第二十二話 闇のモンスター軍団と魔法炉戊軍団の対決!(その2)
「魔獣ケルベロスはわたしが倒す! 二人は他の二匹をよろしく頼む!」
地獄の番犬ケルベロスに真っ向から立ち向かったのは、聖騎士アーニーの搭乗する魔法炉戊グランドクロストだった。
全高約七メートルの騎士鎧タイプの中型機だ。純白の機体の各処に黄金を配した美しい造形の装甲は、王国騎士団の象徴と呼ぶにふさわしい。
兜飾りは聖騎士団のシンボルマークの剣と盾の交差した紋章で、胸のオーラクリスタルにも同じマークが刻印されている。
武装は聖印の刻まれた神聖剣ホーリーソードと聖騎士の盾ナイトシールド。攻守完璧な万能タイプの王国騎士団のエース機である。
「伝説の魔獣ケルベロスが敵であろうと関係ない! このグランドクロスの神聖剣で真っ二つにしてくれる! 覚悟しろ!」
グランドクロスは双眼式の水晶眼に金色のオーラを宿し、地獄の番犬ケルベロスに向かって、ナイトシールドを掲げて突進した。
地獄の番犬ケルベロスは猛スピードでジャンプし、前足の鉤爪で襲いかかってきた。
純白の聖騎士炉戊は神聖剣ホーリーソードを横薙ぎに振るった。ケルベロスの前足の鉤爪と空中で交差し、甲高い音が響き渡る。
地獄の番犬は着地と同時に体を反転させて、横合いから突進してきた。ワイバーンナイトは聖騎士の盾を掲げて、魔獣の鉤爪を受け止めた。
その姿勢のままホーリーソードを疾風の如く繰り出し、ケルベロスの胸元に剣先を突き刺した。
傷口から暗黒魔力の霧がモウモウと漏れ出している。この巨獣モンスターは暗黒魔力で生み出された幻像のため、血は噴き出ないのだ。
地獄の番犬は怒りの咆哮を上げると、三つの首から爆炎のブレスを吐き散らした。
グランドクロスが掲げたナイトシールドは二つの真紅の爆炎を防いだものの、最後の一つを側面に受けて、魔法粘土製の装甲が焼け焦げた。
「さすがは地獄の番犬と恐れられる魔獣だな。だが、このグランドクロスは決して怯まない! 必ずやこの場でお前を倒してみせる!」
純白の聖騎士炉戊は決死の覚悟をまとい、大地を蹴り立てて疾走した。
グランドクロスは聖騎士の盾で魔獣の鉤爪を防御しながら、ケルベロスの右側に滑り込むように踏み出した。美しい弧を描くように神聖剣ホーリーソードを振り下ろす。
白銀に煌めくミスリルの刃が地獄の番犬の右の首をバサリッ!と斬り落とした。
首元の切断面から、暗黒魔力の霧が血潮のように猛然と噴き出した。残りの二つの顔が苦痛に呻き、直後に憤怒の咆哮を上げる。
真紅の目が激情に猛って吊り上がり、二つの口から同時に火焔の吐息を噴き出した。
グランドクロスは再びナイトシールドで防御し、神聖剣ホーリーソードで真ん中の首を狙ったものの、今度は前足の鉤爪で防がれた。
その後も、聖騎士アーニーの操る純白の聖騎士炉戊は、地獄の番犬に正面から挑みかかり、激しい死闘を繰り広げていたのだった。
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「サイクロプスはボクに任せて! 魔法弾をバシバシ撃ってやっつけるよ!」
一つ目巨人サイクロプスに挑戦を宣言して立ち向かったのは、魔法師フォクセルの搭乗する魔法炉戊ルーンスマッシャーだった。
全高約七メートルで魔法師ローブ式の装甲コートを羽織った中型機だ。
鮮烈なクリムゾン装甲の各処に描かれた魔法陣は、魔法師専用の機体の証拠である。
兜は魔法師の帽子のように縦長に尖っている。兜飾りは魔法師のシンボルマークの魔法の杖で、胸のオーラクリスタルにも同じマークが刻印されている。
魔法弾を撃ち出すマジカルハンドガンを片手にひとつずつ装備しており、火炎・氷結・雷撃・竜巻などの様々な魔法弾を連射して戦う。魔法師ローブ式の装甲コートは薄いものの、全体に強力な防御シールドの結界効果が付与されている。
「伝説の巨人モンスターと戦えるなんて光栄だね! ボクのルーンスマッシャーは魔法師の塔の最高傑作なんだから、必ず倒して見せるよ!」
ルーンスマッシャーはモノアイ式の水晶眼に真紅のオーラを宿し、両手の拳銃タイプのマジカルハンドガンを正面に構えた。そして、ドバババンッ!と一つ目巨人に向かって魔法弾を連射した。
無数の火焔弾と氷結弾が空中に光芒の尾を引いて、サイクロプスの巨体に命中した。
同時に魔法弾が炸裂し、巨人の胸部に強烈な火柱が上がり、氷結の氷柱が突き刺さる。
しかし、一つ目巨人は無数の魔法弾を受けても平然としていた。豪快な雄叫びとともに轟音を立てて突進すると、巨大な棍棒を振り下ろしてくる。
真紅の魔法師炉戊は両脚後部の疾風スラスターを噴射し、軽業師のような身軽さで宙を舞って、巨大棍棒の一撃をかわした。空振りの突風が吹き抜け、土埃がブワッ!と上空まで舞い上がる。
凄まじい威力の一撃だった。
直撃を受けたら、装甲コートの防御シールドは簡単に破壊されて、魔法粘土製の機体はクシャクシャに破壊されるだろう。
