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第04話 ベッドの下のお宝

《レベルが上がりました》

 

 目の前には、地面に沈んだ二十名の盗賊たち。

 生存者はゼロ。

 

 出てきた残り17名の中に魔術を使う人間は、水魔術を使う者が一人いただけだった。

 

 それを先に沈めてしまえば、後は単純に武と武のぶつかり合いだ。

 いずれは、魔術をしのぐ方法も探さないといけないのだろうが、今のところはこれでいい。

 

 後から出てきた連中は、やはり強かった。

 犬のような男と、熊のような男は格段に強かったように思う。

 

 とはいえ、何の問題もないレベルではあったが……。ドングリの背比べの中に、ちょっと大きめのドングリがあったくらいの感じだろうか。

 

 (いま)だに出っぱなしのARウインドウをYesを押して閉じて、一息。

 改めて自分が作り出した惨状を改めて眺めると、ようやく()()()の実感が湧いてきた。

 

 相手が悪党だったからか、じいさんの武術のおかげか、それとも母さんのおかげでこの世界がゲームのように見えているからかわからないが、やはり忌避感はない。

 

 実のところ、西洋剣は初めて使ったが、日本刀とは違って斬るというよりは、叩きつける鈍器のようだった。

 日本刀で骨ごと断ち切る感覚で斬りつけたら、ただ骨を砕いただけだったのは少し焦った。

 その後使い方を変えたが、膂力が強すぎるのか、剣は途中で曲がってしまった。

 どうやら、身体能力は恐ろしいほど向上しているようだ。

 

 地球にいた頃の実力でも十分対処できただろうが、剣があそこまで曲がるほどの膂力はなかっただろうし、返り血を避けるなんて芸当も不可能だっただろう。

 返り血を避けることができたのは、切り口が汚く、血が勢いよく噴き出すようなことがなかったことも原因だろうが。

 こうして見ると特段の感慨もわかない。

 

 戦闘中には、幾度となく【完全見取り】が発動した。

 【真理の魔眼】でスキル名を確認するだけでもスキルを獲得することはできるようだったが、実際に発動しているところを見ると、それを使うために積んだ研鑽や知識もまとめて習得できるようだった。

 

 武術系スキルや魔術系スキルには、術技ってのがあるらしい。

 

 たとえば、【炎魔術】スキルを覚えていたとしても、『ファイアボール』などの術技を覚えていないと、死にスキルとなるようだ。

 武術系スキルの場合は、術技がなくとも単に剣の腕前が上がる効果があるようだが、剣の腕前が上がったからスキルレベルが上がったのか、スキルレベルが上がったから剣の腕前が上がったのか……

 

 卵が先か、鶏が先か。

 

 俺の場合は、スキルを複製しているわけだから、確実に後者だな。

 

 術技はスキルの経験に付属するらしく、何かしらの発動を確認すればまとめて複製できる。

 すべての発動を確認する必要はないというのも、面倒がなくてよさそうだ。

 

 そもそも、術技自体にはレベルはない。

 

 既に得ているはずのスキルでも、【完全見取り】は発動していたので、スキルを使用しているところを見れば見るほど、経験が蓄積されるのだろう。

 ただ、正直さっきは戦闘に意識を()いていて、キチンと検証できているとは思えない。

 もう一度、安全な場所で検証してみるべきだと思う。

 

 

 日本で練習していた技なんかは、一度使うか【完全見取り】で複製してスキルとして覚えると、日本での習熟度に応じてスキルレベルが上がるようだ。

 4とか5になっているモノは殆どがそうだ。

 

 まぁ何にでも例外ってのはある。

 【気配遮断】なんかは日本で余り使ってこなかったからか、スキルレベル3と他と比べると低い。

 

 盗賊の記憶によると、スキルレベルと術技の数は特段比例しないようだ。

 スキルレベルが上がればより強い術技を覚えやすくなるが、一切の練習も無しに覚えるってことないみたいだ。

 

 【剣術】の経験が、盗賊のモノだけになっているのは、日本で西洋剣の練習をしてこなかったからだろう。

 

 ちなみに、盗賊の殆どが【剣術】を持っていたおかげで、経験を蓄積でき何とかレベル3にはなったようだけど、感覚値では上の下くらいの腕前だろうか?

 そうすると、レベル3と言うのは案外高いのかもしれない。

 

 まぁ、じいさんの前に立ったら、1秒で細切れになるだろうが。

 

 サーベルがあれば、まだ刀の応用と【剣術】スキルで何とかなりそうな気もするな。

 問題は、【刀術】スキルってのがあるかどうかだな。

 

 術技を試そうにも、相手もいないし的もないので、今試せるのは体術の『ステップ』だけだ。

 足に魔力を集めて、素早く回り込んだり、回避行動をとったりできる術技のようだけど……

 

 うん、まぁ……今はいいかな?

 術技に頼らなくても、それ位なら自前でできるし、保留でいいだろう。

 

 ひとまず、盗賊の持っていた武器で使えそうな物はアイテムボックスに入れていこう。

 最初に拾った片手剣は、ひん曲がって使えなさそうだけど。

 

 拾ったのは、鉄の剣15本、鉄のダガー12本、鋼鉄の斧1本、木の杖1本、鉄の短槍2本だ。

 短剣が多いのは、サブに持っている連中が多かったからだ。

 ちなみに、鉄の~といっているのは、【真理の魔眼】でそうなっていたのと、アイテムボックスに入れたときの名前がそうなっていたからだ。

 

 ひとまず収奪を終えたので、とりあえず洞穴の中へ入ってみる。

 

