スケルトンの変装
誤字報告ありがとうございます。
2021/04/03
物語に行き詰まったのでしばらくお休みしていました。
以前書いていた話は、書き直すことにします。
ごめんなさい。
ラウルは王都の商店街から粘土を購入して帰宅した。スケルトンの頭を粘土で作るつもりである。仮面を購入するつもりだったが、はずれた時を考えれば直接粘土で頭部を作った方が安心だったからだ。
スケルトンの正面に座ると、早速作業を開始した。ラウルはおもむろに頭蓋骨の上に粘土を貼り付けていく。ひたすら一生懸命に粘土の形を整えていく。後ろで大爆笑をしているエリックは無視して、一心不乱に作業を続ける。表情は全く変わらないスケルトンだが、何故か不安に思っているように見えた。
「坊ちゃん、その顔じゃあスケルトンには見えないけど、まるでゾンビですよ。」
「う・・・、結構難しいな。」
見兼ねてエリックが、ラウルの代わりにスケルトンの顔を作っていく。明らかにラウルよりは上手である。
しばらくするとエリックの手が止まった。どうやら顔ができたようだ。ラウルが覗き込むと、そこには美しい女性が座っていた。カツラもしっかり被っている。
「って、女性になってるじゃないか!」
「すみません、つい遊び心で。」
「本人は男なんだから可哀想でしょう。」
当の本人を見ると、まんざらでもないようで鏡に向かってポーズを決めている。まるで第二の人生を謳歌しているようだ。
「本人も気に入ったみたいですよ?」
「えー。」
どうやら、アブノーマルな趣味に目覚めたらしい。本人がそれで良いならラウルが口を挟むことではない。
ラウルは仕上げに粘土の水分を収納で取り除き、炎の魔法で粘土を焼いた。スケルトンは打撃には弱いが、魔法にはめっぽう強い。ラウルの魔法でもダメージは大したことはなさそうである。数分後にはスケルトンの顔が完成した。見た目は普通の人間と変わらない。これなら大丈夫そうである。
改めてルーナさんに紹介した。スケルトンが女性に変わっていて驚いていた。前のように失神することはなかった。
それから数ヶ月、王都の倉庫は順調に利益を出していった。王都でフランチャイズに参加する店舗も増えてきた。王都でもパン作りの修行をすることになリ、毎回ラウルが講師を務めていた。その後、エリックにもパンの作り方を教えたので、王都での講師はエリックが担うことになった。
「ラウルー。」
「ん? どうしたのシルフィ。」
突然お嬢様から話しかけられた。
「最近王都で忙しいみたいだけど。」
「うん。」
「私も手伝うよ?」
「ううん、大丈夫だよ。今のところ人手も足りているから。」
お嬢様が自ら手伝うというのは珍しい。どうしたのだろうか。
「だって、最近ひとりで王都へ行ってしまうし、私も一緒にいたい。」
お嬢様は少し俯いて下を向いたまま、恥ずかしそうに話す。
どうやら、最近ラウルがひとりで王都へ出かけて行き、家で留守番しているのが不満らしい。お嬢様はラウルと常に一緒に居るために冒険者となったくらいだ。商人として仕事をしているときも、一緒に居たいと考えるのは当然かもしれない。
(う・・・、しまったな。お嬢様に寂しい思いをさせてしまったようだ。)
「ごめんシルフィ、これからは一緒に連れて行くから。」
「うん、わがままいってごめんね。」
そう言って恥じらいながら目線を下げる。もじもじしているお嬢様は、とても可愛いとラウルは感じていた。
◆
翌日、今度はお嬢様も一緒に王都へと向かう。
やはり、スケルトンの変装には無理があった。粘土で作った体も関節が動くたびにひび割れて、今ではみるも無残な外見になっている。仕方がないので、スケルトンには父様の護衛兼、身の回りの世話をお願いする。一人では大変かもしれないが、倉庫の護衛はしばらくエリックひとりにお願いすることにした。
ルーナさんとお嬢様は初めて顔を合わせる。
「ルーナさん紹介しますね。こちらは俺の婚約者のシルフィです。ニルバーシュ伯爵のひとり娘です。」
「え、伯爵様のご令嬢・・・、ラウル様の婚約者なのですか?」
「シルフィです。よろしくお願いしますわ。」
「は、はい。よろしくお願いいたします。」
ルーナさんはシルフィが貴族だと驚いているようだ。
(うん、この人はいつも驚いている気がする。。)
この日はルーナさんに倉庫の経営状況を聞きにきた。
現在、王都でのパン工房の加盟店は数店舗ある。これらの店舗の人間がこの倉庫にやってきて、パンの材料などを購入し、自ら積み込み運搬まで行う。なので、ルーナさんの仕事は肉体労働は一切なく、倉庫の在庫管理と帳簿などの管理が主な仕事である。
「えー、今期の新規加盟店がこのくらいで、売り上げがこれ、よって純利益がこのくらいになります。」
ラウルが書類を確認すると、かなりの黒字になっているようだった。どうやら順調に倉庫は回っているようでラウルは安心した。
「かなり黒字になっていますね。何か問題点などはありませんか?」
「いえ、現場の方はエリックさんが見てくれていますし、私は経理の方に集中できています。お互いまだ余裕もありますので全く問題ありません。」
「わかりました。それでは、何かあれば遠慮なく言ってくださいね。」
「はい。」
天然酵母は、エリックが必要な分を当日にニルバーシュの家まで取りに来ている。まだ、王都での生産は難しいと思っている。そのうち王都でも天然酵母を生産できるようにしたい。
王都の倉庫は順調に軌道に乗ってきているようである。




