30 ジェイド視点〜 逃走そして、第一王子と会話
この辺りも知識が浅くて、あーー!って感じなのでサラッと流して下さると嬉しいです。
よくあるゆるふわ設定です。
通された部屋は思った以上に豪華で、とても拘束される人間に宛てがわれる所ではなかった。
既にその部屋に居た人物にお礼を言う。
「アレクセイ殿下。さっきは助かりました」
通された部屋には、既に第一王子アレクセイが座って待っていた。
黒髪に深い紺碧の瞳。現王と同じ髪色と瞳の色だが、顔付きは王妃に似て中性的でその美貌は有名だ。
「間に合って良かったよ。まさか自分で脱出してくるとは思わなかったけどね。こちらの強力な手札を、後少しで失う所だった」
確かに、あそこまで直接的な手を使ってくるとは想像していなかった。追い詰められた奴らは本当に何をするか分からない。
「今回は暗殺未遂で離宮の地下牢に入れられたわけですが……。詳しい話を聞かせてもらえますか?」
「お前に会った後に、側妃のサロンが開かれたんだが。そこで何かトラブルがあったらしい。馬鹿馬鹿しいが毒物を盛られたと言う話だ」
宮廷の側妃のサロン――。
ルフィーナが参加すると言っていたあれだ。
「廊下で偶然出くわしただけですが。何故俺が?」
「さあね。証拠なんてどうでも良いんだろう。毒の可能性があるという事で関係者に事情聴取をしている」
「反対勢力が怪しいから、俺が地下牢へ?他の容疑者への扱いは?『詳しく話を聞きたい』と近衛兵に連れて行かれたんですけれど?」
アレクセイは両腕を上げた。
――こっちがお手上げだよ。
「のんびりお茶でもしているんじゃないか?大体が『毒かもしれない』なんて曖昧な容疑で多数の高位貴族を留めて置けるはずがない」
「お前達の王宮の廊下での会話は目撃者も多いからな。とはいえ、誰もベルンスト公が手を下したとは思っていないだろう。お前は直ぐに容疑者から外されるだろうが……」
「その前に、秘密裏に消すか例の違法薬でも使って廃人にしようとしたってところですか」
追い詰められているとしても強引過ぎる。
あの女は、王家の権威を失墜させる気だろうか。
「だが、こんな手は何度も使えるものじゃない。幾らあの女の味方が強力でもね。今回は彼奴等が焦った結果だ。抗議を入れたい所だが――」
お互いに証拠が無い。
今回の件は痛み分けに終わるだろう。
――しかし、大逆罪に問われる所だった。
「それで、側妃は死んだんですか?」
「自作自演の可能性が高いのに、死ぬ訳ないだろう?命に別状は無く、回復に向かっているとさ」
それはそうだろう。邪魔な存在を始末する為の罠だったのだから。
やはり碌でもない女だ。そしてまんまとしてやられた俺も相当な阿呆だが。
「その通りですね。あちらに捕まっていたらどうなっていた事か。それは感謝します。証拠なんて後で幾らでも好きに出来るでしょう。王族の方々ならば」
俺の嫌味に溜息をつき、アレクセイが椅子に背中を預けて姿勢を崩す。
「こんな状況で下手を打ちたくないんだよ。お前がそんな状態だと心配で仕方ない。セイムズ嬢が目覚めたら直ぐに教えてやるから」
その名前を聞いて胸が痛む。本当はずっと側に付いていたかったのに。
どうするべきか。
王宮に居るべきか?いや――公爵邸が心配だ。敵陣で身動きが取れないなんて、やはり最悪すぎる。
「嫌です。ルフィーナから離れたくありません」
「はぁ……。じゃあ命令な。ベルンスト公爵を拘束。王宮から出さないように」
「――何故ですか?」
部屋の中に近衛兵が入ってきて、俺の周りを囲む。
これは抵抗も出来なそうだ。
「お前が役に立ってくれそうだからだよ、ジェイド。お前の味方に少し危機感を持ってもらい、協力関係を結びたい」
俺が両手を上げて降参の仕草をすると、アレクセイは手を降って全員を部屋から追い出した。
「『彼』の事ですか?あの人は王家の事に関わるつもりは無いでしょうね。特に今の国王とは因縁があるから無理じゃないでしょうか」
「意外と知っているようで知らないんだな、お前。因縁が深いのはそれだけじゃない。側妃に対しても言えるんだよ」
「側妃と因縁?逃げ出したくなる単語ですね。どっちにしても、俺も『彼』には助けられましたが、強制なんて出来ませんよ」
そして、一番心配なのはルフィーナの事だった。
俺に対してなら、クロエとルフィーナは弱点になり得ると知られている筈だ。
「アレクセイ。彼女に何かあれば恨みますよ」
「今更だな。もうお前は私を恨んでいるじゃないか?」
その軽い口調に何度苛つかされたことか。
本気で相手をしていてはこちらが疲れるだけだと思い直した。
「勿論、同時に彼女達の安全の為にこちらも兵を出すし、その『彼』も動いてくれるんじゃないのか?」
「だとしても。側にいないと不安です」
目覚めた彼女に謝罪したかった。
巻き込んでごめんと伝えたかったのに。
まさかの、投獄からの監禁だとは想像もしていなかった。
「しかしお前、随分と変わっちゃったね。そうやってすぐに顔に出るから弱みを悟られるんだろう」
彼が言っていることは正しい。
正しいが巻き込まれているのはこちらだ。しかも散々利用されている。
「離宮から逃げる途中で『黒い狼』が動いているのを見かけました。いつまでダラダラとこの状況に甘んじているんですか」
代々の国王に忠実な番犬、第四近衛部隊『黒い狼』。
彼が決断さえすれば――主人になり得るというのに。
「まずは『彼』と会ってからだな。お前に話しても意味がない」
俺を利用するつもりなのに、説明する意味がない?
