表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

ナイヴィスの傷

その時の魔女が、今、シャルドネ・ミリ・ルノワールと名乗る人物だ。


でも今は、シャルドネが国を救ったことになっている。


「時の流れって恐ろしいもんだな。真実を知っているものが何人いるのやら」


トーヤが呆れるように笑った。姫も、同意見のようで


「あの頃の記憶があるのなら、真実を知っているんでしょうけど…そんな人間、この島には来ないわ」


そう言って、トーヤの肩に頭を預けた。シェルバート姫の話に頷く。


「だな。僕以外にこの島に来るとしたら…」


記憶をたどる、トーヤ。思い当たるのは、一人しかいない。


「シャルドネ…かしら」


姫も神妙な面持ちで呟いた。魔法使いである、シャルドネ。一年の時、トーヤにクリスマスプレゼントを贈った人物で、二人とは昔から因縁のある魔法使いである。


「シャルドネは、なぜ姫を生かしている?あいつからすれば消したい人間なはずなのに…」


トーヤが疑問を口にすると


「シャルドネは私から報復が来るのを恐れているのよ。だって、ここに閉じ込めておきながら何もしに来ないですもの。魔力だけ、この鎖から奪っているけれど」


姫がふふっと笑い、足の枷を撫でた。シャルドネが付けた鎖。


トーヤは壊せるなら今すぐにでも壊したいぐらいだと思った。


「姫、僕はそろそろ戻る。また来週辺りに来るけど、いい?」


時計を確認すると、戻らなくてはならない時間。姫は、特に止めたりはせず


「そう。私は構わないわ。シャルドネに見つからないように、気を付けなさい」


そう言って軽く微笑んだ。




「遅かったなー。トーヤ、どこいってたんだ?」


寮の部屋に帰ってきたトーヤに、ナイヴィスが声をかけた。


ナイヴィスは部屋に入ってすぐのところにあるソファーに座って、テレビを見ている。白黒の味気ない画面は島の外のニュースを映し出していた。


「散歩だよ。思ってたより時間かかっただけ。それよりさ……」


トーヤは、ナイヴィスの異変に気がついた。


「お前、顔色悪い?」


ナイヴィスは元々肌が白い方だが、今は青ざめているように見える。


「ん?そーか?気のせいじゃね?」


心配されたナイヴィスはけろりとした顔で返した。


トーヤは不信に思い、ナイヴィスのシャツを強引に剥いだ。先ほどからずっと脇腹を擦っていたから。


「怪我してるなら言えよ…。傷は?どんな状態だ?」


ナイヴィスのお腹には白い包帯が巻かれていた。


「よせ!!……お前に見せるほどじゃない。触るな…」


包帯をほどこうとしたトーヤをナイヴィスは大声で止めた。トーヤは手を止め、怒っているのか分からないが無表情のまま


「そ。なら…ひどくなる前に言えよ。お前に死なれちゃめんどくさい」


そう言って自分のベッドへ向かった。


ナイヴィスは後悔を隠しきれない顔でテレビを眺める。


あまり、面白いと感じなかった。




ナイヴィスが目覚めると、外はうっすらと朝焼けに染まっていた。


時計を見ると5時ぐらい。


ナイヴィスはようやく、自分が寝てしまったことに気づいた。


「やっべ……薬…飲んでねぇ…」


薬とは、血の色を赤くするもの。


「あ…早いな、ナイヴィス。いつも俺が先に起きるのに…」


この時間に起きているとは思っていなかったらしく、ビックリしている。


