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廃協会にて

夜空が鳥を追って走っていると途中で廃教会の傍を通った。夜空には、微かに歌声が聞こえた。


「あっ!待って!」


先を飛んでいたオレンジ色の鳥は夜空の元へ戻ってきて近くの低い木に止まる。


「ごめん。この建物の中を調べたいの」


鳥は抗議するようにバサバサと羽を震わせたが、夜空の真剣な表情に圧され夜空の肩に止まり一緒に行くと言っているようだった。


「たしかこっちのドアから入れたはず…」


裏口のように見える小さめなドアを開けると中は昔入った時と変わらず埃っぽくまさに廃墟といった雰囲気だった。薄暗い廊下を進み、突き当たりの大きなドアを開けると、歌声はより大きく、美しく響いてきた。


声変わりを経て、高かった声も低く優しく響く男性的な歌声に変わった、トーヤの歌声だ。


「こんな所にいたの…」


聞こえないぐらい小さな声で呟いた。


トーヤに見つかりたくない。それ以上に、この歌声を止めたくないという気持ちが夜空にはあった。


歌は終わりに近かったらしく、途切れて響いた余韻に浸っていると


「よく、ここを覚えてたね」


トーヤが真っ直ぐに夜空がいる所を見据えて話しかけた。


二人の距離はそれなりに離れていて、バレないと思っていた夜空は驚いて立ち上がった。肩に乗っていた鳥が嫌そうにバサりと羽を震わせる。


「龍の魔力だね。夜空はすごいな」


オレンジ色の鳥を見つめふふっと笑うトーヤは学園長に追われているとは思えないほどに落ち着いていた。


「トーヤ。学園長があなたを探してるの。逃げるか隠れるかしないと…」


夜空が軽い足取りで近づいてきて呑気に鳥と触れ合おうとするトーヤに焦るような声で伝えた。トーヤは鳥のひらひらとした尾に触りながら


「分かってるよ。大丈夫。でも、君はここにいない方がいいかな」


いつもより優しげな微笑みを見せてポンと頭に手を置き呪文を唱える。


夜空が何かを言うよりも早く、その場から強制的に転移魔法で移動させられた。


「待って!!!トーヤ!!!」


移動させられた先は草原。遠くに廃教会が見えることからそれなりに遠い場所なのだろう。


「トーヤがどうかしたのか?」


後ろから聞こえた声に慌てて振り向くと、きょとんとした顔でナイヴィスが立っていた。ほっとした夜空の肩で鳥がピーーーと鳴き思わず夜空は耳を塞ぐ。


「綺麗な鳥だな」


ナイヴィスが鳥に触れようとするとバサりと飛び立ち、空高く舞い上がってどこか遠くへ飛び去ってしまった。


「わっ悪いなんか俺、変なことしたか?」


急にどこかへ飛び立ってしまい焦るナイヴィスに夜空は首を振って否定し


「大丈夫。ナイヴィスの所に案内してもらっただけだから」


と言って笑い、ナイヴィスの手を取って走りだした。


「え?なんだよ急に。あそこの教会がどうかしたのか?」


教会が見える場所に移動し、木の影に隠れる。寂れた教会には何人かの生徒が集まっていた。全員白い戦闘用の制服を着ている。


「…なにか、あったのか?」



事情を知らないナイヴィスが夜空に問いかけた。夜空は少し迷ったあと


「トーヤが、学園長に追われてるの。シェルバート姫を守ってるから捕まえないといけないんだって。それで、あそこにトーヤがいるから、捕まえるために集まってるんだと思う」


