20 デートに誘ってみる
よくあるゆるふわ設定です。
ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。
またまた高貴な方からの招待状。
もうお腹いっぱいなの。
側妃オーガスタ様から、招待されてしまった宮廷サロン――。
「行きたくない……!クロエーー!!どうしよう!ドレス!ドレスコードは!?手土産!何を用意すれば!?」
最新の話題が囁かれ、流行のファッション界の最先端のデザイナーや、その他芸術家や音楽家が呼ばれる、一種のステータスになっている、そのサロン。
朝からクロエに相談したり、エマやメアリーと相談したりバタバタと慌ただしく過ごした。
本来は一週間以上前には連絡が来るはずなのに、私には五日前。
最初から私に対する扱いがわかりやすい。
やはり隣国の王女だったからか、華やかな場所が良く似合い、立ち振る舞いもそれに見合って――。
「物凄く高慢らしいのよ!これは、きっと『あなた調子に乗りすぎよ』って扇で叩かれる場面だわ!集団で囲まれて虐められるのよ!」
小説あるあるだ。クロエと一緒によく読んだ小説にあったやつだわ。
「そうですね、お嬢様!きっと『身の程を知りなさい、小娘が!』とかですね。ドレスコードを間違えて伝え、きっと不味いお茶を出され、無理やり飲まされたりするはずです!」
そして私の想像を超え、更に追加してくるクロエ。
「一人だけ会話の内容がわからないお嬢様を皆で笑う場面です!ああ、可哀想に、泣きながらその場を去ろうとするけれど、足を掛けられたお嬢様は地面に転び……!」
おお……。そこまで虐められるのか。
やってられないわ。
「大丈夫ですよ、お嬢様。……上手く懲らしめてくれると信じてます!また『ざまぁ』です!」
え、期待感が凄い。無理な要求をされている気がするわ。
クロエごめんなさい。元実家クラスなら強気で行けるかもしれないけれど、宮廷は流石にきついわ……。
「うん、『ざまぁ』ね……うん」
それって小説では色々なパターンがあるわよね……。
『逆』ざまぁ。されちゃうんじゃないの、私。
(はぁ。いいかぁ。もう面倒。どうせ虐めらるなら思いっ切り慰められてやるわ)
ジェイドに可憐に泣いて抱きついてやるわ。
前はそんなの似合わないと馬鹿にされたけれど。
最近、ジェイドが甘いのよ。くぅぅ、あの顔で!
甘やかしてくれるのよ。
狙ってる気はする。奴はあざといのだ。
彼は私の好みを知っている。
しかも、やっぱりかわいいのよ。押しには弱いところがちょっとかわいいのよ。
前にクロエに話したら引かれたから言わないけれど。
私の頭はどうしてしまったのか。
彼の事ばかり考えて浮かれている気がしてむず痒くなるわ。
(あーーー!!やっぱり、ご褒美があれば頑張れるかも。タダ働きよりよっぽどいいわ)
「クロエ、あなたのお兄様をちょっと籠絡してくるわ!」
「まぁ!ついに!?」
口に手を当てて頬を赤らめるクロエ。
いや、あなたの想像まででは無いと断言出来るわ……。
偶然だけれど、数日前にあなたがくれた物があるじゃない。彼と一緒に過ごす為に用意してくれた、特等席の演劇が!
しかも公爵家には専用のボックス席があるらしい。
小説ではよく、男女の密会シーンに使うやつだ!
――本当にあるのか!ちょっと感動してしまった。
でもでもでも、無い無い無い無い。
今更二人きりなんて珍しくも無い私達が――。
◇◇◇
「ジェイド、ちょっといい?」
観劇を一緒に観るって、公開デートを誘う私の気恥ずかしさ。
それを我慢して彼の執務室の扉をノックする。
「どうしたの?ルフィーナ、ここに皺が寄ってるけど?」
自ら扉を開けて迎えてくれたけれど、私の眉間をグリグリと押す。
(甘い……。笑顔が、最近は甘い……!)
素知らぬ顔で対応しなきゃ、流される。
「私、最近頑張ってるわよね?ご褒美を要求するわ」
「うん?何でも言ってよ、お嬢様。何でも叶えるけれど?」
「ねぇ、最近のジェイドは変よ!いつもなら『いきなり理不尽なお嬢ーー!』とか言っていたと思うわ」
まぁ、彼らが訳ありだと知っていたから、昔からある程度は外面を作っていたとは思っていたけれど。
「そっちの方がいい?俺はどっちでもいいけど。ルフィーナは、今は甘やかされたいんだよね?」
首を傾げて、そう言って微笑む彼。
――くそぅ。言い返せないわ!
「ん!どっちも有りだけど!……これ!一緒に行きましょう?一度観てみたかったの。あなたと劇場で」
彼の目の前に突き出した、話題のロマンス劇のチケット。要はクロエから貰ったアレだけれど。
――側妃のサロンで貴婦人たちの前に立つ前に、話題を作りたいのもある。
でも、彼と彼女が作った『私たちのロマンス』を観てみたかったのだ。
『彼から見た私』を観てみたかった。好奇心もあり、恥ずかしさもあり、不安もあるけれど。
「……明日一緒に行ってくれる?」
「デートの誘いを断る理由ないでしょう?お嬢様」
(だから甘いんだって。私が嫌になって逃げ出したらどうするのかしら)
王族やら、権力やら、恋のライバルやら。
大切な双子たちとの小さな幸せを望んでいた私には荷が重すぎる。
でも、泣いて逃げ出すには大切になり過ぎて。
身分なんて、父親だって簡単に捨ててきた私なのに、ここで頑張ると――簡単には手放さないと決めてしまったのだ。
「責任取ってよね。側妃様にも目をつけられちゃったわ」
「それは放っておけないね。今度のサロンの事でしょう?勿論一緒に行くよ。でも、まずはこっちのデートからね?」
私からチケットを受け取り、頬にキスをしてくる。
その仕草が恥ずかしい。
顔が赤くなるのがわかる。下を向きたいのを必死に堪えて睨みつける。
ジェイドの癖にーー!
気障で!生意気!格好良すぎで生意気よ!
でも、彼が一緒に来てくれると聞いて安心してしまう、自分の弱さが残念過ぎる。
――これって、クロエがよくいう小説の『チョロイン』ってやつでしょう!?
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