「昨日は寝るのが早かったみたいだ…。トーヤってこの時間に起きるのか?」


ナイヴィスは簡易的なキッチンにおいてある瓶を手に取り、中の錠剤を取り出した。


「あぁ…。ナガト先生に稽古頼んでいるんだ。回復科が武術を一切やらないとは思わなくてな…個人的にお願いしている」


ナガト先生とは、ナガト・ユースティという名の、黒髪の先生のこと。


優男のような甘い顔立ちとは違い、武術に長けた先生で前衛魔法科を担当している。


「え?お前ナガトセンセと知り合いなの?」


ナイヴィスも先生を知っている。授業を受け持ってもらっているからだ。


「じゃあ行ってくる。いつもナイヴィスが起きる時間ぐらいには戻るから」


トーヤはそう言って、部屋を出ていった。


ナイヴィスは錠剤を飲み干し寝室に入る。


すると、トーヤのベッドの上に魔導書が置いてあることに気づいた。


「これ、面白いの?」


トーヤがいつも読んでいたので気になったナイヴィスは魔導書を開いた。


「うわ…変な文字………でも、読める…?」


中に書いてある字は見たことのない文字でしたが読めないほどではなかった。


中にあるのは、呪文であったり、魔方陣であったり、魔法の作法であったり。


面白いわけではないが、魔法を使う上で大切なことばかり書いてある。


「こんなん読んでんのかよ……よくやるわ…」


はぁと、ため息をつく。ナイヴィスは魔導書の代わりに大きな剣をもらったため初めて読んだものなのに読むことだけはできるようだ。


飽きたナイヴィスは魔導書を閉じ、立ち上がった。


「暇だし、素振りでもするか」


キーホルダーサイズまで小さくした剣を手に取り、部屋を出る。


最初の頃はサイズが安定せず、普通の剣のサイズで止まってしまったり、米粒サイズまで小さくなったりしたが、今では一定のサイズにすることができるようになった。




「この辺でいっか。人いないし」


寮を出て少し歩いたところ。開けた場所の真ん中に来た。周囲に人影はなく、近づいてくればすぐにやめられる。ナイヴィスは剣のサイズを元の大きさに戻し、素振りを始めた。




開けた場所での剣技の練習。魔法を組み合わせた剣技はまだうまくいかないことの方が多いが、なかなかに楽しいものだと感じていた。


ヒュッ……キンッ…。


なにかが飛んできて、ナイヴィスはそれを反射で防御した。飛んできた何かは、黒い矢だ。


「なんや、防いでしもたん?つまらんわぁ…」


遠くからゆっくりと歩いてきたレイミー。


手には朝顔のような蔓が巻き付く黒い弓、腰にはセットの矢筒がぶら下がっている。


服装もいつものワンピースではなく動きやすいパンツスタイル。


「レイミー?何で狙ったんだ?危ねーだろ」


矢も、レイミーの持つものと同じ。レイミーが放った矢であることが分かった。


「ナイヴィスはどんくらいの鍛練積んどるんやろと思てな?試しただけや、気にせんといてー」


いつものハイテンションとは違う、小悪魔のような笑み。ナイヴィスはゾクリと、寒気を感じた。


「いきなり射っておいてそれはねーんじゃねぇの?レイミー」


腹が立ったナイヴィスは剣を構えた。レイミーも、答えるように弓を構える。


「勝負してくれるん?うれしーわぁ。じゃ、寸止めでお願いします」


レイミーがそう言うとナイヴィスも頷き、レイミーに向かって走り出した。


にやりと笑いレイミーは矢を放った。ナイヴィスは強く地面を蹴る。


