05 義妹の嫌がらせとジョンの夜遊び疑惑
【短編】『白い結婚!?それなら、私の戸籍をあげちゃいます!』の連載版です。大幅加筆しております。
よくあるゆるふわ設定です。
ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。
母が亡くなってニ年が過ぎ。私は、十四歳になった。
ジョンは驚く程に飲み込みが早く、侍従としての仕事はすぐに覚えてしまった。
私の許可を取り、外に出掛ける事が多くなった。
夜中に居ないこともあるらしい。
逆に、ジェーンは私専属のメイドになり私から離れなくなった。
母とジェーンと私の三人で、よくお茶やお話をしていたからか、彼女にも感じるものがあるのかもしれない。
どうしてもジェーンに甘えてしまう。
私もジェーンに抱きつくのが癖になってしまった。
「お嬢様、今日は何のお茶を淹れましょうか?お勉強で分からないところは一緒に解いてみましょう」
「ふふふ。ジェーンは本当のお姉様みたい!大好き」
ジェーンの胸に顔を埋める。
あーあ、最近ジョンを見ていないわね。
夜遊びでも覚えたんじゃないでしょうね、全く。
そして母が亡くなり、ニ年と半年が過ぎた頃。
――父が新しい母と新しい妹を連れてきた。
「今日から、新しく伯爵夫人になるアメリアと義妹のシンシアだ。よく言う事を聞いて従うように」
はは!今が頃合いだと思ったのね。血も涙もないクソ野郎。喪が明けたら愛人とその子供を連れてくるなんて。
なんてありがちなクズなんでしょう!
「よろしくお願いします、イリーナです。お二人を歓迎致しますわ。何かあれば私が対応します。どうぞ快適にお過ごしください」
客人扱いして、上から目線で言ってやる。
義妹の方は気づかなかったらしいが、義母の神経を逆なでできたらしい。
「母親が病弱だったせいでまともに教育も受けられていないのね?目上の人間にそんな態度を取ったらどうなるのかちゃんと学びませんと、ねぇ旦那様?」
――その日から、私は自分の部屋を追い出された。
「お嬢!」
「あら、久し振りに顔を出したわねジョン」
「なんであなたがこんな部屋に!それに何ですか、この食事は!パンとスープだけ!?」
久し振りだ。久し振りに私を心配してくれる人に囲まれている。
これは、今のこの気持ちが幸せなんじゃないだろうか。これでいいんじゃないだろうか。
最初から父は要らないし、義母も義妹も関係無い人間だ。
「ジョン!これからずっと粗食なのよ。何かお土産とか無いの?外に出て何してきてるのか知らないけど!私にお土産を買ってくる甲斐性くらい見せなさいよ?」
こんな事は気にしてない、と伝えたくて冗談めかして言ったのになぁ。
グッと拳を握りしめ、何を思っているんだか分からないジョン。
出会った時よりも成長した二人は、整った顔に更に磨きが掛かっている。
義母と義妹に目を付けられないか心配だ。
私が守らないと。
「冗談だってば、そんなに気にしないで。ジョンは何も気にしなくて平気よ」
「わかりました!お嬢を飢えさせたりなんて絶対にしません!とりあえず、屋台の焼き鳥でも買ってきますっ!!」
あっという間に部屋から出て行ったジョンに驚き、私はジェーンと目を合わせて笑い合ったのだ。
屋台の焼き鳥?初めて食べるかも。
ほら、まだまた楽しい事もいっぱいあるわ。
その夜、ジョンが買ってきてくれた焼き鳥で。
タレ味が美味しいか塩が美味しいかの論争が起きた。
――ふふふ。やっぱり、この二人と一緒の方が幸せじゃないの。お父様なんて家族とは思えない。義母も義妹も同様だ。
「私は、あなた達が居てくれればそれでいいわ。私の宝物だもの。こんなにキラキラした大切な物なんだもの、部屋もご飯も二人と一緒で楽しいわ」
――幸せとはなにか? 宝石じゃ、心が暖かくならない。贅沢しても、こんなに楽しく笑顔になれない。
そう。きっと私にとっての正解がここにある。
焼き鳥で、タレ味か塩味か、そんな下らないことを言っているこの時間が宝物なのだ。
