07 ジョン視点『ジェイド』として②
よくあるゆるふわ設定です。
ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。
「裏切り者、ね。周囲は敵だらけの中、閣下が油断する相手なんて限られています。粗方、目星はついているんでしょう?」
「家臣のマクレガー、騎士団長のバークリー。他に居るとしたら、執事のベンソンか……?」
パチパチと拍手する『ネイムレス』。ふざけた男だ。
それが正解かどうかすら答えない。
「翡翠の君のご依頼は一体何でしょう?犯人を見つけることでしょうか?しかし、まだ幼く弱い貴方では、実行犯をどうにか出来ても黒幕を捕らえるのは難しい」
「成人するまで表舞台に立つつもりはない。証拠も自分で探す。俺は、身を守るための手段が欲しい。」
「具体的には?」
「要は刺客を倒す程には強くなりたい。剣の稽古をつけてくれる人間を手配して欲しい。それと俺達の痕跡を完全に消してもらいたい」
「成る程。そちらは前公爵閣下からの依頼として受理しましょう」
彼はチラリと机上の袋を見た。
「そして、銀行には内密にですが貴方がたへの遺産が存在します。……それは伯爵夫人にお返しした方が宜しいですよ」
――見透かされて恥ずかしくなる。夫人の好意から借りてきたが、幼くて何も出来ない俺にすぐに返す宛なんてなかった。
大口を叩いて、侮られないように虚勢を張ってもこれだ。
(本当に俺は世間知らずで役立たずで無力だ)
「……悔しい。もう弱いままなんて嫌なんだ。これじゃあクロエも助けられない。お嬢様も巻き込んでしまう。頼む、何でもする。俺を変えてくれ!」
「いいですよ。私は貴方を買っているんです。勿論、今の貴方ではなく、将来性の話ですが。運が良かったのもあったでしょう。ですが、貴方は刺客から無事に逃げ延び今この場に立っている。これが現実で、貴方の可能性だ」
ネイムレスはパンッと音を立てて両手を合わせた。
「少し厳しく教育しますが、簡単に諦めて失望させないでくださいね?」
◇◇◇
それから俺は伯爵邸で働き、空いた時間をこのギルドで過ごすことになった。
ネイムレスの部下として、諜報活動もするようになった。これは色々と役に立つ技能が身に付き、とても有り難い事だった。
身を守るために剣の訓練もした。
暗殺を専門とする者に教わった為に、真っ当な剣技では無かったがそれでも十分に強くなれた。
まだまだ成人では無いから、今叔父を追い落としても違う誰かが俺達を利用しようと近づいてくるだろう。
もっとだ。もっと力をつけなければ――。
伯爵夫人が亡くなってからニ年半後。
伯爵は、後妻とその娘を連れてきた。
お嬢様は二人から色々な物を奪われ、冷遇されている。食事はギルドで稼いだ儲けで多少は向上出来たが、ドレス等は義妹に目を付けられる為に彼女に粗末な服しか着せてあげられない。
彼女は出会った時と何も変わらない。いつも笑顔で、時に苛烈に怒り、そして誰よりも優しい。
どんな服を着ていても、お嬢様が一番綺麗で輝いている。彼奴等にはそれがわからない。
彼女の物を奪えば、彼女の輝きを消せると思っているのだ。
お嬢様のそんな生活が二年続いた。
そろそろ、彼らの弱みでも握って黙らせるべきだ。
お嬢様も成人して、このまま伯爵の庇護にいる必要も無い。
「ちょっと俺やお嬢を舐め過ぎだよね。貴族の女二人の秘密なんてすぐに掴める。ついでに、伯爵を地獄に落とす方法も考えようかな?」
俺も十八歳。漸く成人だ。
(叔父や裏切った家臣には必ず復讐する。だが…)
だが。最近は公爵家に戻らなくてもいいとさえ思ってしまう。クロエが昔言ったように。
でも、使用人の立場では駄目だ。お嬢様は貴族で、やがて何処かの家に嫁いでしまうだろう。
お嬢様と離れる気はない。ずっとあの輝きを見続けていたいのだ。
(どうやっても彼女を手に入れたい)
だから、自分にも肩書が必要だ。
叔父を追い落とし公爵になれば。
――この五年近く。
ずっと証拠も集めていたのだ。もうそろそろ打って出る頃合いだ。
密かに、ある人にも連絡を取っていた。
叔父でも手が出ない人物だ。ここ迄これたのもネイムレスのお陰だ。
本人には絶対に言いたくはないが。
第二の父親のように感じていた。全てが終わったら、大切な人達に自分の気持ちを伝えなければ――。
――そう思っていた矢先に、お嬢様に縁談が来てしまった。
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