横に転がるようにしてレイミーの攻撃を避けると、さっきまでいた場所には三本の矢が刺さっていた。


「うわ…」


思わず声が漏れるナイヴィス。


「これぐらいでなにびびっとるん?」


止めどなく射ち続けるレイミーの矢を弾いたり切ったりして防ぐナイヴィス。


的になっているせいで運動量が多く、息も切れてきた。


消耗戦ならこっちが有利のはず。とナイヴィスは考えたがレイミーに読まれているようで


「矢の数やったら減らんから無駄やで?魔法で増やしとる」


レイミーはそう言って矢を一本矢筒から取りだし手の中でくるりと回した。


すると、手に持っていた矢が三本に増えた。


「くそ……。めんどくせぇ……」


思っていたよりもレイミーが強く、弾くのにも疲れてきていた。


行くなら、矢を放った直後……。ナイヴィスがそう思っていたすぐ後にレイミーが矢を放った。


「もらったあああ!!」


徐々に詰めていた距離を一気に駆け、レイミーの目と鼻の先まで近づき


「なんや…!」


レイミーもわざと体勢を崩し弦を引きます。


相手の喉元に武器が届いたのは…………。




両方、だった。


「……ま、なかなか面白い感じになったんとちゃうん?ナイヴィス、もうええ。剣を収め」


レイミーはそう言って矢先を喉元から離した。


「……そっちが勝手に始めたんだろ…。満足したならいいけどさ…」


練習するつもりががっつり戦闘をやったせいで体が痛むナイヴィス。


「うん。満足や。怪我させることもできたし」


晴れやかな笑顔でうんうんと言ったレイミーに、ナイヴィスは疑問に思った。


「怪我?どういうことだ?」


確かに転んだり滑ったりしたせいで擦り傷がいくつかできたが、わざと怪我をさせるつもりだったのだろうか。


「ナイヴィス、腹にでっかい傷あるんやろ?何で黙っとるん?治して貰いんさいや。回復科も探せばいるやろ?」


レイミーが弓を背負いながら問いかける。図星だったらしいナイヴィスは目をそらした。


「……お前には関係ねぇ話だろ…」


脇腹には授業で受けた傷がある。


気を付けてはいたのについてしまった傷。


自分でやった応急処置は血を止めても傷は治してくれない。


「関係ないわけないやろ?友達なんやから心配しとるだけやで?」


レイミーはそう言って、遠くの茂みに向かって叫んだ。


「夜空!トーヤ!隠れるぐらいやったら出てくるんやー!」


その発言に驚くナイヴィス。茂みからは言葉通り、夜空とトーヤが出てきた。


「なっ…どうして二人が…トーヤ!お前稽古に行くって言ってただろ?」


ナイヴィスが近づいてくるトーヤに問いかける。


「稽古はとっくに終わった。戦ってる音がしたから見に来ただけだけど…何やってんの?」


トーヤの稽古はナイヴィスが思っていたより早く済むものだったようだ。


「あたしが先に始めたんよ。最近動く的を狙ってなかったから腕が鈍りそうでなぁ…」


ナイヴィスの代わりにレイミーが答えました。


「で、俺は訳分かんないままレイミーと戦ってたわけ。そろそろ消毒しに部屋に戻ってもいい?」


レイミーの答えに付け加え、傷が痛くなってきたナイヴィスは部屋に戻りたくなった。


「消毒?私が治そっか?」


回復科は魔導書を持っていないと傷を治せない。トーヤは魔導書を部屋に置きっぱなしなので今、魔導書を持っているのは夜空だけだ。夜空の言葉にピクリと反応したナイヴィスは