ナイヴィスがいない保健室で起きた出来事を話した。ナイヴィスはあまり驚かず


「そっか。トーヤは貝殻姫のことが好きだもんな」


と言って夜空の頭を撫でて


「お前はどうしたい?トーヤを助ける?それとも、島から逃げる?」


真剣な顔で問いかけた。


夜空はナイヴィスの問いにすぐに答えられなかった。トーヤには、ここにいない方がいいと言われた。それは、教会には近づくなという意味だと夜空は解釈した。


「私はトーヤに近づくなって言われたの。トーヤは1人でも大丈夫。問題は…」


夜空は教会の近くにいる魔法使いが、生徒しかいないことに気がついていた。教師が一人もいない。


「先生達がどこにいるのかってこと。学園長が動いてるなら先生も動いているはず」


学園の教師達は武闘派が少ないとはいえトーヤ一人でどうにかなる人数では無いだろう。


「先生が集まってる場所は…んー…貝殻姫の眠る塔…みたいだね」


ナイヴィスが目を瞑り唸りながら教えた。


シェルバートが眠る塔は普段は警備する生徒が数人いるぐらいで先生は近づかない場所。


「なんで分かるの?探知魔法…でもないよね」


ナイヴィスは特に詠唱を行っていない。呪文を唱えないと魔法は使えない。


「なんか、使える魔力が増えた気がするんだ。今なら空も飛べる気がする」


瞼を開き微笑むナイヴィスは少し大人びたように見えた。


「空って」


冗談を言われたと思った夜空がクスリと笑うとナイヴィスは少し赤くなり


「冗談じゃないって。ほら、前に角を見せた時、羽も生えてるって教えただろ?あれ、大きくなったんだ」


周囲に人がいないことを確認し、おでこをトントンと叩く。


魔法が解け、姿を消していた角が現れた。


夜空が予想していた角とは違い、幼くちょこんと髪から顔を出していただけだった角は太く渦を巻き半透明の青色をした美しい角に変化していた。そして大きく広げられた羽は薄い膜が張ってあり陽の光を透かして輝いて見えました。そして、緑の瞳は日光を反射し虹色のように輝いていた。


「綺麗な角と羽ね。すごい」


初めて見た龍姫族の角と羽。夜空は思わず顔が綻んだが、ナイヴィスは緊張した面持ちで


「怖く…ない?俺、夜空に嫌われたくない…」


震える声と怯えるような視線を夜空に投げかけた。夜空はぎゅっと抱きしめ


「怖いわけないじゃん。ナイヴィスはナイヴィスだよ。羽が生えてても角が生えててもしっぽが生えたとしても。ナイヴィスが好きだよ」


安心させるようにゆっくりと、心まで染み込むように伝えた。急に抱きしめられ、手が宙に止まったまま固まったナイヴィスだが、


「夜空、それは……」


火照る顔を隠すことは出来ず。ただ、不安になっていたナイヴィスを勇気づけるように抱きしめてくれた夜空は。少なくともナイヴィスのことが嫌いではないと分かるだけで、十分だった。


「いや、なんでもない」


ナイヴィスは止まっていた手を動かし、夜空の小さな体を抱きしめた。昔は夜空の方が背が高かったのに、今はナイヴィスの腕の中に収まるほどの体格差がある。


「なんや2人して。恋人にでもなったんか?」


「ひっ!?」


「へっ!?レイミー!?」


突然聞こえてきた第三者の声にびっくりした2人は慌てて離れた。


レイミーが頬をふくらませて不機嫌そうな面持ちで腕を組み、仁王立ちで立っていた。


「夜空~トーヤどこにもおらんのんやけど…」


お手上げ状態のようで肩をすくめるレイミー。どうやら夜空が挙げた場所以外も探しはしたもののどこにもいなかったようだ。


「……さっきそこの廃教会で見つけたの。でも、ここにいない方がいいって。上級生がいるし私たちじゃ危険だよ…」


夜空は伝えていいのか迷ったが、レイミーの正体がわからない以上教えないのも不自然だと判断した。


レイミーの様子を観察していた夜空だったが


「どうしたらええんやろ…上級生なら学園長の指示で動いてるやろ?んー…応援って言って一緒に突入しようか。それなら入れるし偶然を装って助け出せるかもしれんやろ?」


レイミーの作戦は的はずれなものではなく真剣に考えてるのが分かるものだった。


「……私は行けない。トーヤと仲が良いからってシャルドネ様の信仰者から尋問を受けたことがある。仲間には入れない」


これもまた事実だ。シャルドネを盲信と言えるほど信仰している生徒から拷問紛いの尋問をされたことがあった。知らされずに自白剤を飲まされ、様々なことを質問され嘘を交えず話したためすぐに解放はされたが時々監視されているような視線を感じていた。


