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白い結婚!?それなら、私の戸籍をあげちゃいます!〜え?拾った彼は公爵様でした!?  作者: しぃ太郎
第二部 公爵家で頑張るお嬢様

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41 ネイムレス③

よくあるゆるふわ設定です。

ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。


 彼女はとうとう一線を越えてしまったらしい。

 国王から第四近衛部隊(黒い狼)まで借り受けて、ベルンスト公爵家に送った。

 狙いはクロエと婚約者だろう。

 公爵邸に送ったギルド員は精鋭ばかりだ。だが、きっと厳しい戦いになる筈だ……。


 ◇◇◇


 初めて会った時のオーガスタは一六歳の少女だった。


 衝突が絶えない隣国のエルムハイツ王国から和平交渉の末に迎え入れた王女だった。

 当時の王子は、現国王のレオナルドと当時は第二王子だった私――ラインハルトの二人だった。

 本当は、既に王太子として決定していた兄が正妃に迎え入れる予定だった。

 ――だが、兄は隣国の王女など汚らわしいとまで公言して、拒否を示したのだ。


 そうなれば、私に婚約話が回ってきた。

 和平の為の結婚だ。

 当時一つ下の十五歳だったが納得して受け入れた。


 彼女がこのアルセリアに来てから、この国の人々の悪意から守ろうとしたつもりだった。

 やはり、何度も衝突を繰り返す隣国にいい感情を持っている人間は少なく、彼女を虐げることで気を晴らす者も多かった。


 使用人でさえその扱いだ。

 彼女の心労と心細さはどれ程のものだっただろう。


『わたくしだって帰りたいわ。こんな国に来たくて来たんじゃない!』

『オーガスタ王女、申し訳ありません。私が不甲斐ないばかりに貴女が見縊られてしまう』


 いつも、傷ついて涙を流すまいとしながらも。失敗して庭の片隅で涙を流す彼女の隣に座り慰めるしか出来なかった。


 それが半年程続いたある日――。婚約発表の式まで三カ月を切った時に城中が大騒ぎになった。


 ――レオナルド殿下が王女を寝室に連れて行ったらしい。

 ――側妃にすると仰っている。

 ――国王もお認めになった。


 彼女と私の婚約話は立ち消えになり、彼女は兄に嫁いでいった。

 昔から私の物を奪う事が多かった兄。

 疎まれているのは知っていたが、まさか彼女を巻き込むなんて!


 まだ純粋で幼い部分が残っていた。

 そんな風に扱っていい人じゃなかった。

 私への当てつけの様に連れ回して、見せびらかす。

 下品な話を周囲に語られる。

 そんな扱いを受ける必要も無い人だったのに――。




 それからは彼女との接点はほぼ無くなり、彼女は無事に男児を産んだ。

 側妃とはいえ、王子を産んだのだ。

 これで侮られる事も無いだろう。

 二年程前に王妃が王子を産んでいた事からも、そこ迄神経質になることも無い。

 これで少しでも彼女に安らぎがあれば――。

 そう思っていた。


 すくすくと王子たちは成長して、偶に見かけるオーガスタ様も穏やかな顔つきをしていた。



 二十歳を過ぎて私に結婚話が出たが、まだ兄が王位に就いていないので断り続けていた。

 ある日、王室主催のパーティーで少し彼女と話す機会が出来た。


『幸せになれましたか?貴女がこの国に少しでも居心地の良さを感じられていたらいいのですが――』

 

 最初から聞きたい答えがあった質問だった。

 卑怯だったかもしれないが、彼女に気を使わせたのかもしれないが。

 彼女はそれに応えてくれた。


『ええ。最近は幸せを感じますよ。もう心配しなくても大丈夫ですわ』

『それは、本当に良かったです。これからも貴女の幸福を祈っております』


 その夜の彼女の微笑を――その月明かりの下でした会話を、その時に感じた安堵と苦味をずっと忘れる事は出来なかった。



 ◇◇◇


 二十三歳の時――。

 兄に斬りつけられ、瀕死の怪我を負った。

 本来なら森に捨てられ、そこに住む狼にでも食われる予定だったのだろう。

 瀕死の私を運び、投げ捨てた後に救いの手が差し伸べられる。そんな奇跡的な事など誰も想像していなかった。


 助けてくれたのは、当時のベルンスト公爵――ジェイドの父だった。

 それから、公爵領に匿われ怪我を治した。

 まだ十歳に満たない双子に挨拶したのもその時だ。


 どう、上手くやったのか。

 私の遺体が見つかったとの話が出回り、国葬が行われた。死因は闇に葬られ、噂に上がる程度に留まった。

 その国葬の日。

 私は顔を隠して、髪色を変え、身分を偽りベルンスト公爵の侍従として参加した。


 その時の、オーガスタの様子は。

 もう昔の面影など残ってもいないような、とても力強い瞳で、真っ赤な口紅を塗った口元で妖艶に微笑んで。

 ――涙を流していた。


 ◇◇◇


「マスター、アレクセイ殿下から公爵邸の敵の制圧が完了した旨と、これから敵を尋問を開始するとの伝言を承っております」

 いつも補佐官として置いているギルド員から声を掛けられて目を開ける。


「そうか。殿下に会って相談したいと伝えてくれ」


 いつまでも目を閉じて見ない振りを続けた事こそが私の罪だ。その罰を若い世代が被る必要なんてある筈がない。私が終わらせなければいけない事なのだ。


 そう。私の罪は重く伸し掛かるが。

 大恩のある彼の子供たちに手を出した事は個人的にも許せない。


「君の罪はもっと重いんだよ、オーガスタ。もう罰を受けて責任を取る時間だ」


 殿下に会う前に、今まで集めた証拠を提出しなければ。やるならば徹底的に。反論の余地もなく、追い詰め、破滅させる。

 大量の血を浴びることになるだろう。レクシビル公からその下の者まで、出来る限り全てに血を流させる。


 それがこの裏の社会で生きる者のルールだ。

 それが『ネイムレス』と名前を与えてくれ、このギルドを預けてくれた彼――当時のベルンスト公爵に対する恩義だった。


 

いつも、読んで下さる方、ブクマしてくださる方、評価してくださる方、リアクションしてくださる全ての方に支えられています。

ありがとうございます!本当に励みになっています。

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