「大好きなんだからね!二人とも!」
◇◇◇
十六歳になった。
ジョンとジェーンに出会い、彼らはもう十八歳を過ぎたという。
「ちょっとお姉様、このアクセサリー素敵じゃない!ズルいわ!私なんて今月はまだ買ってもらってないのに!こんなの何処にも出掛けないお姉様に必要ないじゃない?」
「そうね。出掛ける予定はないけど……。でも、あなたは毎日忙しそうね?」
「そうよ、私はお姉様と違ってデートばかりだから、衣装にも気を遣って大変なのよ。だから、これは借りていくわね!辛気臭いお姉様に付き合っている時間なんてないのよね」
そう言って、嵐のように来てその勢いで去っていったシンシア。
「はぁ、全くいつでも大騒ぎね。ジェーン大丈夫だった?シンシアが来た時は顔を上げちゃ駄目よ?」
ジェーンに目を付けられると面倒だ。あの子は嫉妬深く自尊心が高い。美しいジェーンに八つ当たりする可能性もある。
(全く、気に入らないならお互いに関わらなければいいだけなのに。相変わらず性格が悪いわね)
こうやって毎回私に絡んできて、何かしら嫌がらせしてくるのはどうにかならないものか。
しかし、さっきの宝石。あれは数少ない母の持ち物だったはずだ。
まぁ、着飾る予定の無い私には確かに贅沢だ。
(うーん、何かしらやり返してやらないと気が済まないわ。嫌がらせに、玄関前でも水浸しにして靴を濡らしてやろうかしら)
地味に嫌な気分でデートをする事だろう。
「お嬢様。大丈夫ですか?」
心配してくれるジェーン。うん、大丈夫なのよ本当に。
「それよりも!ジョン!出てきなさい」
そろり……と窓からジョンが入ってくる。
基本的に彼は私の部屋に一緒にいる所を他人に見せない。
さっきシンシアが部屋に入ってきたと同時に窓から消えた。寧ろそっちに意識が飛んでいたわ。
「貴方、最近何をしているの?怪しい所に出入りしているのを見たって話も聞くんだけど?」
腕を組んで、少し顎をあげて質問する。
どうよ。これは答えなくてはいけない雰囲気でしょう?
「本当の事を言わなかったら……」
ピッと首を切る仕草をする。
「義母にも気に入られて、よく誘われているんですって?本当に穢らわしいことしているなら……」
首を切った後に親指を地面に向ける。
そして、グリグリと踏みにじる真似をする。
「最低男とずっと蔑むわ」
「ええ、お嬢様。それが当然の反応です」
情報元は、御者のジャックだ。
彼は、義母に御者として色々と連れ回されたりもしているらしい。
「確か、カジノに出入りして美女を侍らしてモテモテなんですって?仮面の上からでもわかる美形で?そこらで色々と派手な事をしているらしいじゃない?」
「お兄様は目当ての女性と朝までお熱く過ごすと聞いてますが?口説かれた女性はもう虜ですって?」
穢らわしい……とジェーンが呟く。
「すみません、その蔑む目を止めてくださいよー!本当の事を言いますから!」
両手を上げて反省のポーズを取るジョン。
嘘くさい。何かを誤魔化す時はこうやって大袈裟になる。
「そろそろ……、本当の居場所に帰る時なのかしら?その為の準備をしているのは前から知っているわ。ジョンが軽薄な男性なんて信じていないから、本当の事を教えて欲しいの」
ジョンとジェーンの空気が変わった。
黙っていた方がよかったかしら。見ないふりをして、知らない振りを続けて、いつか黙っていつの間にか消えているあなた達を見送ってあげたほうがよかったかしら。
(踏み込みすぎた。失敗したわね。誰しも、近しい人にすら知られたくない事はある)
「えーっと、違う話になったわ。とりあえず……黙っているなら、有罪。不潔なジョンの処遇の話よ」
「お嬢!聞いてください!」
ジョンが私の肩を掴み、驚く程に真剣な顔を見せる。
「俺、情報ギルドで諜報員として働いているんです!」
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