第十二話 暗黒騎士、自分はもう必要ないと察する
アシュレインが仲間になった事で自分の存在意義を見失ってしまった二代目ラヴィリンス
俺がいなくてもこのメンバーが揃ってたらもうやることないし、みんなの迷惑になるんじゃないかな?と被害妄想が強くなる二代目アシュレインの唯一本音を語れる相手は村長のエンリケ
アシュレインは、きちんと牢屋で反省した。
実際は謙虚で優しい
三日間、魔力封印空間で正座(本人は立ってただけと言い張っている)しながら、
「人々に恐れない方法を考えなけばならない」
とか
「紫炎はやりすぎだったかもしれぬ……」
とか、わりと真面目に自己分析していた。
結果。
焔王の魔女アシュレインは、以前より礼儀正しくなっていた
強い魔女でも寂しいという感情があるんだろうな
村ではアシュレインは人気者だ
そして――
報復の魔女ルージュ。
焔王の魔女アシュレイン。
この二人がカルティシアの村に“所属”することになった。
軍団が来ようが何しようが、アシュレインという化物的な魔力を誇る魔女がいれば余裕だ
アシュレインの広範囲攻撃魔法で一掃できるだろうし、
ルージュとミティシが背後からサポートに回れば・・・
村のセキュリティはほぼ要塞レベルだ。
……うん。
完璧だ。
完璧すぎる。
俺の出番、ある?
ないよな・・・
俺が本音を語れる相手は、村長のエンリケだけだ。
「どうしたのですか、ラヴィリンス様」
穏やかな声。
夕暮れの村長宅はやけに静かだった。
仲間が増えて、
しかもその仲間たちがどんどん強くなっていくと――
俺の存在意義、なくならない?
「私はもう必要ないのかな?」
新たな異世界の人物と出会って、仲間になってその仲間達が強すぎてしまった
思わず口から出た。
エンリケは村にやってきた時から俺の弱音を真剣に真面目に答えてくれる優しい人だ
シャイラスはもう一人前の戦士だ。
俺の事を師匠を尊敬してくれるが彼はリージュやアシュレインから俺じゃ教えられない魔法を習えば更に強くなる
剣の腕も魔法も精神力も、堂々たるもの。
アイネスは弱いけど、姑息――いや、戦術的に柔軟だ。
交渉能力もずば抜けている。
あいつ一人で外交できるんじゃないか?
ルージュは俺の知らない魔法を山ほど知っていて、
真面目で、戦術構築が得意だ。
だってラヴァリンスが現役バリバリ時代から側近魔女として戦争を経験している猛者だ
そしてアシュレイン。
化物的な強さだ。炎を出す魔女かと思ったら接近戦もずば抜けて強い
短距離、中距離、長距離からの攻撃魔法も防御魔法も回復魔法も使える
しかも・・・アシュレインには弟子の魔女達がいるらしい
あの魔女、たぶん純粋な戦闘力なら俺より強いかも。
ミティシは――
俺の“肉体”に宿るラヴァリンスの方が好きだし。
……あれ?
俺の役目、終わってない?
「エンリケ」
俺は視線を落とす。
「俺の魂をさ……」
「ルージュ、ミティシ、アシュレイン。あの三人で魂を浄化させて」
「元々のラヴァリンスが生きることって、可能なのかな」
相変わらず夜空を見ながらエンリケの自宅の庭で鍋料理を食べて酒を飲んでいる。
エンリケは、しばらく俺を見つめてから、
静かに答えた。
「可能ですね」
そうだよな。
「俺はこの肉体から魂を消滅させるか、別の抜け殻の生き物に魂を移してもらってこの村が出ていくつもりなんだ」
「あなたはここの暮らしに満足してないのですか ラヴァリンス様」
「してるけどさ 俺はもう役目を果たしたじゃないか」
突然の顔面の激痛
あぁ、エンケリは俺の顔を殴ってきたのか
グーじゃなくてパーだから愛があるな・・・。
「私の事はもうどうでもいいんですかっ!」
「シャイラスも突然あなたが消えたら変わってしまうかも知れないのですよ!」
「強さ強さって、あなたはこの村に必要なお方だ」
「私はあなたの内に眠るラヴァリンス様が生きていた時を知っているがあなたは今までいなかった存在です」
「失礼ですがラヴァリンス様が生きていた頃は村人はラヴァリンス様の事を恐れていた」
「ラビアを裏切ってラビア国民から裏切りの暗黒騎士やら言われても、私達を救ってくれた英雄です。ですが、、、私達他種族はラヴァリンス様の気分で(いつ)消されてしまうのではないかと恐れていたのです。」
「本人を前にして言うのもいけない事ですが、私は二代目のあなたの事の方が頼りになりますし、好きですよ」
「自分の己の弱さを理解しているからこそあなたは弱者に優しい」
「暴力を嫌っているからあなたは話し合いで争いを解決する事を優先的に考えるからこそルージュ様やアシュレイン様があなた側についたのです」
「年寄りの話もしっかりあなたは聞いてくれる 立派じゃありませんか」
「そうだろ シャイラス」
背後にはシャイラスが盗み聞きをしていた
「自分は師匠の情けないところも含めて尊敬してるんですよ!」
「何勝手にネガティブになってるんですか」
「正直初代のラヴァリンスなんて俺が生まれた時にはいなかったし、師匠がいなければ俺は今頃荒くれたオークになっていましたよ」
「アイネスさんだってあなたの前では強がってはいるけどあなたがいなければ処刑されていた事を感謝してるって言ってましたよ」
「相変わらずお前はダサいんだよ すぐに弱気になってウジウジしちゃってさ」
アイネスまでも出てきやがった
「お前のおかげで今の私がいるんだ」
「私は今でもラヴァリンス様に忠誠を誓っておりますが、今のあなたに忠義を誓って村に戻ったのです」
ルージュまでも現れてしまった
「・・・ありがとう」
「さぁさぁ ラヴィリンス様 酒を飲みかわしましょうよ」
優しい仲間だからこそ辛いんだと星空を眺めながら涙を流した
二代目ラヴァリンスは前世では自分に自信が持てなかった性格が余計に異世界でもメンタルが崩壊しそうになってしまった
もう自分なんていらないじゃん・・・・
難しい魔法が使える魔女が3人もいたら俺の魂を消し去って英雄のラヴァリンスがいれば村は安泰じゃないのか。
もしかして俺という存在が仲間達にとっては邪魔なのではないかと疑心暗鬼になってしまい、前世のネガティブ人間は異世界でもメンタルは鍛えられない事を自覚していた
弟子のシャイラスの前ではカッコつけたい
アイネスの前では余裕を持ったラヴァリンスでいたい
アシュレインやルージュは自分より頭がいいし、先の事を考えているし
ナヨナヨしたところを見せたくないのだった。




