36 ジェイドとレイアスの共闘
ここから相変わらずの苦手な戦闘に入ります。
レイアスはヤバい奴だな〜と思ってくだされば成功だと思っています。
☆よくあるゆるふわ設定です。
ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。
「うわー……。そんな冒険小説みたいな事をしてたの?本当に?え、本当?鍵開け?え、本当に?諜報活動ってその顔を使ってのハニートラップ専門かと思ってた!」
「……流石に酷くない?」
ジェイドの脱獄の話を聞きたくて、散々強請ったら教えてくれた。その話が現実味が薄くて何度も聞いてしまう。
「プッ……、あははは!全然信じられてないじゃんかジェイドってば。話を盛ったと思われてる、おもしろ!」
「うるさい、レイアス。それでネイムレスからの護衛も到着したんだろう?ヘレン嬢は既に安全な所に発ったのか?」
ジェイドが、笑われて少し不機嫌になってしまった。
私は笑ってないのにな。レイアスは相変わらず性格悪いわね。
「さっきね。大事な証人だ。それでやっぱりジェイドもここが弱点だと思って守りに来たの?――これで終わる訳ないもんねぇ」
「ああ、そんな所だ。それに、アレクセイからの『お願い』でネイムレスを説得しなきゃいけなくてね」
王子も彼に協力を求めているって事?そんな話を本人もしていたわね。何度も接触を求められていると。
――何者かしら。
ただのベルンストの諜報機関だから、って理由ではない気がする。
そして、周りはみんな正体に気づいているのよね。
クロエを見ると可愛らしく首を傾げているけど、話の内容をちゃんと理解しているのは何となくわかるわ。
これじゃあ、推理もので種明かしの時に「驚く役」が私じゃない。
そんなの求められても嫌だわ。
「で、そのネイムレスは何者なのよ。王子が説得をお願いする相手って何?――なんでみんな正体に気付いているのに、ちゃんと口に出さないの?出しちゃいけない相手なわけ?」
私の問いに、それぞれが目配せしている。
はいはい、横から口を挟んで悪かったわね。
「やけに、側妃様にも第一王子にも詳しかったし――まさかの王族?しかも、口に出せないって……。あの年頃なら亡くなった王弟だとか?」
十年くらい前に亡くなった王弟が居た気がするけれど。当時は幼かったから顔も知らないのよね。うーん……後は他の公爵家の――。
「お嬢様ってそういう所あるよね」
「ええ、やはり推理小説もお貸しして良かったです!」
「ルフィーナ様が馬鹿じゃなかった」
適当に言っていたことが当たってしまったらしい。
――ジェイドは、空気が読めないって言ってる?気づいても気付かない振りをしろって事ね。それはゴメン。
――クロエは純粋に褒めてくれてるわ。最近はミステリーやホラー系に嵌っている彼女にはちょっとついていけないの。
――レイアスは最早ただの暴言じゃない!
後で踏み付けてやるわ!
「そう、ルフィーナが言った『お方』が正解。もう口にしないように。……で、『彼』からも俺に連絡が来てね。相手に動きがありそうだから、ちゃんと守り切れたら考えるってさ」
「え!やっぱり危ないの!?」
危険な話になってきたので、クロエに抱きつく。
「そっか。でも大丈夫だよ。僕とジェイドがついているし、ギルドから何人も借りてきて居るし」
レイアスが心配させないように言ってくれたが――。
「ギルドメンバーは外を固めてもらっている。国王が絡んでいるなら、動くのは第四近衛部隊、通称『黒い狼』だ。こっちも気を抜くなよ。仕掛けてくるなら、今日か明日の夜――一番可能性が高いのは今夜だ」
ぴぇ!
来るの!?しかも、アーテル・ルプス!?意味は忘れたけれど、怖い二つ名がつく程の噂の部隊なんでしょう!?
