18 彼の寝顔、彼女の寝顔
よくあるゆるふわ設定です。
ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。
ジェイドに慰められた後――。
「ジェイド寝ちゃった?」
いつの間にか、ソファで抱き合って凭れながら寝てしまったらしい。
(流石にベッドには運べないわね。どうしようかしら……)
――綺麗な顔。まつ毛が長くて、今は綺麗な翠の瞳は見えないけれど、鼻が高くて、顎はシャープになり男性らしい骨格になった。
いつの間にか男性になっていた。
ずっと一緒に居たのに、こんなにも変わってしまった彼。
ずっと、私に懐いてくれる彼に安心していた。
彼の気安い態度も、すぐに調子に乗る所も。
でも、それは彼の一面だけで全てでは無かったのね。
いつの間に、私をあんなに甘い瞳で見るようになっていたのか。
なんで、私が彼の全てになってしまったかのように感じる時があるのか。
――でも、きっと私も変わってしまった。
ジェイドの寝顔が愛しくて、起こしてキスしたくて――でも我慢する。
昨日、ヘレン嬢に言いたかった。
『私のジェイド』だって。
私の事を愛してくれる、私のジェイドだって思い知らせたかった。
ねぇ、初めて会った時は、なかなか心を開いてくれなかったよね。
怪我をしている彼に何度も何度もご飯を運んでいたら、少しずつ心を開いてくれたよね。
(――ふふふ。最初は猫みたいだったよね)
怪我が治り、何処かの時点で彼の態度はガラリと変わった。私に懐いた振りを始めたのだ。
私を、一時的な宿り木にするつもりだとわかった。
だから私も彼に優しくした。
(大丈夫だよ、ここは安心だよって伝えたかったのにね。警戒心が強かったよね)
彼は私の実家の伯爵邸でも、侍従の仕事を学び始めた。
追い出されないようにする為に。
――裏では、復讐の為に動いていたらしい。
本当にジェイドは強い。
羨ましいほどに。簡単に諦めてしまう私とは大違いだ。
「こんなに立派な公爵様になっちゃうなんてね。私の方が貴方に相応しくないじゃない」
目に掛かっている、柔らかな亜麻色の髪をかき分けてあげる。
「ジェイドの癖に、随分と生意気になりすぎなんだから。ずっと私だけのものだと思っていたのになぁ」
あのまま、辺境伯領の小さな家で三人で暮らしていても良かった。
実は、あの暮らしが幸せだったのよ。
ジェイドとクロエが居てくれたから。
(あ〜……。また眠くなってきちゃった……)
◇◇◇
「くっ――!」
彼女が寝息をたてたのを確認してから、胸を押さえる。
(可愛かっ……た……!)
耐えるのに必死だった。
特に髪に触れられた時から、もう厳しかった。
『ずっと私だけのものだと思っていたのになぁ』
それはこっちの台詞だ。
何、他の男に同情して悲しんでいるの?
すぐに弱いものに同情するお嬢様。
自分だって、小さくて弱くて守られてもいい存在なのにすぐに何かを守ろうとする世間知らずなお嬢様。
「だからいつも言ってるんじゃないか、浮気者だねって」
彼女の侍従役は楽しかった。
きっとクロエも楽しかった事だろう。
彼女は主人として俺達を守ってくれているつもりで。
それが可愛くてやめられなかった。
彼女は、侍従役の俺を気に入っていた。
馬鹿でお調子者で、軽口を叩いて、お嬢様にすぐに甘える、そんな俺に。
彼女がそれを好きなら幾らでもそんな姿を見せよう。
平民生活が長かったから、言葉や態度が少し砕けてしまう部分もあるしね。
しかし。
お調子者ですぐに甘える俺ならば。
ここは……。
途中で目が覚めてしまったとしても、いつもみたいに謝れば許してくれるだろう。
他の男の事で、一晩中彼女を慰め続けたんだ。
クロエじゃなくて、俺の所に来てくれたのが嬉しかったけれど、他の男の事で悲しみ続ける彼女を慰める――。
複雑な気分だ。
まぁ、可愛かったけれど。
(眠れない……)
でも、肩にかかる彼女の重さと温かさがとても幸せで。
――まぁ、いいか。可愛い婚約者が頼ってきてくれたんだから。
座ったままだと寝づらそうなので、ベッドに運ぶ。
流石に隣に横になるのは駄目だよな……。
その後、部屋に居ないお嬢様を探し回るクロエに見つかり散々叱られた。
――え?俺が悪いの?
何も手を出してない、ずっと我慢した俺が悪いの?
うちの妹は本当に厳しい……。
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