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野良の戦士は聖女様!  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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11 対人戦。




 レッドさんにお礼を言って、私はジャックさんの鍛冶屋をあとにした。

 試し斬りが楽しみで、すぐに転移して荒地に向かう。

 一見いつも通りの岩山がそこらかしこにある荒地だったけれど。


「ノラ。奇遇だね」

「ひゃあ!?」


 真後ろから、声がして仰天した。

 振り返るとそこに立っていたのは、水色かがった白銀髪と同色の睫毛のアイオライドさん。にこっと笑っていた。


「い、いつの間にっ」

「オレが先に来てたんだよ。君が目の前に現れた」


 そうか。また尾けてきたのかと疑ってしまったではないか。


「ここのモンスターは、もうオレが狩っちゃったよ」

「ああ、そうでしたか。お疲れ様です」


 先を越されたのならば私は移動しようと考えた。

 その時だ。白銀の刃が振り下ろされた。

 私は反射的に剣を抜いて防いだ。


「!?」


 アイオライドさんに攻撃されたことに驚愕をする。

 今、反応出来なかったら、斬られていたところだ。


「何のつもりですかっ!?」


 剣と剣が交じり合う向こうにある綺麗な顔を睨み付ける。


「手合わせをしたいんだよね」

「はっ?」

「どれほどの実力か、調べさせてもらうよ」


 綺麗すぎる瞳から放たれるものに、ぞくりと背筋に走る。

 これは殺気? 彼は本気なのか?

 見定める前に彼が一度剣を引き抜き、そして下から振り上げた。

 私はその剣を叩き落とす。

 冗談じゃない。人間と戦うなんて、無理だ。

 モンスターと戦う時は、決まって頭や首を狙って確実に仕留めにいくスタイル。それを人間相手に出来るわけがない。万が一を考えるとゾッとしてしまい、反撃が出来ない。ただでさえ研いだばかりで切れ味抜群の状態だ。想像するだけで恐ろしい。

 だから、繰り出される斬撃を、止めるだけ。防御に徹した。

 私はこれなのに、アイオライドさんの方はギラつく目をして、好戦的な笑みを浮かべて容赦なく剣を振るう。

 この人! 私を仕留めようとしている!

 おののいて、私はどんどん後退りしていく。


「反撃しないの? つまんないなぁ」

「や、やめてくださいっ!」

「反撃しないと、他言しちゃうよ? 君が奇跡を起こしたってこと」


 アイオライドさんは、好戦的な笑みのまま首を傾けた。

 それは困る!


「もう他言したじゃないですか?」

「何のこと? オレは誰にも言ってないよ」

「えっ!?」


 でもタンザナイトが知っていたではないか。

 ああ、彼は厳密にはアイオライドさんに聞いたわけではないと言っていた。ただ惜しいとは言っていたっけ。どういう意味か、今でもわからない。

 斬撃を受け続けている今、考えている暇はなかった。


「風よ(ヴェンド)!」


 私は仕方なく反撃に出る。風を放つのだけれど、アイオライドさんに当たる直前で弾けて消えてしまう。

 驚きながら、私は後ろに飛んで距離を取った。


「!?」

「オレに風の魔法は効かないよ。風の精霊がついているからね」


 風の精霊の契約者か! だからあの晩、尾いてこれたのか!

 アイオライドさんの後ろに、薄っすらと精霊が姿を見せた。

 少年の姿だ。薄緑色の衣服を纏っていて、素足で浮いている。ふわふわしていそうな真っ白な髪をしているけれど、瞳は若葉色。ごめんねーと手を合わせてジェスチャーをして、笑って見せる。

 いや、止めてください!


「もう反撃もしたので、剣を納めてください!」

「まだ始まったばかりじゃないか」


 ひぃいい! まだやる気だこの人!

 もう勘弁してほしい!

 でもそちらがその気ならば、と私はアイオライドさんの足に視線を寄越す。耳の魔法道具に集中して、氷漬けにして身動きを封じようとした。

 けれども、アイオライドさんはじっとしていない。

 ひょいっと氷を避けて、一気に間合いを詰めてきた。風の魔法を使ったのだろう。


「風よ(ヴェンド)!!」


 斬られると確信した瞬間、私は咄嗟に唱えた。

 効かないとはいえ、弾き飛ばすことは出来る。

 私も弾かれて、地面に両足を食い込ませて留まった。

 休むことなく、また風の魔法で加速したアイオライドさんが間合いを詰める。

 キンッと剣と剣がぶつかり合う。ぎりり、と押し付けている間に、私はアイオライドさんの腹に向かって足を振り上げた。

 命中した途端、謝りたくなる。

 ごめんなさいっ。

 仕留める気で向かって来ている相手と言っても、人間に攻撃することが初めてな私は引き腰なった。


「そうこなくっちゃ」


 けれども、アイオライドさんの方は嬉しそうに笑ってお腹を摩る。

 この人、血の気多すぎる!


「そ、そうだ!! アルコバレーノが王様に呼ばれていましたよ! 任務があるんじゃないですか!?」


 なんとかこの戦いを終わらせてもらうとした。


「ああ、オレは君と同じで単独行動が好きだから、王からの任務が来ても参加しない方が多いんだ」


 だから初めて会った時、アルコバレーノ一行と一緒にいなかったのか。今も一人でいる。


「も、もう許してください。私は人間と戦うのは初めてで……」

「じゃあオレをモンスターだと思えばいいじゃん」


 それをやったら仕留めてしまうかもしれないから怖いのではないか!


