19 クロエから舞台のチケットを貰う
よくあるゆるふわ設定です。
ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。
朝、朝食後にクロエが私の部屋にやってきてモジモジしている。
うん、かわいい。
いつもとのギャップが可愛らしい。
「どうしたのクロエ?また小説のシチュエーションあるあるの遊びする?私、今から告白される素敵でスーパーな男性役?それとも、俺様でいこうか?」
スーパーな男性は、甘くて台詞回しも気が利いている。頑張らねば。
「もう!違います!……実は、前に私が脚本を書いた劇なんですけれど、有名な人気俳優が!ヒーロー役を演じてくれました!ほら、ほら、この人です」
クロエは早口で捲し立て、舞台の広告に描いてある男性を指差す。
「あーー……。それがジェイド役の人?」
「そうなんです!正直、兄なんかに萌えや憧れなんて持てませんでした。あの劇はお嬢様を愛でる楽しみだったんです!」
――まぁ、双子で禁断の中にいかれちゃったら私はどうしたらいいか分からないので有り難いけれど。
「でも!」
拳を握り、震えながら下を向いたクロエ。
「今話題の俳優が演じるとなれば別です!」
「うん、わかるわかる。憧れの人に台詞を言ってもらえるもんね……」
まだ気恥ずかしさもあり、話題の演劇を詳しく知らない私は言葉を濁した。
やたら金髪碧眼の美少女として演出されているらしく……。身内の自作小説とかポエムとか、気恥ずかしさに駆られるでしょう!?
「私は関係者なので、リハーサルも初日もばっちり観に行ってきました。最高の出来です!」
だからクロエが最近遊んでくれなかったのね。
小説に関してはクロエの方が造詣が深い。
私は彼女のお勧めを読むくらいかしら?
でも、クロエ……!夢が叶ったのね。
親友の成功をしみじみ感じてほっこりしていると――。
「チケットを親類や友人たちに配りたいので沢山貰ってきました!お嬢様も是非是非ジェイドと来てください!」
顔の前で指を組み、上目遣いでお願いされる。
チケットも手放さず、自分の顔もチケットも両方見える位置に指で挟んでいる。
――あざとい。クロエも大概あざとい。
「いやいやいや!ジェイドと私が行ったら目立つじゃない!クロエが散々私達をモチーフに書いたって公言しているんだから!」
「何言ってるんですか、お嬢様。目立つために、宣伝の為に行ってくださいってお願いしているんですよ。だって、今後も素敵な俳優が演じてくれるチャンスなんですよ?」
――くっ!
背に腹は代えられない。かわいいクロエの為だ。
珍獣になったつもりで見世物になるしかないか……。
「うん、ジェイドを誘ってみる……」
「あ!勿論ジェイドには当日は『気障ったらしいけれど、つよつよ俺様。でも実はベタ惚れ』の演技もお願いしておくので大丈夫です!」
(ジェイドも大概に大変ね……)
私は演技指導が入らないだけマシかもしれない。
でも、外で公の場でデートは初めてかもしれないわ。
私から誘っちゃう?
話題の私達のロマンスを一緒に観たいって?
無理の無理の無理ーー!!
「クロエ……。少し自分の葛藤と向き合ってくるわ。今日はもうちょっと部屋で過ごしてくる……」
そこで冷静になったのか。
クロエが心配げにオロオロして私の額を触って熱を計ったり、薬を用意するようにエマに命じている。
「お嬢様!もう、体調が悪かったんですか?無理しては駄目ですよ。このチケットは全部、私クロエが配ってきますからご安心を。早く治してくださいね!」
――うん。残念、冷静じゃなかった。
「……ありがとう。親戚でも、ご友人でも王族とか高位貴族の方々は止めてね……」
「何言ってるんですか、もう誘ったに決まっているでしょう。なにせこの人気俳優が!演じてくれるんですよ!?」
彼女の情熱は止められない……。
王族が観るの?え、高位貴族の方々に見られるの?
どんなストーリーなの?
大丈夫?――私、堂々と街を歩けるかしら。
「いつもありがとうクロエ。貴方が頑張って作ってくれたお話だもの。凄く楽しみよ」
応援している。だってクロエの為だ。
こんなに嬉しそうにキラキラした笑顔のクロエの為だ。
当日は、ジェイドの陰に隠れよう。
ジェイドを盾にすれば大丈夫。
ロマンス劇はやはりヒーローだ。
うん、人気俳優には興味がある。舞台終わりにお礼の花束を渡して、ご尊顔を……。
色々と想像して廊下を歩いている途中、侍従を引き連れて、文官と何やら話しながら足早に執務室に向かっているジェイドを見かけた。
「ルフィーナ!」
甘い瞳で、満面の笑顔で笑うジェイド。
後ろの部下を手で追い払い、少し足早に私に向かって来る。
(クロエ……。貴方のお兄様はその人気俳優より眩しいわ……!)
ポケットに隠した二枚のチケット。
これをどうやって渡そうか、ぐるぐると考えながら。
でも、その笑顔が可愛すぎるから、私は無言で飛びついた。
突然の接触には弱いジェイド。
私のトキメキ分くらいは、その余裕を崩さないと割に合わないわ!
止めに彼の胸で頭をグリグリとしてやる。
はぁ。やっぱりこの双子が居るだけで幸せを感じるわぁ〜。好き。
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