「い…いや、いいよ。ほっときゃ治る」


ぶっきらぼうに答えた。トーヤも、心配そうな目で


「ナイヴィス。何で僕らに治させようとしないんだ?…傷口がそのままだったら余計に酷くなるだろ」


と、伝える。レイミーは得意気な顔で


「私が怪我させんかったらいつまでもほっとくやろ。回復魔法が怖いんかぁ?」


と、挑発するが、ナイヴィスは俯いたままだ。トーヤはため息をつき、


「そのままがいいならそれでいい。ただ、我慢はするな。面倒臭いからな」


と言って、先に一人で部屋へと帰っていった。



「トーヤ。お前に教えられるようなことはないんですが…どうしてここに来るんですか?」


ナガトが不思議そうな顔で頬杖をついている。


ナイヴィスとレイミーが戦い始めた頃、トーヤはナガトを訪ねていた。


「僕は戦闘が苦手なんで、ちゃんと経験を積みたいと思ってるんです。だから、ここに来ただけです」


トーヤはナガトに出されたお茶を飲みながら話す。


ナガトははぁとため息をつき、


「お前は十分、うまく戦えていますよ。3年とは思えないくらいに。どこでそんな経験を?」


話を聞き出す。トーヤの戦い方は癖があり、誰かに習ったものではない。


なので、トーヤは自分で戦い方を産み出したことが分かる。


「どこで…と聞かれても……。緑眼族は、意外と狙われるってだけ、と言っておきます」


トーヤは何て言おうか悩み、言葉を選んだ。緑眼族という言葉にナガトは聞き覚えがありませんでした。


「緑眼族とは、なんですか?」


ナガトの質問に、トーヤはうーんと悩み


「緑眼族は、緑色の眼の人間で、体の何処かに第三の眼がある民族なんです。その第三の目玉は抉り出しても再生されますし秘薬の材料になるらしいから狙われるんですよ」


と、答えた。緑色の瞳を、怪しく光らせながら。



「まぁ、肩慣らし程度ならお相手してあげますよ。外に行きます、着いてきなさい」


随分長い間話し込み、その後、外で体を動かした。


前衛の指導をしているからか、年の差を感じさせない素早さとパワーでトーヤを圧倒させた。




その頃、夜空は『貝殻姫の塔』に近付いていた。


塔に近づくほど寒く、まるで大きな氷に向かって進んでいるような感覚だった。


「そこのお嬢さん。迷子ですか?」


夜空は近付いてきていた存在に、話しかけられるまで気づかなかった。


話しかけてきたのは造花がたくさん付いているヘッドドレスが印象的な人形だった。


身長は夜空の腰ぐらい、髪は金髪で、ピンク色のドレスとよく似合っている。


「迷子じゃないわ。貝殻姫を探しているの」


夜空は喋る人形に興味を持ちましたが、今は目的を果たすのが先だ。先に進もうとしたが、人形に阻まれてしまった。


人形は首をかしげ、


「貝殻姫?どうして彼女を探しているの?」


と、問いかける。夜空は道を譲ってくれそうにない人形に苛立ちながら


「私がここに来た、目的だから」


と、答えた。その答えに人形はピクリと、反応しましたが夜空は気づかなかった。


「あの塔にいる、貝殻姫は…まだ生きてるの?」


夜空が、人形に聞きます。人形は首をかしげ


「貝殻姫は、何年も前に亡くなっています。満足ですか?」


淡々と伝る人形。夜空はその答えに疑問を持った。


「なら、あの塔には何が封印されてるの?かなり強力な魔力を感じるわ」


塔が氷のように冷たいことや警備がいるぐらい危険な場所。


夜空も魔力を感じたのでなにかがあるのは勘づいていた。


「あそこには…姫様の遺体を封印してあります。塔も古いしあちこち崩れているので近づいてはダメですよ」


遺体であるのに、封印。それほど力が強かった、ということなのだろうか。


「ダメですか?」


夜空は人形があの塔と関係しているのだと感じたが、人形はキッと睨み


「ダメです。それに…あなたの求めているものは、あそこにはありませんよ。私は言えませんが、別の場所にあります」


と言って、去っていった。夜空は心を読まれたことに驚き、人形を追いかけることができなかった。



その後、夜空はガッカリしながら校舎を散歩していた。


手に持っている魔導書がいつもより重く感じる。


「避けすぎです!もっと怪我を怖れず切れ込んで!」


教官棟の前にある小さな広場で、誰かが戦っているのが見えた。


一人は動きにくそうなスーツのまま。もう一人は秋には早すぎるコートとマフラーを巻いたまま。


よく見るとナガトとトーヤだということがわかった。


