31 彼は拘束中!?それから、私の戸籍をくれちゃいました!
よくあるゆるふわ設定です。
ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。
「ちょっと、どういう事よ!?起きたら婚約者が暗殺未遂で拘束されていましたーー!?」
意味がわからないわ!いやいやいや、こんなに困難の連続なんて望んでいない。
火事の時はありがとう!でもこれは別問題よ!
レイアスの襟首を掴み何度も揺さぶる。
「いや、あのね『容疑』で!ちょっと説明を……」
「だから!早くその説明をしなさいよ!」
レイアスが語ったのは――。
劇場の火災でベルンスト公爵家から人手を大量に投入して消火に充てた行為が市民と貴族に称賛された。
その為に王宮で褒賞を貰う予定だったという。
そこで、例のサロンに向かう側妃と遭遇して少し言葉の応酬があった。
その後、サロンで倒れた側妃には毒の可能性もあったので、関係者全員を王宮に留めて事情聴取をしている……。因みに側妃は無事らしい。
「え!?あまりにも理不尽じゃない!ジェイドは話しただけでサロンに参加していないんでしょう!?」
「そこは、側妃の思惑も絡んでいるみたいだし。第一王子の命令だと言って連れて行かれた。自分が疑われる立場だから万が一の為になのか――」
「身代わりに使おうって?」
「これは最悪の場合だけどね。最大の味方であるベルンストを失うのは彼にとっても痛手だ。だけど、自分に火の粉が降りかかるならジェイドを切ると思う」
最大の盾であり、身代わりになり得る人物を差し出して自分は安全圏に逃げる?
「ジェイドをなんだと思っているのよ……!」
「それに、本当に僕が危険視しているのはそこじゃないんだ。これが全て敵の罠で、ジェイドが本当に側妃暗殺未遂の濡れ衣を着せられたら……」
「最悪じゃない!!」
思わず叫んでしまう。いや、あのジェイドが側妃と対立しているのは誰もが知っている事実だろう。自分に疑いがかかってる中、ましてや王宮で実際に暗殺をする?そんな馬鹿な。
「そんな事をしたら反逆者よ。でも証拠なんて出るわけ無いんでしょう?ジェイドは犯人じゃないもの!」
「うん、犯人じゃない。だから普通なら直ぐに釈放されるよ。でも、仕組まれて罠に掛けられていたら?」
全部、罠だとしたら。証拠を捏造されたら?
手の出しようがない。
「でも、王家がそれじゃあ他の貴族に示しがつかないじゃない……」
「普通はそうなんだけれどねぇ。今は継承争い真っ最中だし。――側妃の件なのに第一王子が王宮に軟禁する命令を出したのが、まず不自然なんだ。罠の確率が高いかな」
確かに。王族に対しての暗殺未遂容疑なら国王から出すのが普通だ。ここに来て側妃だけではなく、国王まで関わっている可能性も出てきているの?
「反対勢力の第一王子が庇う可能性もあるのに、任せるはずがないわよね。レイアスだって気付く事なのにジェイドはホイホイとついて行ったって?」
――チラリと私とクロエの顔を見る。何故かバツが悪そうに目を泳がせている。
「近衛兵に囲まれていたし、命令だったから仕方なかったかも。それに万が一の時の為に既に手を打っているから」
「「手を打っている?」」
思わず、クロエと声が揃ってしまう。
「どういう事よ?ねぇ、ジェイドの馬鹿は何を考えているって?」
「まずはルフィーナ様は、実は貴族籍を抜けていない。王族が関わっている正式な書類も、その家の家系図も、神殿の記録も全て書き換え終わったよ」
――それは、ジェイドが王子に頼んで書き換えたと?
「貴族女性の戸籍はそんなに厳密に管理されていないんだよね。僕が神殿に忍び込んでちょーっと当時の記録を書き加えただけで楽だったんだけど」
(その神殿に忍び込むのが普通は出来ないんだわ)
まあ、実家の伯爵家で私が死んでも誰にも気付かれずに葬られたということよね。
爵位や遺産の相続権が無い女性なんてそんな扱いだ。
「一応、高位貴族の場合は王族が管理している物もあったりして。念には念を入れて王族にも頼んだみたい。どうせ復讐で借りを作るなら最大限に利用する〜とか言って」
叔父の摘発に協力してもらったとは聞いていた。
でもまさか、私の事まで――!
