします。

 ヤエザクラ。花びらが幾重にも重なった力強い桜だ。「豊かな教養」「善良な教育」そして「しとやか」と言う花言葉が添えられている。私はこの花が大好きだ。


 私には八重咲良という名前がある。「豊かな教養としとやかさをもちあわせた、桜の似合う女性になるように」という由来のもと名づけられた。

 私はこの名前があまり好きではない。というか嫌いだ。

 自分で言うのもなんだかむず痒いが私は美人でわりと異性からもモテる方だ。顔はそこそこ整っていて、スタイルも良い。肌も綺麗だ。

 だがそれは決して親が美人だからと言うわけではない。身体やメンタルのメンテナンスをを怠っていないだけだ。それなのによく同性からは「羨ましい」などと言われる。

「八重さんってほんと綺麗だよね!やっぱりなんか特別なこととかしてるの?」

「特別なことはしてないかな。まぁ強いて言うなら筋トレかな〜。」

「へぇ〜筋トレか〜。なんか意外だな〜。なんかもっとおしとやかなイメージだったかも。」

 私が自分の名前を嫌いな理由がまさにこれだ。名は体を表すとはよく言ったもので初対面の人、そこまで仲良くない人にはよくこんなイメージを持たれる。

 私は毎日水を2L飲み、本を読む。そして週4でジムに通っている。食事は肉や魚などのタンパク質とほうれん草を必ず取るようにしている。基本的に人工甘味料などの添加物は取らないようにしている。

 人にどう思われているかは知ったこっちゃないが、正直根っから美人なんて思って欲しくはない。

「咲良がおしとやかなわけないでしょ。見た目に騙されちゃダメだよ〜。」

 話に割って入ってきたのは幼なじみの吉野染。みんなには内緒にしているが私の彼女だ。

「まぁ染よりはマシよ。」

「否定はしない。」

 染はソメイヨシノのような人間だ。春のような陽気な笑顔に、どこへ行っても受け入れられる美しさを持ち合わせている。流れる汗や涙は舞い落ちる花びらのようだ。

 私は染になりたい。だが残念なことにそれは叶わない。

 なぜなら私は八重咲良だからだ。

 染になれないなら私は私でいるしかない。

 染のような暖かく美しい人間になれなくてもいい。一部の人にしかわかってもらえなくてもいい。それでも大きく、幾重にも重なって、何度でも咲かせ続ければいい。ヤエザクラのように。花言葉や名前の由来なんて知らない。しとやかなのは見た目だけで十分だ。

 あなたに微笑みながら高尚な風格を纏い、いつまでも隣で咲き続けられるように。



 ソメイヨシノ。比較的寿命が短く人の手を借りなければ生きていけない桜だ。「純潔」「誇り高い」「優れた美人」などが花言葉として添えられている。私はこの花が大好きだ。


 私の名前は吉野染だ。「多くの人から愛され、多くの人の力を借り、あたりを自分色に染められるような優れた人間になるように。」と言う意味を込められ名付けられた。

 正直に言うと私はこの名前が嫌いだ。

 自信を持って言うことではないと思うが、私は自他共に認める美人だ。見た目に関しては私ほど綺麗な人はそうそういないとまで思ってる。そしてモテる。

 でもあくまでそれは自分で掴み取ったものだ。確かに親の遺伝もあるのだろうが身体や精神のケアを毎日しているからに他ならない。にも関わらず同棲からは「羨ましい」と言われる。

「吉野さんって本当に綺麗だよね!やっぱりなんか特別なこととかしてるの?」

「んーー、特別ではないけど、メンタルケアとかはしてるかな。本読んだり。」

「へぇ、本読むといいんだ。私もやってみようかな。」

 私が自分の名前を嫌いな理由はここにある。私がしていることが正しいと思い込む人が多くいることだ。勝手に他人が自分の中に入ってきて勝手に私の色に染まっていかれているようで気持ちが悪かった。

 私は毎日2L水を飲み、本を読む。週5日ジムに通っている。食事はほうれん草を中心とした野菜に肉や魚、卵からタンパク質を取るようにしている。添加物はもはや敵だ。

 人にどう思われても対して気にしないが、真似されるのは正直気持ちが悪い。

「染と同じ生活するとまじで疲れるからまじでやめといたほうがいいと思うよ。」

 話に割って入ってきたのは幼なじみの八重咲良だ。みんなには内緒にしているが私の彼女だ。

「咲良だってほとんど一緒じゃん。」

「まぁね。」

 咲良はまるでヤエザクラのようだ。いつも冷静でとても力強く教養が豊か。それなのに奥深くにしとやかさをも感じる。何をしても絵になり人を惹きつける。

 私は咲良になりたい。でもそれはできない。

 それは私が他の誰でもない吉野染だからだ。

 だから私は私でい続ける。

 咲良のような人間になれなくったっていい。咲いていられる期間が短くてもいい。賞味期限が短くってもいい。一つ一つが小さくても、色が薄くても、量産型でも何度でも咲かせて見せればいい。ソメイヨシノのように。周りからの勝手な愛なんて花びらと共に受け流せばいい。

 あなたの隣で空咲き続けられるように、いつまでも優れた美人でいよう。









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