「ああ。俺も受けたことがある。悔しいけど、仲間には認められないだろうな。あの時の生徒がいるみたいだ」


上級生達は会議をしているのかまだ教会の前で集まっているままだ。その中に見知った顔がいるらしい。


「なんや、二人とも怪しまれとったんか?甘いなぁその辺はうまく切り抜けんとな!じゃあ私だけで行くわ!トーヤもあれぐらいの人数ならどうにか出来そうやしな!」


レイミーは元気よく拳を作り空高く掲げ気合を入れた。くるりと周り背中と腰に装備している弓と矢筒が揺れてカタカタと音を立てた。


「ごめんね、レイミー。他にも怪しいところが幾つかあるの。またトーヤが転移したら困るしそっちを監視しに行くね」


レイミー1人を向かわせるのは危険なのではと思ったが、夜空には隠れて教会に入る方法も魔法も思いつかなかった。おそらく、別の場所に転移した場合のためにそこで待機して転移してきたトーヤを助けた方が可能性が高いように思った。


「しゃーないな!トーヤは私に任しとき!無事終わったら手紙飛ばすわ!」


レイミーは走りながらそう言って集団に入っていった。


不安な気持ちの夜空の隣でナイヴィスが


「あのさ……変な事言うけど、レイミー、なんかあった?」


伝えるべきか迷うような言い方だった。


「どういうこと?」


夜空が問いかけると


「いや、なんか。レイミーの魔力、異質な感じがする。よくわかんない。多分、気のせいだと思うけど…」


うまく表現ができないようでもどかしそうに答えた。


「そっか。……貝殻姫の塔に行こうと思う。トーヤなら、あそこは絶対行く。貝殻姫が生きてるかどうかは置いておいて、よく向かってた場所だから」


トーヤは夜空と同じ授業を受ける機会が多く、時々こそこそと抜け出して塔へ向かっているのを夜空は気づき何度か尾行したことがあった。いつも撒かれていたが最近になると塔に入るところを目撃できるほどには尾行できていた。