「わ、私達はどうすればいいの?何も出来ないわ。取り敢えずナイフ!不安だからナイフを持っていたらいいかしら!」
「いや、逆に自分で怪我しそうで不安だよ。大丈夫、もし誰かが入ってきたら、壁の片隅に二人で寄っておいて。その方が守りやすい」
ジェイドが指差す方は、ドアと反対側の壁の片隅。机があるから、少し動かして防御を固めようかしら。
「外に異変があったら気付くから、合図したらクロエと一緒に下がってね。レイアス、武器はちゃんと用意してるな?」
「誰にものを言ってるのかな、ジェイド。僕の方が諜報活動も戦闘経験も多いんだよ?君はお姫様達を守る事に専念してね」
あまり緊張感がない彼らの台詞。
私は怖くて仕方がないのに。
ジェイドとレイアス、それに外を守っているというギルドメンバーってエマとメアリーも入っているんだろう。
「ここまで動いてくれたら、随分と証拠が掴めるね?何人か殺さずに縛りあげないと」
「ああ。側妃のその護衛騎士、って奴も来てくれたら最高の舞台だな。随分と信頼しているみたいだし、母国から連れてきた実力者らしいからな。ここに来てくれたら迷わず生きたまま制圧だ」
無事に生き残れたら、ベルンスト公爵家への不当な攻撃だと抗議出来るだろう。
きっと新聞社にも情報を流して大打撃を受ける筈だ。
今話題の公爵と、政争に巻き込まれる優秀な第一王子の美しい主従関係等と持て囃されるかもしれない。
この辺の政治的な感覚は生まれついた才能なのか、公爵家で育ってきた賜物なのか。やっぱり私とは違うんだなぁと実感する。
「あ、そうだルフィーナ様!」
そんな事を想像している時ににレイアスが話しかけてくる。
「いつも僕の事を性格悪いだ、嫌いだって言ってたけど、これが終わったらちゃんと謝ってもらうからね!お店借り切って、沢山奢ってもらおうかな!絶対約束だからね!」
―――駄目ーーー!!
レイアス、その台詞は今の場面では駄目ーー!!
「見事な死亡フラグよ、レイアス」
隣でクロエがポツリと呟いた。
◇◇◇
明かりを消した暗い部屋の中。
――時間が経つのがやけに遅い気がする。
まだ来ない。
いや、来てほしくないはないけれど、来るなら早く来てほしい。待っているのが辛すぎる。
『今日はもう来ないのかな、ねぇクロエ』
肩の力を抜いて、隣のクロエに小声で話しかける。
『お嬢様!それって――』
――キンッ!キンッ!
人が移動する音と、金属がぶつかる音が聞こえてきた。遠くから怒声も悲鳴も聞こえてくる。
「お嬢様、見事なフラグでした!しかも回収まで……!でも、やっぱり怖いですよ……」
「くっ……!台詞全てがフラグに繋がる気がして喋れない!これが終わったら、クロエとジェイドにギュッとして慰めてもらうんだから!!」
「これが終わったら、二人で旅行でも行きましょう!」
――あ、何気に二人を強調してる。最近大変な事ばかりだから寂しかったのかしら。
「何二人で馬鹿なやりとりしてるんですか。お嬢とクロエは早くさっきの通りに端に寄って!――レイアスが先鋒を!……タイミングは任せた」
「了解。一人目をやったら多分相手は一気に来るよ」
扉の横に張り付いて廊下の音を聞いていたレイアスが細身の剣を構える。
ジェイドも部屋の中央で剣を構えた。二人とも普通の騎士が使う剣よりも短くて細身の物を使うらしい。
怖いくらいの静寂の中。
私はクロエと抱きしめ合って、二人の姿を見ている。
――スッと扉が少しだけ開き、その数秒後思い切り開けて一人の男が部屋の中を確認しようと中に入ろうとした瞬間。
月明かりの細い光の中で、レイアスの剣が男の首元に煌めいた。
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