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第03話 第一村人発見?

 人が死ぬシーンがあります。

 少々残酷なシーンがあります。

 

 さて、父さんの話では、近くに人が集まっている場所があるという話だった。

 

 どれくらい近いかわからないが、試しに氣を探ってみることにする。

 活術の一つで、近くにある氣を探る技だ。

 

《スキル【気配探知】を習得しました》

《累積された経験を検知しました》

《スキル【気配探知】のレベルが上がりました》

《スキル【魔力感知】を習得しました》

《累積された経験を検知しました》

《スキル【魔力感知】のレベルが上がりました》

 

 唐突に脳内に響く声。

 

 無機質でシステマチックではあるが、母さんの声だ。

 

 メニューといい、この声といい、いくらゲーム好きだからといってやり過ぎだと思う。

 

 まぁ、便利だからいいか。

 と軽い気持ちで納得しつつ、気配探知の精度と距離が段違いに上がっていることに驚く。

 

 今までは、半径100メートルくらいの範囲の気配を何となく把握できる程度だったが、集中すれば半径一キロほどの情報が正確に知覚できる。

 それこそ、小さな虫の気配すらも探ろうと思えば探れるだろう。

 

 フィルターをかけて、ある程度大きな気配と氣に対しての感知に切り替える。

 

 今までであれば、フィルターをかけるまでもなく感知できない気配ではあるし、そもそもフィルターをかける訓練などもしたことがない。

 それが可能となったのは、スキルの存在だろう。

 手に入れた、【気配探知】と【魔力感知】のおかげで、索敵範囲が広がったということだろう。

 

 気配はともかく、魔力か……氣(イコール)魔力なのだろうか?

 変に氣とかいうとおかしな目で見られるのは、この世界でも同じなのだろうか?

 魔力は問題なさそうだが。とりあえず、氣=魔力ってことで、氣という言葉は使わず魔力に置き換えて使っていこう。

 

 ふと地図を見ると、赤い点が北西方面に集まっている。

 どうやら【気配探知】で感知した気配は、地図にも反映されるらしい。

 

 まだ行ったことのない所なので、真っ黒な場所に赤い点が集まっているだけではあったが。

 

 地図。便利だな。

 

 道中にとりあえずの脅威はなさそうなので、人が集まっている場所を目指すことにする。

 まぁ、とりあえず気配くらいは消しとくか。最初は様子見だしな。

 

《スキル【気配遮断】を習得しました》

《累積された経験を検知しました》

《スキル【気配遮断】のレベルが上がりました》

《スキル【隠密行動】を習得しました》

《累積された経験を検知しました》

《スキル【隠密行動】のレベルが上がりました》

《スキル【忍び足】を習得しました》

《累積された経験を検知しました》

《スキル【忍び足】のレベルが上がりました》

《スキル【身体制御】を習得しました》

《累積された経験を検知しました》

《スキル【身体制御】のレベルが上がりました》

 

 スキルの習得とともに、驚くほど精度が上がる。

 はじめは、身体が別の何かに引っ張られるような感じで違和感があったが、【身体制御】を手に入れてからは、その感覚もなくなった。

 

 【気配探知】等とは違い、【隠密行動】や【忍び足】はその動きも補助するものなのだろう。

 その感覚に身を任せずとも問題はなさそうなので、動きを補助する機能と、単純に足音や動作音を消しやすくする機能その両方があるのだろうと思う。

 

 【身体制御】は恐らくそれに逆らう技術かな。

 これも、じいさんの武術が筋力に任せた技ではなく、身体を思い通りに動かしてその動きで攻撃するような技を主としていたおかげかもな。

 そうすると、スキルに引っ張られないというほかに、身体を思い通りに動かしやすくする力もあるのかもしれない。

 

 そんなことを考えつつ、足音一つ立てずに300メートルほど歩く。

 森の中にあって、足音一つ立てないというのは、さすがに普通の運動靴では少々厳しいのだが、スキルの恩恵だろうか? 問題ないようだ。

 

 木の陰からそっと覗いてみると、森が終わり、岩山になっているようだ。

 その岩山の(ふもと)に穴が()いており、その洞穴(ほらあな)の中に、20人ほどの人間が集まっているようだ。

 影になって見えないが、入り口付近には見張りを立てているようだ。

 

「(中の様子が把握できればいいんだけど……)」

 

 ――あの洞穴の中を見たいのね?

 ――あの洞穴の中を聞きたいのね?

 ――いいよ? いいよ? 見せてあげる!

 ――いいよ? いいよ? 聞かせてあげる!

 

 かすかな声。

 

 母さんの声のように脳内に直接響くような感じではないが、さりとて鼓膜が振るえる感覚もない。

 

 そんな声。

 

 驚きで声を上げそうになるが、それを何とか抑えつつ慌てて気配を探るが、何の魔力も気配も感じられない。

 複数の笑い声と、話しかける声がするのに……

 

 ――驚いてる? 驚いてる?