「それで、クロエの方は最悪の場合は母方のヴェンダース公爵家にお願いしているって。なんならそこで婚約でもしろって言ってた」
レイアスが気まずそうに目を逸らす。
「あのクソ兄ーー!妹に対しては適当だわ!」
「貴方のお兄様ってアレよね。ジェイドってそういう所あるわよね。それで?辺境伯家に養女になった私が今更、貴族だったとして何の意味が……」
――危険だから?辺境伯領に居たら危険だと判断したとしたら……。この先に何が起きるのか想像もしたくない。
「ジェイドが婚約破棄してもいいってね、書類も渡されて帰されてきちゃった。その場合、辺境伯家に縁組を解消される恐れもあるから」
まぁ、確かに。ベルンスト公からの『お願い』で養女にしてもらったような物だ。
その可能性もあるかもしれない。
「その場合は平民より貴族のほうが安心だって。あはははは……ジェイドが貴女に戸籍をあげちゃいました!」
「笑えないわ」
「ですよね~……。ネタばらしは自分でして欲しかったなぁ……。あはは……僕、可哀想」
「じゃあ、最悪の場合はベルンスト公爵家の断絶まであり得ると考えていたってこと?」
あ、つい睨んでしまった。レイアスは何も悪くない。
全てジェイドが勝手に決めてしまったのよ。
それよりも、彼は今どうしているのかしら。
「今すぐに、王宮に行って彼に会う方法はあるのかしら?」
「それは……かなり難しいかな。王族の許可も必要だし、ジェイドが囚われていること自体が秘密裏にされているかも」
あのお馬鹿は!何でそんな事になっているのよ。
王族に濡れ衣を着せられたらどうしょうもないじゃない。
これだから権力者は嫌いだ。王家に逆らって闇に葬られるなんて事も噂に聞く――。
目が覚めたら、一番に会いたかったのに。
お互いに助かってよかったって言い合いたかったのに――。
「いや、本当に僕も何とかしたい。王族なんて簡単に手が出せないんだよ。だから第一王子に接触したいけれど……。もし、第一王子が見捨てる判断をしたら――」
レイアスが首を手で切る仕草をして言った。
「最悪の場合は、責任は全部ジェイドが背負ってコレなだけ」
「そんな!事もやりそうですね、あの陰険王子なら……」
クロエも深刻そうに呟く。
「ならせめて、私が目覚めて助かったことだけでも伝えられないかしら……。それで――」
彼を助けられる――?……無理だ。向こうが本気でジェイドを消すつもりなら太刀打ち出来ない。
周りが彼に罪を着せてきたら私は助けられるかしら――?……私には何も出来ない。一緒に仲良く捕まってしまうだけ。
どうしたらいい?
一度会っただけの第二王子を頼る?
そんな事が出来る訳がない。そもそもが信頼出来るとは限らない。
いつ会えるかもわからない。
助けてくれる程の関係性も築いていない。
大体、あの火事は側妃のせいだったの?
ただの偶然?ジェイドは、支配人に違法薬について聞きに行っていた。劇場内には居なかったのだ。
私が薬を使われそうだったのも偶然?
全部が疑わしすぎる。
きっとジェイドも感じている筈だ。
「結局、側妃の狙いは何だったのかしら。ジェイド?私?両方?」
全てがわからない。
誰の行動も理解出来ないし、予想もつかない。
「じゃあレイアス。あんたとジェイドを助けてくれたギルドは?私たち三人を随分と助けてくれたわよね。――何か理由があるんじゃないの?」
クロエがレイアスに問いただす。
そうだ。詳しくは考えた事がなかったジェイドの経歴。普通の少年がギルドで諜報員なんて出来るはずがない。
「うん。実はジェイドにも拘束される前に頼まれたんだ。だから連絡役には既に接触してみた。ただ、『彼』がどう動くのかは僕にはわからない」
そうなのね。簡単に会える相手じゃないのか。なんだか怖い人なのかしら。いや、ギルド長なんて怖いに決まってるわね……。
「でもね、ジェイドとクロエだけは『彼』には特別みたいだよ?」
ピッと指で挟んだカードを私達に見えるように翳す。
何かの絵が描いてあるけれど――鳥?
「昨日の今日で、直ぐに連絡が来た。これから会いに行こう」
助けてくれるかどうかもわからない相手だ。
でも行動しなければ始まらない。
このまま最悪の展開を迎えるなんてごめんだわ!
「皆で囚われのお姫様を助けましょう!」
私達三人はそれぞれ頷き合った。
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