「んー……本当なら、そんな危険な場所に行くな!って言って夜空を島から連れ出すところなんだろうけど……」


ナイヴィスは悩んでいた。教師が多く集まってる場所で何も起こらないはずがない。


そんなところに夜空を連れて行ってもいいのか、と。


「ナイヴィスはどうする?一緒に行く?」


夜空は行かないという選択肢はない、と言うように問いかけた。ナイヴィスはあきらめたように笑い


「ははっ……夜空は頑固だなぁ」


愛おしそうに夜空を見つめた。夜空がくすぐったそうに視線を逸らし


「頑固かなぁ…?でも、友達は助けに行くよ」


決意のこもった瞳だった。ナイヴィスはうれしそうな笑顔を向け


「うん。俺も同じ気持ち。それに、トーヤはレイミーが助けに行った。なら、トーヤの好きな人は俺たちが守らないとな」


と言って夜空を抱き上げ、バサリと羽を広げた。

「わっ…え?どうするの!?まさか、空を飛ぶ気!?」


自身の腕の中で驚きの顔を見せる夜空を見てこらえるように笑いナイヴィスは


「飛んだ方が早いだろ?行くぞ!」


羽を羽ばたかせ空高く舞い上がった。魔法を使い羽の性能を上げているのか誰の目にも止まらず、音もなく羽ばたいていけた。


「す…すごい…!」


風を感じられるほどの遅いスピード。それでも、自分の足で走るよりも早い速度。


「気に入った?」


少し誇らしげなナイヴィスの顔。夜空は自分の顔が熱くなってくるのを感じ慌てて顔をそらし、早く着くことを祈った。




トーヤは固く閉ざされたままの大きな扉を祭壇の上から見つめていた。


祭壇と言っても小さい教会では少し段差がある程度だった。後ろにある女神像に寄りかかり、扉が開くのを待っている。


「なぁ、僕、そろそろ死ぬのかな」


誰もいない礼拝堂。静かにたたずむ女神像は何も言わない。


扉の向こうからは話し合う声が聞こえています。


「死ぬのなら、姫の腕の中がいいかな」


自嘲気味につぶやく。預けてた背中を離して正し、まっすぐに扉を見据えるトーヤ。


話し合う声が止まり、直後に爆発するような大きな音とともに扉が壊れた。


周辺の雑草が焦げていることから実際に爆発させて無理やり扉を開けたようで唯の大きな石の板となってしまった扉を見つめた。


「ひどいなぁ。魔術結界も壊せないのか?」


扉を含め、この教会内の礼拝堂にのみ魔術結界を張っていたようで扉の接合部分から黄色い液体が漏れている。これで少量の魔力を循環させ、結界を強化させていた。入ってきた生徒は先頭に長い黒髪を後ろで束ねた上品そうな女性と、その背中に隠れるように立つ気弱そうな青年がいた。


「あぁ、やはり魔術を使うのですね。あなたほどの魔力を持っていてなぜこのように低俗なものを使うのでしょう?あぁ、理解できません」


やれやれと頭を振りながら肩をすくめる女性は魔術を良く思っていないようだった。


「ミア嬢、いかがなさいますか」


気弱そうな青年は女性をミアと呼び、手に金属製のナックルをつけ女性の隣に出た。


前に出ないのはミアの視界を邪魔しないためだろう。


「魔術など強力な魔法を当てればすぐに壊れるでしょう。さあ、私のアカルトはあの貝殻姫の信者を倒せるかしら?」


長く、まっすぐな木の枝のような杖を構えました。トーヤに向けられた太くなっている先端には赤黒い色の宝石がいくつも装着されていた。メアリーを狂気に落とした、魔法血石だ。


「へえ。それだけ多くの魔法血石を使って正気でいるなんてすごいね。さすがはエーデルワイス家のご令嬢ってところかな」


トーヤは真っ黒の杖を構え、そのまま地面を強く叩いた。


石を叩く高い音が礼拝堂に響く。


「ほう、我が家の家業を知っているのですか。魔法血石はなかなかの富を生んでくれましたよ。なんせ自身の所有する島を削れば無限のように出てくるのですから」


ミアが自慢げに笑いました。同時に短い詠唱を何度か行い、魔法を発動させる。


「アカルトを先頭に適時攻撃に移りなさい!」


先頭のアカルトと後ろで待機していた剣士たちが各々の武器を構え走り込んできた。


「魔法血石が何でできているのか、君は知らないみたいだね」


トーヤが残念そうにつぶやいた。もちろんミアには届くはずもなく、走ってくる武闘派の生徒たちをにらむ。


にらんだところで減速するわけはなくそのまま突っ込んでくる生徒たちを無視し女神像の裏に回り込んだ。


そして、杖を思いっきり振りかぶり像を叩き割った。


「なっ!?」


近くにいたアカルトが一番驚いた。女神像の中から、水があふれてきたのだ。まるで、そこから水が湧き出るように。


『シェルバート姫と生命の源より加護を受けしわが剣よ。その姿を現せ』


噴水のようにあふれ続ける水に腕を入れ中から一振りの長剣を取り出した。それは一般的な物より少し長い程度で、装飾もシンプルに緑の宝石が柄に埋め込まれているだけのものだ。