 ――ゴメンね? ゴメンね?

 ――まだ見えないのかな?

 ――どうだろう、まだ慣れてないんじゃないかな?

 

 ザワッと一瞬風が吹いたかと思うと、洞窟の様子が蜃気楼のように映し出されていた。

 

 到底上等とはいえない服に、一目で荒くれ者とわかる姿。

 盗賊かなにかの隠れ家だろうか?

 どう見ても真っ当ではない。

 

 驚いたことに、頭部が犬のような男や、顔自体は人間と近いようだが、熊の耳が頭部にあり、身体全体も熊のような男もいるようだ。

 

「――今日もうまくいったな」

「このあたりは、街道沿いとはいえ、本線からは離れているからな、狩り場にはもってこいだ」

「魔物も弱いからな、それに合わせて護衛も弱くなるって寸法よ」

「今日なんて5分で皆殺しっすからねぇ」

 

 と中の声まで聞こえてくる。

 驚きの連続だが、これで中にいる連中がまっとうではないことがわかる。

 

 とりあえず、ここから離れようと、左足を後ろに出した瞬間、

 カランカランカラン

 と、何かが足に引っかかる感触の後、木が鳴る音が聞こえる。

 

 鳴子の罠のようだ。

 

 致死性の罠でなかったことを感謝しつつ、これ以上ここにいては別な罠を発動させるかもしれないと思い直し、思い切って目に付く罠が存在しない森の外に出る。

 

 洞穴の中からは、見張りの男を含めた数名が慌てて出てくるようだ。

 

 手には剣呑な光を放つ剣が握られている。

 出てきたのは俺と同じ普通の人間だけだが、どう見ても、友好的ではない。

 やらなければやられる。会話を聞く限り、気絶など生ぬるい手段で済ませて大丈夫な相手にも見えない。

 

 しかし……

 俺にやれるだろうか?

 じいさんの技を使えば、武器を使わなくてもやれるだろうが……

 人間相手に、本気で技を使うことなどなかった。

 

 使ったら普通に死ぬからな。スポーツじゃない武術なんてそんなものだ。

 

 一度覚悟を決めると、スッと冷静になっていく。もはや、乱取り稽古と心境は変わらない。

 

《スキル【精神耐性】を習得しました》

《累積された経験を検知しました》

《スキル【精神耐性】のレベルが上がりました》

《スキル【コンセントレーション】を習得しました》

《累積された経験を検知しました》

《スキル【コンセントレーション】のレベルが上がりました》

 

「ちっ、賞金稼ぎがここを嗅ぎつけてきやがったか?」

「その割には、武器もなにも持ってねぇみたいだが……」

「どちらにせよ、やることは変わらねぇさ」

 

 洞穴の中から出てきたのは、動物の特徴を持つ男たちではなく、普通の人間三人だった。

 それぞれ、剣、短剣、杖を装備しており、短剣を持った男が20代前半くらいの若い男で、それ以外は30代前半くらいだ。

 剣と短剣を持った男は、THE山賊といった格好をしているが、杖を持った男は、そのローブのせいか盗賊というより魔法使いのような格好だ。

 

「いや、すみません。森で道に迷いまして……」

 

 と、声だけは朗らかだが、半身で構え警戒は解かない。

 

 意識が戦闘に向いたからだろうか、【真理の魔眼】が発動する。目に魔力を集中しなくても、全身に纏っているだけで良さそうだ。

 肝心の山賊の強さだけど、レベルは全員俺より上のようだが、ステータスはかなり低いようだ。

 

 ステータスには、俺にない項目があり、

 

 ──────────

 犯罪

  殺人、強姦、強盗、窃盗、詐欺

 ──────────

 

 等と書かれている。

 随分色々とやらかしている男たちのようだ。

 

《スキル【完全見取り】が発動しました》

《スキル【剣術】(LV2)を複製しました。付帯して習得されている術技を複製しました》

《スキル【体術】(LV1)を複製しました。付帯して習得されている術技を複製しました》

《スキル【短剣術】(LV2)を複製しました。付帯して習得されている術技を複製しました》

《スキル【杖棍術】(LV2)を複製しました。付帯して習得されている術技を複製しました》

《スキル【炎魔術】(LV3)を複製しました。付帯して習得されている術技を複製しました》

《スキル【純魔術】(LV2)を複製しました。付帯して習得されている術技を複製しました》

《スキル【投擲】(LV2)を複製しました》

《スキル【索敵】(LV2)を複製しました》

《スキル【罠解除】(LV2)を複製しました》

《スキル【罠設置】(LV2)を複製しました》

《スキル【詐術】(LV2)を複製しました》

《スキル【罠解除】(LV2)を複製しました》

《スキル【罠設置】(LV2)を複製しました》

《スキル【鍵開け】(LV2)を複製しました》

《スキル【索敵】(LV1)を複製しました》

《累積された経験を検知しました》

《スキル【短剣術】のレベルが上がりました》

《スキル【体術】のレベルが上がりました》

《以降、スキル【完全見取り】発動でのインフォメーションをカットしますか? Y/N》

 

 何やら選択を促すウインドウが現れるが、今はそれどころではない。

 

 どうやら、【完全見取り】が発動したようだ。

 

 身体に何かが入ってくるような感覚がするが、ただそれだけだ。

 スキルがあるからといって、すぐに超人になれるわけではないのか?

