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白い結婚!?それなら、私の戸籍をあげちゃいます!〜え?拾った彼は公爵様でした!?  作者: しぃ太郎
第一部 お嬢様と双子と、白い結婚

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04 お母様と私

【短編】『白い結婚!?それなら、私の戸籍をあげちゃいます!』の連載版です。大幅加筆しております。


 よくあるゆるふわ設定です。

 ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。


「お母様、今日ね、街に出たら綺麗な本当に綺麗な子供たちを拾ってきたの。一人は怪我をしてて、まだ目が覚めないんだけど、もう一人の子は綺麗な翠色の瞳なの」

 

 今日も庭から摘んで持ってきた花を飾りながらお話する。

 

「そうなの。イリーナはいつも行動力がありすぎるから、無理やりで驚かせちゃったんじゃない?」

「でも、こっちも目の前で血だらけで倒れられたら驚くじゃない?責任、とか感じちゃうじゃない。確かに無理やり連れてきちゃったけど……。うぅぅ。」

 

 そこで、ふふふ、と母が笑った。

 

「私はイリーナが大好きよ。無茶で強引で、でも根底では人への好意を忘れない。本当に優しい子だわ。こんなに良い子に育ったのね……。えらいえらい」

 

 だって、お母様の娘だもの。

 優しいお母様の姿を見て育ったのだもの。

 こうやって優しく笑ってくれる、お母様の自慢の娘になりたいんだもの。当然だ。

 

「今度、お母様に紹介するわね!とーってもかわいい双子なの!」

 

「ええ。私も今のイリーナの色々な事を知りたいわ。あなたが大きくなっても、色々お話してね?」

 

 ――本当は、少し前に聞いてしまったの。

 お医者様とお母様がお話しているのを。

 

 こんなに私を大切に思っていてくれるお母様が居なくなるなんて耐えられない。

 

「勿論、何でもお話するわ。楽しい事も嬉しい事も怒った事も全部ね」


 ――ねぇ、神様?何を引き換えたらお母様を連れて行かないでくれますか。宝石なら全部あげます。ドレスもいりません。私が持っているものなら何でも差し上げます。


 ――本当に何でも渡します。だから私からお母様を奪わないでください。


 私は毎日祈り続け、その間にジョンは立ち上がれる様になり、ジェーンは私にだいぶ懐いた。


「あら、あなたがイリーナが助けた小さな紳士なのね?」


 ある日、ジョンをお母様に紹介した。

 和やかに過ぎる時間。

 彼は少し気まずそうにしていたけれど、お母様は嬉しそうに歓迎してくれた。

 

 お母様に私の毎日の話をしたり、ジョンが最近は侍従の見習いになったことを話した。


「ちょっと待ってね、ジョン。いつもイリーナがお世話になっているから、私からちょっとしたお礼をあげたいの」

 

 お母様はそう言って、便箋に手紙を書き出した。

 それはとても珍しく封蝋まで押された手紙だった。

 

「中身は一人で読んでね?」


 ジョンは少し戸惑った表情をして、探るような目でお母様を見ていた。


 私は蚊帳の外だ。けれど、きっといつものお母様の優しさなんだろう。お母様は本当に強くて優しいのだ。


 それからの日々も私は、何気ない話をしてお母様と過ごした。


 無邪気で気付かない振りをして。

 お母様に心配をかけないように。

 

 でも、いつも夜に寝る時が一番怖かった。次の日には……そんな想像が頭を()ぎるのが怖くて。


 そんな時はジェーンに手を繋いでもらって、一緒に寝た。

 彼女も夜が怖いようで、偶に魘されて啜り泣いていた。

「お嬢様、一緒に居てくれてありがとうございます」

「私もジェーンが居るから大丈夫なの。ありがとう」

 

 だから、夜が怖くて泣き虫同士でギュッと抱き合って眠るのだ。




 そして。

 ジョンとジェーンがうちに来てから半年後。

 後一月ほどで私が十二歳になる、まだ少し寒さが残る春先に。

 

 母が亡くなった。



 ◇◇◇


「お嬢様、そろそろ出棺のお時間です」

 ずっと棺から離れない私を執事が引き離す。


 ――なんで!なんで私から大切な物を奪っていくの!?


 久し振りに見たお父様の顔。

 なんだ、その顔は!何も感じていないような、無感情な表情は!

 お母様は毎日病気で苦しんで生き抜いたのに!

 何故何も感じていないの!?


 仕方がない。仕方がないんだ。わかっているけど。

 葬儀の後でも、父は愛人のもとに行くんでしょう?

 もう、私を大切に思ってくれる人も居ないんでしょう?


 母の愛は、私だけの宝物だ。

 そう、それさえあれば良かったのに。


 降り出した雨に濡れながら、使用人に戻るように何度も言われながら。

 父に面倒な物を見るような目で見られながら。


「もう少ししたら戻りますから。まだ少しここに居たいの。もう皆戻っていいわよ」


 周りの人たち全てを拒絶して一人でここに残った。

 私は雨の中、目を瞑り空を仰いでいた。

 こうすれば雨が涙を流してくれる。


 ――スッと傘が差し出された。

 ジェーンだ。ジェーンが心配そうに、作り物じゃない、偽物じゃない、本当に私を気遣った顔で傘を差し出していた。


「お嬢様、風邪をひきますよ。戻りましょう?」

 ジョンも私に手を差し伸べる。


 でも、知ってる。

 あなた達は確かに優しくて、私に感謝してくれているかもしれない。

 でも、私は。

 あなた達の一時的な止まり木でしかないんでしょう?

 ジョン達が訳ありで、ここから居なくなる準備を進めているのも知っている。


 お母様が渡した手紙は、ここから飛び立つ彼らの役に立つ物だと言う事も。


「そうね。三人ともびしょ濡れだわ!早くジェーンと一緒にお風呂に入らなきゃ!風邪ひいたら、ベッドで苦しんで、楽しい事が出来なくなるわ」


 大丈夫、大丈夫よ。

 お母様、私は大丈夫です。安心してください。


「みんなで美味しいご飯も食べましょう」

 

いつも、読んで下さる方、ブクマしてくださる方、評価してくださる方、リアクションしてくださる全ての方に支えられています。

ありがとうございます!本当に励みになっています。

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