「オレのこと、仕留める自信はあるんだ?」


 私の心を読んだアイオライドさんは、目を細めて面白そうに口角を上げる。


「来なよ。仕留められないからさ」

「い、嫌です」

「万が一の時は、また治癒魔法を使えばいいじゃないか」


 万が一のことを起こしたくない。この気持ちを察してほしい。

 瞬きの間に、風と共に目の前に現れたアイオライドさんが振り上げる剣を、反射神経を頼りに叩き落とす。でも風が巻き起こって、私はそれに吹き飛ばされて、岩山に叩き付けられた。

 いったい。

 痛みで呻く前に、鋭利に光る剣が目に向かってきたから、屈んで避けた。

 ザックリと、岩山が両断される。風の魔法が加わった斬撃だ。恐ろしい。


「アクータターレ!」


 水の球体を生み出して、アイオライドさんにぶつけた。

 転がって吹っ飛んだアイオライドさんは、風の魔法で防御したらしく、濡れてはいない。


「ほら、楽しくなった」

「全然、楽しくない!」


 私と彼の意見が一致しない。

 誰かどうにかしてくれないだろうかと、思っていた矢先のこと。

 どこからともなく、紙で出来た鳥が羽ばたいて現れた。

 それがアイオライドさんの手に留まる。アイオライドさんがそれを持てば、一枚の紙に早変わり。手紙が来たみたいだ。


「……へぇ。楽しそうだ」


 にやり、と片方の口角を上げたアイオライドさんが、また好戦的な笑みになっている。手紙を見てもそんな笑みになるなんて、怖い人だ。


「ごめん。やっぱり任務に行くことにしたよ。じゃあまたね、ノラ」

「は、はぁ……いってらっしゃい」

「!」


 やっと剣を納めて背を向けてくれたことに、胸を撫で下ろす。

 他に言葉を見付けられなかったので、任務に向かうであろう彼にそう言ったら、驚いた表情で振り返った。


「……いってらっしゃい、か。久しく言われたことがなかった」

「ああ、それなら私も言うのは久しぶりです」

「そう。いってきます」


 アイオライドさんはどこか機嫌が良くなったような笑みで、言うと転移魔法でこの場から消える。

 いってきます、も久しぶりに言われた。

 そんなことよりも緊迫した空気から漸く解放されて、私はその場にへたり込んだ。


「……なんで、助けに入ってこなかったの?」


 ずっと傍観していたエメに、恨めしく言う。


「いい経験になると思ってな」

「人と斬り合うなんて、経験したくない」

「そう言うな。いつかは悪人と斬り合うことになるかもしれないぞ」

「……」


 私は露骨に嫌な顔をした。そんな機会が巡ってこないことを願う。


「気を取り直して、炎の魔法を使いにモンスター狩りをしましょう」


 覚えたての火の魔法を使いたい。私はまた別の荒地に転移した。今度は平坦な地面が広がっているだけの場所。モンスターを目視出来た。

 マンモスのように丸々と大きなモンスターだ。


「炎よ(フレンマ)!」


 手を翳して狙いを定めて炎を放つ。当たったが、仕留められない。

 怒らせただけで、こちらに向かってズンズンと突進してくる。

 私は余裕で避けてから、続いて火柱を生み出した。離れた私のところまで熱風が届くほどの炎が渦巻く。マンモスモンスターは、クリスタルに変わった。

 それで私に気が付いた複数のモンスター達が、こっちに向かってくる。

 私は水の檻を出して、捕らえた。そして炎の球体を降り注いだ。

 鼻を劈く焦げた臭いと、メラメラと燃える火を見て、あの晩を思い出す。


「……」


 宙を切るようにして手を振れば、水の柱は崩れて火を消した。

 焦げた地面を見つめてから、周りに視線を寄越す。モンスターはもういない。私はクリスタルを拾い集めた。


「あ。剣の切れ味を試すの忘れてた」


 そうポツリと漏らす。けれどももうモンスター探しをする気力がなくて、私はそのまま帰ることにした。

 いつも通り、ギルド会館で換金して、食堂で食事をすませて家に帰る。

 シャワーを済まして、ベッドにダイブ。

 気持ち良く眠っていた時だった。

 ズシッと腹にのし掛かる重さに、私は飛び起きる。


「ぐはっ!」


 リアルでそう漏らしてしまった。


「な、な、なんですか!?」


 腹の上にいたのは、少年だった。白金髪の巻き髪の頭の上には、ロシアを思わせるあのもふもふした白い帽子を被っていて、温かそうな毛皮のコートを着ている。可愛らしいとしか言えない顔立ちをしているけれども、彼は大きな目に涙を溜めていた。

 こうして現れるのは、きっと精霊しかいない。

 そう決め付けてとりあえず問い詰めたけれども、様子が変だ。


「助けて、ノラっ」


 泣きじゃくって、少年の姿の精霊は助けを乞う。


「ど、どうしたのですかっ?」

「助けてっ!」

「わかったから、説明をしてください」

「助けてくれる!?」

「私の力で助けられるのなら……」

「本当!?」


 精霊に触っていいものだろうか。あやすことを迷っていれば、少年は笑顔に変わった。


「じゃあ行こう!!」


 がしっと肩を掴まれる。ハッとする。


「ま、待って!!」


 声を上げたが、遅かった。剣をくわえたエメが胸に飛び込んだ瞬間、転移される。

 そこは上空だった。一気に冷たい空気に包まれて、身震いする。


「なんでっ上空!!?」


 エメと剣を抱き締めて落下する私が下を見れば、そこは真っ白だった。

 転移したいけれど、ペンダントを持ってきていない。

 そのまま落下していった。



 

20180221

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