「ホントに凄いや! 噂通りサイクロプスはパワーも耐久力もやっぱり圧倒的だね。でも、次はボクが開発したスーパーハイブリッド魔法弾でいくよ! これならどうだ!」
ルーンスマッシャーは空中で軽やかな宙返りを披露して、サイクロプスの連続攻撃を避け続けた。そして、一つ目巨人の頭上から二丁のマジカルハンドガンを連射した。
火焔、風刃、浄化タイプの超混合魔法弾と、氷結、岩石、浄化タイプの超混合魔法弾がサイクロプスの全身に雨あられと降り注ぐ。
少年魔法師が魔法弾技術の粋を凝らした最高のスーパーハイブリッド魔法弾は、一つ目巨人の巨体の至るところを爆炎の風刃で焼き焦がし、或いは、氷結した岩石の槍で刺し貫いた。
サイクロプスは多数の裂傷を受けて、一つ目の顔を苦痛に歪めた。無数の傷口から闇の暗黒魔力の霧が漏れ出している。
一つ目巨人は歯を食い縛って、憤怒の形相になった。そして、猛り狂ったように猛スピードで何度も巨大棍棒を振り下ろした。
ルーンスマッシャーは疾風スラスター噴射で縦横無尽に疾駆して距離を取りつつ、スーパーハイブリッド魔法弾を撃ち続けた。
その後も、魔法師フォクセルの操る真紅の魔法師炉戊は、一つ目巨人サイクロプスを軽快なスピードで翻弄しつつ、魔法弾を撃ち込み、激しい死闘を繰り広げていたのだった。
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「邪悪な異形のバケモノよ、ホーリーハルバードの聖なる裁きを受けよ!」
毒サソリ巨獣ギガントスコーピオンと真正面から対峙するのは、神官戦士スカードの搭乗する魔法炉戊シールドフェンリルだった。
全高約八メートルの重装甲タイプの大型機で、ガッシリとした体格の重量感のある機体だ。まばゆい純白の神官の服式の装甲コートをまとっている。
純白の装甲の各処に描かれた白銀の聖印は、神官戦士専用の機体の証拠である。
兜は司祭帽子を被ったように細長く尖っている。兜飾りは精霊巨神の聖印で、胸のオーラクリスタルには同じマークが刻印されている。
超大型のタワーシールドで防御に専念しつつ、聖印を刻印したハルバードでカウンター攻撃を行う防御戦法主体の機体である。
「如何に強大なパワーを持っていようとも、我がシールドフェンリルのタワーシールドは貫けないぞ。このシールドフェンリルがお前の甲羅の隅々まで完全に浄化してみせよう」
シールドフェンリルのゴーグル式の水晶眼に紺碧のオーラが宿った。
純白に艶光る特大のタワーシールドを機体前面に立て、ホーリーハルバードの切っ先を天に向けて、毒サソリ巨獣ギガントスコーピオンと対峙した。
毒サソリ巨獣は、前脚のハサミを突き出して襲いかかってきた。
純白の神官炉戊はタワーシールドで左脚のハサミの猛撃を凌ぎつつ、ホーリーハルバードを振るって右脚のハサミと撃ち合った。
一撃が触れ合うごとに、互いの接触面から盛大な火花が舞い散り、甲高い衝突音がひっきりなしに響き渡る。シールドフェンリルはギガントスコーピオンと堂々と渡り合っていた。
重量級の魔法炉戊に相応しい戦い振りである。しかし、このままでは埒が明かない。
「なるほど、これは強敵ですね。ただの巨大な毒サソリではなかったか……では、我が愛機シールドフェンリルの持つ最大限の力を使って、お前に聖なる裁きを授けましょう!」
シールドフェンリルはホーリーハルバードを高く掲げ、斧槍の刃にオーラパワーを集約した。
強烈な青白い火花がミスリル製の刃の周囲にビビビッ!と舞い散る。
そして、タワーシールドに肩と腕を密着させて固定し、その防御姿勢を維持しつつ、重量級の走行音を響かせて疾駆した。
左脚のハサミの強烈パワーの一撃を易々と盾で受け止めると、力を振り絞った斧槍の一撃を右脚のハサミに向かって振り下ろす。
ホーリーハルバードの先端が猛烈な風切り音を伴って右脚の甲羅に命中し、硬い甲殻を叩き割った。
そして、前腕ごと右脚のハサミを斬り落とした。毒サソリ巨獣は苦悶のにじむ唸り声を上げ、毒針の尻尾を横合いから突き刺してきた。
純白の神官炉戊はタワーシールドを横にずらして、巨大な毒針を防御した。さらに、ハルバードのミスリル製の刃で腹部の甲羅を切り裂いた。
ギガントスコーピオンは一度後退し、口元から暗黒魔力の息を噴かせた。
右手の切り口から闇の泡と共に肉と甲羅が盛り上がり、巨大なハサミが再生した。この毒サソリ巨獣は、凄まじい回復力の持ち主なのだ。
神官戦士スカードはその様子を見て、悠然とシールドフェンリルの装備を構え直した。
暗黒魔力で傷が回復するなら、毒サソリ巨獣の暗黒魔力が尽きるまで戦うだけだ。
その後も、神官戦士スカードの操る純白の神官炉戊は、毒サソリ巨獣の強靭なハサミと正面から渡り合い、激しい死闘を繰り広げていたのだった。
こうして、三機の魔法炉戊たちは、邪悪な巨獣モンスターたちと戦い続け、王都の街並みへの侵攻を何とか食い止めていた。
しかし、そうしている間にも暗黒魔法師は真の黒き邪竜復活の儀式を執り行っていたのだった。