 中に人の気配は一切ない。魔力もだ。

 それでも一応は警戒しながら、中へと入る。

 酒と食べ物の匂い。それに、男臭い匂いと、革の匂いだろうか。

 酒の匂いが強く、土の匂いなどはあえてかぎ分けるようにしないと感じない。

 あまり良い匂いとも思えないので、あえて嗅ぐ必要はないが。

 酒と食料、山分け途中であろう革袋に入った幾ばくかのお金(【真理の魔眼】調べ)を除けば、これといって目立つものはない。

 

 まぁ、金がないから盗賊なんてやっているのだろうが……

 宵越しの金を持たないのにも程があるな。

 

 ――こっちこっち

 ――ベッドの下

 ――大きな穴だよ

 

 戦闘中は聞こえなかった、あの声がまた聞こえる。

 

 声に従って、四つ並んだ3段ベッドに近寄る。

 

 明らかに床数が足りていないが、ベッドにありつけないものは雑魚寝か見張りなのだろう。

 よくよく見ると、真ん中のベッドの近くに何度も引きずられたような跡があった。

 

 昔から“大切なモノ”を隠すのはベッドの下と決まっていると、誰だったか忘れたが、女子のクラスメートが言っていたな。

 

 そんな益体もないことを思い出しつつ、ベッドをどけると、地下への階段を発見した。

 

 階段というか縄ばしごだが。

 

 さすがに空気やら酸素濃度は大丈夫そうなので、気にせず降りてみる。

 

 倉庫兼宝物庫なのだろう。

 

 酒や食料に混じって、金属のインゴットや、魔石(【真理の魔眼】調べ)に宝石、革袋や壺に入れられたお金、手触りの良い布に、アクセサリ、宝飾類、なぜか大量にある武器が保管されていた。

 防具や、衣服の類いはない。

 

 大量にある武器は、盗賊たちが使っていた、鉄の剣、鉄のダガーに加えて、ダガーより刀身の短い鉄のナイフに加えて、ダガーよりやや刀身の長い鉄の短剣が殆どだ。

 ナイフにダガーそれに短剣は、片手剣とは違い、片刃でやや反りが入っており鋭い刃が付いているようだ。これなら、斬ることができるだろう。

 

 大量の武器の中には、大剣の類いやサーベルは存在しないようだ。

 槍は、鉄の穂先があるだけで、柄がついたものはない。

 

 まぁ、行商人を襲ったのなら、さもありなんと言った感じだろうか?

 

 それ以外では、質の高そうな武器が数本あったくらいだ。

 

 【真理の魔眼】によると、黒曜鉄の剣、ミスリルのエストック、銀のレイピア、ダマスカスのシミターだ。

 

 ダマスカスのシミターだけど、これはなかなか良さそうだ。

 鉄の剣は長さ的には片手剣ではあるものの両手持ち可能だが、シミターはナックルガードが邪魔で両手持ちはできない。

 しかしながら、キチンと斬る構造になっているのだ。

 

 折れず曲がらずとはいかないだろうし、居合いもそのままでは無理だろうが、俺が習った剣術はこれでいけそうだ。

 

 帯剣用のベルトは転がっていたので、学生服のベルトと入れ替えて帯剣する。

 これで何とかなったな。

 見た目は抜刀隊みたいだけどね。いや、日本刀じゃないし違うか。

 

 当面使えそうな武器は手に入れたので、あとは気にせずどんどんアイテムボックスに入れていく。

 【真理の魔眼】で調べなくても、アイテム名だけならアイテムリストに出るのだ。気にせずいこう。

 

 ……と思ったら、「銀のインゴット」やら、「金のインゴット」に混じって、「未鑑定のインゴット」が大量に混じってしまっている。

 【真理の魔眼】で調べればいいのだろうが、今は面倒だな。

 

 アイテムリストで未鑑定と出るモノだけを調べればいいのだから、手間は減るだろう。

 やはり気にせずにいこう。宝石類は殆ど未鑑定となってしまったが。

 

 次にアクセサリ類だ。

 アクセサリにも、宝飾品にも興味がない俺は、これまた気にせずアイテムボックスに入れようとしたが、

 

 ──────────

 ・名称

 偽装のネックレス

 

 ・詳細

 スキル【偽装】が付与された魔晶石を使用したネックレス。

 持ち主が死亡した場合、その効力を失う。

 

 ・スキル【偽装】

 ステータスを偽装する。

 解析や看破系の魔法、魔術、スキルすべての結果に対しても、偽装した結果を返す。

 偽装の内容は任意に変更可能。

 賞罰の偽装も可能だが、【虚偽判定】スキルなどの結果はステータスには関係ないため、意味をなさない。

 ──────────

 

 

 と、偶々手に取ったネックレスの効果を見て、手を止める。

 

 盗賊と戦ってみてわかったが、俺のステータスはかなり高いはずだ。

 

 それに、俺のスキル。

 これも隠しておいた方がいいだろう。

 

 ステータスは適当にでっち上げておこう。

 

 というか、アクセサリや宝飾類にはこんな便利な効果がある可能性があるのか。

 

 そう考えると全部調べたくなってくるが、一刻も早くここから早く離れたい気持ちも強い。

 少し悩んだが、気にせずアイテムボックスに入れ、後でじっくり見ることにする。

 

 そんな余裕がいつできるのかわからないが。

 

 そうして、ぽんぽんアイテムボックスに詰め込んでいくと、めぼしいモノは大体入れ終わった。

 

 食料品と、酒は置いていくことにした。

 保存状態が信用できないし、毒入りという危険性もある。

 

 盗賊稼業をやっているのだ。

 近くに人が通るような場所や、街などがあるだろう。

 

 幸い火と水は魔術で何とかなりそうだしな。

 森で落ち木を拾いながら行こう。

 

 

 

 

 次回ようやく、ヒロインその1が出ます。

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