水を払うように剣を振り近くにいる生徒を牽制した。


たじろぐ生徒もいる中でアカルトは憂鬱そうな瞳だがしっかりと隙を狙っていた。


「杖か剣か、選ぶんだな」


今、トーヤは両手がふさがっている。しかも像の後ろに来たせいで狭く、剣をふるえない。


「選ぶ必要なんかないよ。だってもう」


アカルトの素早い攻撃を避けるもほかの生徒の連携の取れた攻撃も仕掛けられる。めんどくさそうに杖の先端で急所を打って気絶させていく。


「魔法は発動できたんだから」


にやりと笑いもう一度棒で地面をたたき、さっきと同じ高い音が響きわたる。


「支援魔法を行う魔術師は一定範囲内から動くことが難しい。だから、叩くならそこだろう?」


トーヤの言葉にアカルトは疑問を浮かべたが女性の悲鳴のような声が響き思考は中断された。ミアの悲鳴だったからだ。


「ミア!!」


アカルトがミアのもとへ駆け寄る。


「あ……が…」


苦しそうに喉を押さえ蹲るミアの背中をさすり不安そうなアカルト。


「ごめんね。支援魔法って厄介だから、先に潰させてもらったよ」


ミアの悲鳴に気を取られた生徒を杖や剣の柄で気絶させていくトーヤ。いつの間にか、アカルトとミア以外は全員気絶していた。


「ミアに…何をした……」


怒りのこもったアカルトの声。いつもの無気力で気弱そうな声とは全くの別のもののように聞こえた。


「何って、焼いたんだよ。声は出さないほうがいいよ。痛いだろう?」


自身の喉を指さしながら他に動けるものがいないことを確認し、祭壇から降りて礼拝堂の入り口で蹲るミアの近くまで寄った。もちろん、いつでも攻撃できるように剣と杖は抜いたままだ。


「ミア……ミア…」


治癒魔法をかけているようですが効果がないのかアカルトは悔し気に地面を削るように握りしめる。


「その令嬢を連れてさっさと逃げるなら治してあげる。逃げるのを追いかけたりはしないよ。僕は君たちを殺したいわけじゃないんだ」


トーヤはそう言いながら手放され放置されていたミアの杖を持ち上げた。赤黒い宝石は昼の日差しを浴びてきらきらと輝いていた。トーヤは強く魔力を杖に込めた。しかし、なにも魔法は放たずそのまま土が露出した地面に刺し立てる。そして、アカルトは気が付いた。宝石から、色が消え透明になっていることに。


「これで、ただの木片だね。『始まりの大樹』でもないのによく支援魔法が発動できたよね」


魔法血石の色が消える様を始めてみたアカルトが驚愕の表情で固まった。


「さあ、どうする?まだ、僕に歯向かうの?」


見上げるアカルトはトーヤがすごく恐ろしいもののように見えた。


「いや、ミアを治してくれ。僕は、僕は…ミアがいないとダメなんだ……」


アカルトは武器を外し、戦闘の意思がないことを示した。トーヤはため息をつき


「君はそのご令嬢が飼っている奴隷なんだろ?見捨てて逃げることもできるんじゃないのか?」


コンコンと石をたたき詠唱を行う。次第に息が整っていくミアをアカルトは背負い


「僕はミアのものだよ。昔も、今も。ずっとこの先もね。僕を選んでくれたミアを僕は最後まで守り抜く」


「駄目だ!!ゴフッ…シャルドネ様の敵を殺す…!!グッ……」


せき込むミアを見つめアカルトは走り去っていく。宣言通り追いかけず走り去っていく背中をトーヤは見つめていた。




「なんや、もう終わったんか」


半壊した扉の向こうからレイミーが姿を見せた。手には、自身の武器である黒い弓を持ったまま。


「お前、誰?」


トーヤが剣を構えた。杖は邪魔にならないように壁際に投げ捨てカラカラと音を立てて転がった。


「誰って、見てわかるやろ?親友のレイミーちゃんやで?」


ふふんと笑いウインクを見せるレイミーにトーヤは距離を取り、間合いを開けた。それは魔法使いの間合い。剣士でも、射手のものでもなかった。


「一つ。レイミーは常にレモン色の耳かざりをつけている。能力の制御のためだけど」


人指し指を立て、論じるようににらむ。レイミーは自身の耳を触り、何もついていないことに気が付いた。


「二つ。レイミーは一人で行動しない。自分が暴走しないために」


トーヤが中指も立てます。レイミーは矢筒に手を伸ばし、二、三本取り出した。それはまだ、弓にセットせず。


「三つ。僕は入学当初から全員の魂の鑑定を行っていた。レイミーは何重にも変化魔法をかけていたから時間がかかったけど、もう、終わってる」


薬指も立てます。そして手を下ろし、剣を構えた。


「お前、シャルドネだろ?」


トーヤの問いに、レイミーは微笑む。そして、


「まぁ…もうばれてしまったのですね」


残念そうな、そして嬉しそうにも見える笑顔で姿を変えた。


陶器のように白い肌。漆黒の黒髪と魔法血石と同じ真っ赤な瞳。少女のように未成熟な肉体とそれに不釣り合いなほどにレイミーが所持していたまがまがしい弓は身長ほどの長いものに見えた。


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