回復魔法科は戦闘訓練をしない。


なのに戦うことが得意なナガトと戦えていることに、夜空は驚いた。


「なんでもできる人だとは思ってたけど…」


夜空はすごいなと、素直に思った。


「ん?お前の彼女ですか?」


ナガトは夜空に気づいたようで、戦闘をやめた。


「違います。僕では不釣り合いですよ」


トーヤがそう言って哀愁漂う微笑みを夜空に向けた。それだけでトーヤに恋してしまいそうになるくらい人を魅了する微笑みだった。


「今日はこれで終わります。暇があったらまたお相手してあげますから部屋に来なさい。では、また」


ナガト先生はそう言ってその場を立ち去っていった。


「僕は寮に戻るけど、夜空はどうする?」


汗を簡単に拭きながら、夜空に問いかけた。朝なので、授業までまだ時間がある。


「あ、私も帰る途中だったの」


夜空はそう言ってトーヤのとなりにならび、歩き始めた。


その後、戦闘しているナイヴィスたちを見つけ、二人でこっそり見ていた。


二人から見てもナイヴィスとレイミーの戦闘はかなり高度なものだと分かるぐらい、自然に戦っていた。




「あー。身体中がいてぇ…」


ナイヴィスが呟くように溢した。


今は、戦闘訓練が終わり、昼休憩。普段なら食堂が混みだす前に昼を食べにいくが体が思うように動かず訓練場の近くにある大きな木の下で休憩していた。


魔法が使える姉に少しだけ教わった回復魔法をを試してみたがあまり効果はなく、止血できた程度だった。


しかも運動すればすぐに傷口が開いてしまう。


「トーヤに、頼らなきゃいけないのか……」


夜空に治してもらうということも考えたが、女の子に見せられないほどの傷の酷さ。


トーヤにも、あまり見せたいものではないと思っていた。


「僕じゃ嫌なわけ?」


後ろから声がした。ナイヴィスは振り向こうとしたが傷が痛み、わき腹を押さえ振り向くことができない。


「嫌じゃ…ない…。でも、俺…特殊みたいだから…。トーヤに、嫌われたくない」


じわりと、血がにじむ感覚がナイヴィスを襲う。トーヤは、止血しかできないナイヴィスの手を止め、


「その場しのぎの魔法なんか使うな。それは誰に教わった?…ナイヴィスには無理だろ」


服の上から傷口に手をあて、トーヤは詠唱を行った。


『生命の源よ。わが名のもとに傷を癒せ』


ナイヴィスは傷が塞がった気がした。


「傷口を塞いだだけだ。無茶はするなよ。…心配…させんなよな」


トーヤはそう言ってナイヴィスにパンを渡した。ナイヴィスの好きなチョコデニッシュのパン。


「なんで…これ…」


お腹は空いていましたが、食堂まで行くのが面倒だったナイヴィス。


「ほんとは、魔導書なしで魔法を使っちゃいけないからな。今あったことは内緒にしとけよ」


そう言ってトーヤはその場を去っていった。


パンは、ナイヴィスのために買ってきてくれたのだろうか。トーヤは甘いものを好まない。


「お人好しめ……」


自然と緩む顔を隠すように、パンを食べ始めた。




ナイヴィスにパンを渡したあと、トーヤは自室に戻った。


トーヤは成績がいいため、多少のサボりは多目に見てもらえる。


「隠すなら、もっとちゃんと隠せよな…燃やすとかさ」


二人の部屋のゴミ箱に包帯が一杯入っていた。


しかも、赤黒い乾いた血の色だけでなく、青色や紫色に変色している。


「僕が求めてるものじゃないから、別にいいけど」


小さな火花を作り、包帯を燃やした。燃えカスすら残らないように。


この学園には、特殊な人間が多く存在している。人間ではないものも、少数だが在籍している。


そんな者のために、学園は様々なアイテムを販売している。


肌の色を目立たなくする塗り薬。


血の色を変える錠剤。


人の目をごまかす洋服。


どれも、トーヤの頭を悩ませるものばかりだ。


「どこにいるんだよ…シャルドネ…!」


昔と比べシャルドネを探すのに時間がかかるようになった。


イライラが、表に出るほどに。


シャルドネである目印は


肌は陶器のように白い。瞳は赤色。髪は黒髪。


そして、血が真っ黒であること。


どれも、魔法のアイテムでどうにかなってしまうものばかり。


「今回は、さすがにきついな…」


いままで、何度も挑んだような言い方。それが本当なのかは、トーヤとシェルバート姫だけの秘密。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