表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法炉戊サーガ ~怖がり勇者の邪竜討伐英雄伝~  作者: 夢明太郎
第三章 恐ろしき石化の呪いの手紙事件!
28/51

第十七話 優しき老竜の眠る安らぎの場所〈竜の墓〉(その3)

「ワウディス君、熱烈ファンの手紙をポンダル支配人に送っていたのは許してあげるから残りの五通の手紙のことでちゃんと協力してね」


「えっ? うん、それなら全然構わないけど……」


 勇者ワウディスは、手紙について許してくれたことが意外だったので、驚いた。


 ナムコル支配人の命が懸かっているのは大変だけれど、それがエレメンタルランドの命運を左右する重大事件になっているとまでは、知らないのだ。


 しかし、いまはミルフィアが許してくれた事実で安心し、その点について疑問を抱くことはなかった。ミルフィアは愛用のポシェットから、残りの五つの手紙を取り出した。


 そして、少年勇者と一緒に、文面を確認した。

 精霊の乙女の詳細なプロフィールを公表してほしい、ファンと直接触れ合うサイン会をセットしてほしい、浴衣タイプや着物タイプの可愛い衣装を作ってほしい、などなど。


 また、少年勇者と同様、推しメンの正体を明かしてほしいという要望もあった。


 いずれも熱烈ファンなのは間違いないようだ。それぞれの要望が熱い言葉と口調で書かれている。


「ワウディス君、どう? ファンの友達の誰かで心当たりはないかしら?」


「そう言われても……ファンの友達は、たくさんいるから……」


 正直、勇者ワウディスは戸惑った。

 すぐに思いついたのは、直近で一緒にコンサートを見に行った武道家ジェスパーと侍戦士ジダーインとの会話である。


 しかし、同世代の友達には、エレメンタルシスターズの熱烈ファンが他にもたくさん存在する。


 これらの手紙の要望は熱烈ファンなら、自分の推しメンに関して、誰しも願うことばかりだった。


 つまり、特に目立った特徴はないため、親友二人の要望とは限らないのだ。


「どうしよう……差出人の手懸かりがないと、これ以上調査のしようがないわ……」


「アッ! もしかしたら、この手紙は……」


 勇者ワウディスは或ることに気付き、五つの手紙を丹念に調べはじめた。文面ではなく、手紙の材質や模様などに目を凝らして、観察している。


 五つの手紙はいずれも上質な特別仕様で、或る特徴を持っていたのである。その事実を確認し、少年勇者は喜びの声を上げた。


「ミルフィアちゃん、これはきっと精霊の乙女グッズのレターセットの手紙だよ!」


「えっ? グッズのレターセット?」


「うん、二週間ぐらい前に、コンサート会場の出店で売っていたんだ。精霊の乙女のマジカル写真付きのレターセットの手紙で、確か限定販売の商品だったはずだけど……」


「じゃあ、この手紙の差出人は、そのレターセットを購入した人ということね。ワウディス君、誰がレターセットを売っていたのか覚えている?」


「うん、ジュピトル君だよ。ジュピトル君は〈精霊の夢〉劇場と販売契約を結んでいて、オリジナルの精霊の乙女グッズを作って販売しているんだ」


 旅の商人ジュピトルは、魔法の金庫を背負って旅している行商人の少年である。


 魔法の金庫の中は、異次元空間になっていて、超巨大な倉庫になっている。


 王城の宝物庫にあった魔法の金庫をサティライム王国から借りる代わりに、お手頃価格で商品を販売する義務を負っているのだ。商才豊かな少年で、勇者ワウディスとは大の仲良しだった。


「確か昨日から、このオーヴィタリアの街に戻っているはずだよ。商品を補充するから、実家の道具屋に寄ってしばらく休憩しているって。いまなら、きっと道具屋にいるはずだよ」


「よかった。じゃあ、ジュピトル君に買った人を覚えているか聞いてみましょう」


 手紙の差出人に関する有力な手懸かりを得られて、ミルフィアは安堵した。旅の商人ジュピトルは、精霊巨神の神殿に旅の安全を祈りに来るため、ミルフィアもよく知っている。


 行商人の少年はとてもしっかり者なので、限定販売のアイドルグッズを売った相手を覚えている可能性は十分有るだろう。


 こうして、二人は旅の商人ジュピトルのところへ向かうことになった。ところが、竜の墓の門のところで、勇者ワウディスが立ち止まった。


 そして、祭壇の上のドラゴン像を見上げながら、ミルフィアに話しかけた。


「あのさ、邪竜お爺ちゃんの洞窟の住処にあった黒い沁みなんだけど、近くで雰囲気を感じてみたいんだけどダメかな? ティラミスさんに言っても、全然許してくれなくて……」


 邪竜火山の洞窟の住処にあった黒い沁みは、老竜の遺体が溶解した跡だった。


 そして、その後の詳細な調査で、この溶解跡には、超高濃度の暗黒魔力が凝縮されている事実が発覚したのである。


 基本的に内部に封じられているけれど、ごく微量の暗黒魔力が外に漏れ出していた。


 実は、先日の調査チームの衛兵たちは既に回復したものの、調査後に全員が体調を崩して寝込んでいたのである。


 精霊巨神バンダインはこの事実を問題視した。

 そして、精霊巨神の巫女ティラミスに命じて、ブラックドラゴンの溶解した痕跡を、暗黒魔力を封じる〈封印の壺〉に収めて、異次元空間にある秘密の封印庫に保管させたのである。


 勇者ワウディスは、大好きな邪竜お爺ちゃんの気配に触れたいと思い、何度もティラミスに〈封印の壺〉へ近づく許可を願い出ていた。


 〈封印の壷〉から暗黒魔力が漏れ出す危険性は少なく、仮に漏れ出しても少年勇者なら自分のオーラパワーで易々と浄化できるからである。


 しかし、ティラミスは一切応じてくれなかった。あの黒い沁みは超高濃度の暗黒魔力の塊であり、どのような危険が秘められているか、完全に解明できていないのだ。


 また〈封印の壷〉を保管している秘密の封印庫は、精霊巨神バンダインと精霊巨神の巫女しか入ることが許されない聖域だった。


「ワウディス君、気持ちはわかるけど、それだけはダメよ。ティラミスお姉様の言うとおりどんな危険が潜んでいるかわからないのだから、いまは厳重に保管するしかないの」


「そっか、やっぱりそうだよね……」


 勇者ワウディスは意気消沈しつつ、状況を冷静に受け止めた。こうして見ると、この一ヶ月の間に精神面で、少しだけ成長したようだ。


「寂しいのはわかるけど、しっかり前に向かっていかなきゃダメよ。ワウディス君は真の勇者を目指すんだから。じゃあ、とにかくジュピトル君のところに行きましょう」


「うん、そうだね。ジュピトル君の実家は道具屋だから、ここからだとすぐだよ」


 こうして二人は、旅の商人ジュピトルのいる街の道具屋に向かったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