 

「そうかそうか、それは不幸なこった……なっ!」

 

 会話の途中、不意を打つタイミングで、片手剣を持った痩せぎすの男が斬りかかってくる。

 

 ――が、遅い!

 じいさんの柔術は、最速の剣である居合いよりも、さらに速く――いや、(はや)く動く技だ。

 

 剣より(はや)く動き、後の先を取る。

 男の剣の勢いをそのまま利用し、地面に背中からたたきつける。

 当然、受け身など取らせる訳もない。

 

 ゴォン! と、槌で地面をたたきつけたような音に、骨が砕ける音が混じる。

 思ったより大きな音が出たことに驚く。かなり膂力が上がっているようだ。

 

 取った腕の筋はちぎれ、背骨は砕かれ、衝撃で打ち付けた頭蓋骨も砕けているだろう。

 俺は無手だが、地面という最強の凶器がある。

 

 ちなみに、“痩せぎす”の剣を見た瞬間、《スキル【完全見取り】が発動しました》というアナウンスとともに、“痩せぎす”が今まで培った【剣術】の経験が入ってきた。

 奥では、魔術スキル持ちの男が魔力を高めているようだ。

 

 魔術を使うのだろう。“痩せぎす”のときと同じく、【炎魔術】の経験が入ってくる。

 魔術にどんな威力があるのか読めないから、さっさと潰すべきなのだろうが、それを隠すように……また、“痩せぎす”の末路にひるんだ様子もなく、短剣を持った小太りの男が斬りかかってくる。

 

「【電光石火】!」

 

 スキルを使ったのだろう。今度は【短剣術】の経験が身体に入ってくる。

 

 ステータス面で勝るはずの“痩せぎす”より断然速いが――それでも遅い。

 

 待ちの技という側面が強いじいさんの柔術は、速い反面、自ら攻めに回るような技が殆どない。

 特に打撃系の技は皆無と言っていい。

 代わりにあるのが活殺術の殺術だ。こちらは待ちの技ではなく攻めの技だ。

 

 ダガーを躱し、掌底をたたきつける。

 氣……いや、魔力を乗せた浸透勁は体内をずたずたに破壊し、身体が血管から漏れた血液で一回りふくれあがる。

 

《スキル【魔力撃】を習得しました》

《累積された経験を検知しました》

《スキル【魔力撃】のレベルが上がりました》

 

「くらえ! ファイアボ――」

 

 “魔術師”が言い切る前に、魔力を乗せた一撃を見舞う。“魔術師”は“短剣の男”と同じ運命をたどることになった。

 何とか、魔術を使わせる前に仕留めることができたようだ。

 

 この間数秒の出来事だったが、体感時間ではもう何分も経っているかのようだ。

 殺しに忌避感を覚える余裕はない。まだ洞穴の中には盗賊が残っているのだから。

 

 呼吸を整えつつ気配を探ると、慌てて残りの盗賊が出てくるようだ。

 俺は“痩せぎす”が残した片手剣を手早く拾い上げた。

 

 

 

 いくらなんでも、殺しに抵抗がなさ過ぎるでしょうか?

 

 ──────────

 

 ■改稿履歴

 盗賊のパラメーターがさすがに冗長すぎるので、地の文とスキル習得アナウンスに書き換えました。

 このあと、主人公はアナウンスをオフにするのでこの回だけです。

 それに合わせて戦闘シーンも少し書き換えました。

 大まかな流れに変わりはありません。

 賞罰→犯罪に変わりました。

 

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― 新着の感想 ―
>殺しに抵抗がなさ過ぎるでしょうか? 初めてで無我夢中という状況なら全くおかしくないと思います。 逆にいつまでも「人殺しが~」とグダグダやってる系は幼稚に見えますね。 だってリアル紛争地帯とか10代の…
[一言] 殺人術、窃盗術(掏り)、詐欺術(話術)等も後々役に立つかも?マーシャルアーツなんてモロに人を壊す技術だし…
[一言] 幼少期から古武術の特殊な稽古や教育で忌避感が無いとか、じいさんに連れられて現代社会の闇を見て忌避が無くなったとかだと大抵イケる。 と思う。
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