指名依頼2
翌日、ラウル達は早めに起きて、村の外で野営している部隊へと戻る。
早速、ラウルが荷車を収納していると、部隊長から声がかかった。
「なぁ、もう聞いたか? 昨晩、神からの祝福があったらしいぞ。」
「え? 神様の祝福ですか?」
「おう、斥候が見たらしい。空から隕石が大量に降りそそいだそうだ!」
それを聞いたシルフィ、嬉々として答えようとする。
「ああ! それならラ、モゴモゴ・・・・」
慌ててラウルはシルフィの口を塞いだ。
「そ・・・、そんなことがあったのですね! でも、それなら誰か魔法で隕石を落としたのかもしれませんよ?」
「ああ、伝説の魔法に『メテオ』と呼ばれている隕石を落とす土系の魔法があるらしい。斥候が言うには、魔法だと隕石は魔力で作られているので、隕石は魔素へと戻り、後に残るものは何もないそうだ。しかし、今回の隕石はそのままの姿で地面にゴロゴロと残っているそうだ。これはもう、人の起こせるものではない。奇跡なのだ! 神の奇跡だ!」
「う・・・、そうなのですね。」
(うーん、困った。昨日の思いつきが神様の奇跡になってしまっている。。実は俺がやりましたなんて、とても言える雰囲気ではないぞ・・・。)
もうこの際、神様の仕業にしてしまおうと決心したラウルであった。
「ちょっとラウル、どうしてあれは自分がやったと言わないの?」
「そんなこと言えるはずないでしょう? どうやってやったと聞かれたら、瞬間移動を説明しないといけなくなります。瞬間移動は極秘事項だと旦那様から言われていたでしょう。。」
「むぅ・・・、せっかくのラウルの手柄だったのに・・・。」
お嬢様だけが悔しそうに呟いていた。。
(しかし、ただ石を上空から落としただけで、隕石扱いされるとは・・・。それに、斥候に当たらなくて本当に良かったわ。)
ほっと胸をなでおろすラウルであった。
神に続けと、冒険者達が鼓舞されていきり立っている。出発の号令をまだかまだかと待ちわびていた。そこにガイルが現れる。
「諸君、いよいよ討伐の時はやってきた。神からの援護もあったと聞く。勝利は必ず我らにある! 行くぞ貴様ら、ゴブリンどもを一網打尽にしてやるのだ!」
「「おおーーー!」」
冒険者がゴブリンの集落に向けて走って行く。集落の場所はすでに斥候によって調査済みなのだろう。迷いもなく一目散に突っ込んでいく。補給部隊はここで待機となる。討ち漏らして、もしも、この村までゴブリンがやってきたときのために、村を守る任務も兼ねている。
ラウルは適度に『サーチ』で村の周囲を警戒していたが、数時間経ってもゴブリンがやってくることはなかった。陽が少し傾いてきた頃、ガイル達は村へと戻ってきた。
「村の護衛ご苦労であった。こちらも無事にゴブリンの集落を討滅してきた。ゴブリン・ロードも確かに居たが、神の怒りを買ったのかすでに負傷していた。相手にもならなかったな・・・。」
どうやら、大きな被害は受けずに敵を倒せたらしい。
その後、村長に報告すると、感謝の意味を込めて小さな宴会を開いてくれた。うちの部隊からも、飲料水以外の物資を全て放出してお祝いをする。
翌日、冒険者達一行は村人に見送られて村を後にした。昼過ぎには領都に到着し、報酬が渡されていく。ラウル達も指名依頼の報酬を受け取ることができた。この報酬は、旦那様の命を受けて都市の予算から捻出されたものだろう。ありがたく頂くことにした。
部隊の物資を運ぶだけで、金貨2枚になった・・・。なんて美味しい任務だったのだろう。
後から聞いた話なのだが、ラウルがどのくらい収納するかで報酬が変化する予定だったらしい。荷車一台を馬車で牽引するのに、馬が一頭追加で必要だったらしい。仮に荷車が二台収納できなかった場合、馬を二頭追加で用意する必要があった。その分、ラウルの報酬が減額される仕組みだったようだ。
結果的に、全ての荷車を収納したラウルには、満額の報酬が支払われた。
いちいち領都の外にまで行って、家への入り口を開くのも面倒になったので、人気のない裏路地で入り口を開いた。ラウル達が素早く中に入ると、すぐに入り口を閉じる。
◆
家のリビングで三人が集まって、パーティ会議を始める。
「えー、三人になったのであらためてパーティ会議をしようと思います。」
「突然どうしたのよ。」
「色々と決めることもあるだろう?」
「ご主人様の好きなようにすればいいと思います。」
「ええ、私もラウルの指示に従うわよ?」
「いや、今回の報酬は金貨2枚もあったのだ。分配もきちんと相談しないとトラブルになる危険性があるだろう?」
「金貨2枚くらい、ラウルが持ってていいんじゃないの?」
「くらいって・・・、決して少なくないからな? シルフィの金銭感覚は一般の市民とは違うのかもしれないが。。」
「え・・・? 金貨2枚なら私のお小遣いより少ないわよ?」
「シルフィ様・・・、それはあまり他の人には言わない方がいいと思います。」
「これだから伯爵令嬢は・・・。」
「な、なによぉ。その言い方、私が悪いみたいじゃない・・・。」
「あのなぁ、平民が1ヶ月一生懸命働いて、いくらもらっているのか知ってるか?」
「知らないけれど・・・。」
「銀貨で約30枚、3万ゴールドだぞ。。金貨でいうと、3枚だな。」
「え・・・。」
それ以来、お嬢様は黙り込んだ。どうやら平民が1ヶ月、汗水垂らして働いた給料よりも、お嬢様の小遣いの方が多かったようだ。別にそれが悪いとは言わないが、一般的な常識も知っておいて損はないだろう。ラウルはそう思った。
そういうラウルも常識的とはとても言えないのではあるが。。
「私から言わせて頂ければ、ラウル様の魔法も非常識ですけどね。。」
「なっ!?」
「そうよ! ラウルだって普通じゃないんだから!」
「そうかなぁ・・・?」
「「そうです。」」
(二人揃って綺麗にハモるんじゃない。。)
「それで、この報酬をどう分配する?」
「犯罪奴隷の私は報酬を受け取る権利はありません。」
「そんなことはない。俺が伯爵家で奴隷として働いていたときも報酬は貰っていたぞ。」
「それは普通ではありませんから・・・。まったくこの人達は・・・。」
だんだんニーナが本音を出してきている気がする。
「それじゃぁ、パーティのお金として貯金しといたら? 必要なときにラウルが貯金から支払えばいいじゃない。」
「ふむ・・・、それも良い考えだと思うけど。」
「私はご主人様に従います。」
「それじゃ、これはパーティ貯金として俺のインベントリ内に収納しておきます。」
「はい。」
「ええ、それでいいわ。」
すでに、ラウルのインベントリ内には数千万のお金が収納されている。冒険者となったときの一千万もそうだが、お嬢様を預かったときの数千万がデカい。
これにまだ、数年後からは毎年醤油の純利益から3%が支払われる。この時点で、10歳とは思えないほどの資産と、不労所得の権利をラウルはすでに持っていた。末恐ろしい子供である。