本当に人を駒扱いしてくれる奴だ。
「じゃあ、これだけは教えてください。『彼』に会ってどうするんですか?」
今後の俺にも関わる話なのに全く意に介してくれない主に仕えるのか――。溜息しか出てこない。
「一緒に盤上をひっくり返して遊ぼうと誘うんだよ。私一人じゃ出来ないことが多すぎるし、まだまだ違法な物の流通を止められない」
「それは、長い時間が掛かりますね。摘発しても直ぐには途絶えないのが厄介です」
貴族も直接的に商会や貿易を行う時代になりつつある。
国が定めた品目だけは別だが、何をどれだけやり取りしても報告義務は無い。
ただ、交易の為に使う街道や航路に税を課すくらいだ。
頻繁にやり取りしている、程度の把握だけでは不可能に近い。
「ああ。でも、今回はその最低限はやってやろうかなと思ってね。きっちりと頭だけは潰す。その為には確たる情報が必要だろう?元はその為の活動だった筈だ」
「それで俺を利用して『彼』と交渉しようと?アレクセイ。昔からお前はそんな奴だったよな」
「それこそ今更じゃないか」
「俺にはそれしか価値がないと言われていますね。どうでもいいですけれど――」
きっと心配をかけてしまっている。レイアスを公爵邸へ帰したが、何時までもここに居るわけにはいかない。
「なら、影武者でも立てて外に出してください。勝手に逃げられるよりはマシでしょう?」
「私はそれでもいいんだけどね。『彼』が来てくれなくては困るじゃないか」
「クソ野郎」
どっちにしろ拘束されるなら言ってやらねば気がすまなかった。
――少しも気が晴れなかったが。
「レクシビル邸を見張らせている密偵から報告が上がっている。どれも第二王子派だろう。まずは彼らに……一番気が弱くて保身に走る奴に口を割らせるつもりだ」
「ただの尻尾切りで終わりそうですが。――だから『彼』に?あの人なら、そのままそっくり他人に罪を着せられそうだ」
「お前だって同じだっただろう?濡れ衣を着せられて牢獄行きだったじゃないか。ただ、お前が自力で逃げただけだ。それならやり返されても文句は無いだろう?」
追い詰められていたとしても、先に一線を越えてきたのはあちらだ。確かに名分が立つ。
そしてやはり、アレクセイは権力者の考え方しか出来ない。
「その考え方だと『彼』は説得できないでしょうね。あの人の行動原理が理解できていない」
あの人は権力というものに振り回されて生きてきたのだから。罪の偽造や濡れ衣等は嫌っている。
潔癖な考え方をする人だ。
「お前なら理解していると?説得出来ると言うのか」
「ええ、貴方よりは。『彼』が何故俺を助けてくれ、見返りを求めずにここまで色々な技術を身に着けさせたのか。それを考えたら分かるでしょう」
――彼は利益なんて求めていなく。復讐も望んでいない。かつての恩義と罪悪感から動くのだ。
「面白いね。じゃあ、やっぱり任せてみようかな。今回の狙いは、この国の太陽と第二の月だよ。どっちも一気に落としたい、が。太陽は後回しでいいや」
(簡単に物凄く難しい事を言うな、この王子は)
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