SS クロエのシナリオ〜お嬢様は妖精
第一部のエピローグで出てきたクロエのシナリオです。
少し童話風にしてあるので、これで人気が出たのはきっとお金の力だと思って下さると助かります……。
――ある所に、両親を殺され復讐を誓う少年がいました。
少年は、森の中で美しい妖精に出会い、助けられます。
妖精にも事情がありました。
――お前はたった一つでも、『誰かの為に願う』事が出来たら妖精の国に帰ってきてもいい。
妖精には『願い』を叶える力がありますが、好き勝手して悪戯ばかりを繰り返すので、彼女は妖精の国から追い出されてしまったのです。
追い出されてしまった妖精ですが人間界が珍しく、やはり悪戯三昧で過ごしていました。
そんなある日、森で小さな男の子を拾いました。
これが二人の出会いです。
二人で過ごすうちに、復讐を誓った少年は孤独を癒していきました。
妖精は、少年の力強い瞳に憧れていきました。
彼の瞳は妖精にはない生命力で溢れていました。
ある時に、妖精は『願い』を叶える力がある事を教えます。
少年は心の中で喜びました。
この妖精を使えば叔父に復讐が出来ると。
少年は、それからは妖精に対して優しく優しく接していきました。
彼の優しさが嬉しい妖精は、彼の為に住む場所も食事も用意しました。
贅沢では無いけれど雨に濡れず、飢えもせず、孤独でもありません。
妖精と少年は、お互いに小さな幸せを感じました。
一緒に過ごすうちに、少年は妖精の純粋さと愛らしさに心が癒やされました。
妖精は、少年と暮らすうちに様々な『愛』を知りました。
少年が家族への『愛』から『復讐』を誓い、生きている事を知りました。
――『復讐』。彼がそこまでに求める、それは何?
妖精には理解が出来ない感情でした。
ある日、少年は憎い叔父の話を聞きました。
彼の幸せを奪って、叔父は権力を得て贅沢三昧に生きていたのです。
少年は怒りましたが、無力な彼に出来る事はありません。
彼は妖精が話した、『願い』を叶える力の事を思い出しました。
それを利用する為に一緒に居たのに、何故か忘れてしまっていたのです。
少年は妖精に『願い』を叶えてほしいと懇願します。
妖精は、彼から叔父の話を聞き「願いが叶うなら復讐を」と言う少年の流した涙で『悲しみ』を知りました。
――人生で一番大切な『願い』がその復讐というものなの?
――ああ。その為に僕は生きている。
すぐに、迷いなく答える彼に興味を持った妖精は、彼の事を考えます。
今までずっと一緒に暮らしていた彼の幸せを『願い』たいと思いました。
初めて浮かんだ感情です。
『誰かの為に願い』を叶えると妖精の国に帰る彼女は、少年に聞きました。
――もう一度あなたの願いを強く願ってみて。今の私なら『願い』を叶える力が使える気がするの。
少年はすぐに答えました。
――ならば、復讐を!この心に安らぎを!私の愛しき者たちの無念をはらす事を願う!
妖精は頷きました。
――その『願い』を叶えます。あなたの心に安らぎがありますように。
そう言って、妖精は消えてしまいました。
◇◇◇
その後、妖精は少年の前から消えました。
これで『願い』が叶うのかと少年は疑問に思いました。
しかし、一人になってしまった少年は妖精が消えてから事が上手く運ぶようになりました。
同じ相手に復讐心を持った仲間に次々と出会い、運良く叔父を刺し殺すことが出来ました。
――願いが叶った!
ようやく彼の復讐は終わったのです。
しかし全て奪われた後の復讐です。
成し得ても、彼が手に入れた物はありませんでした。
――心が晴れると思っていたけれど何もない。
側にいてくれた妖精すら居なく、ただ孤独になった少年の心は空っぽでした。
――復讐は自分だけでも可能だったかもしれない。
自分の力で出来る事を妖精に願って、彼女はそれを叶え消えてしまった。
彼女は妖精の国に帰ってしまったのです。
――この手に何が残ったのか。
無為に日々を過ごす少年は大人になりました。
そしてある日、あの妖精とそっくりな女性を見つけたのです。
――私の願いを聞いて、君は消えた筈では?
――はい。貴方の心の中にある『本当の願い』を叶えたのです。そうしたら、何故か私は人間の姿になっていました。
彼は、口では復讐を願いました。
でも本当の『願い』は愛する人と一緒に居ることでした。
そう。彼の復讐は彼自身の力で成し得ていたのです。
本当の『願い』は目の前に。
人間になった彼女の形で現れました。
彼は本当の幸せを手に入れたのでした――。
◇◇◇
「出来たわ!私の渾身のシナリオよ!これを人気作家に加筆と演出をお願いして、お嬢様の可愛らしさをアピールするわよ!」
お嬢様は妖精だから、何とかなるでしょう!
あとは劇作家さんの実力で何とかしてもらいましょう、お金の力で。ええ、お金なら幾らでも出すわ!
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