14 ヘレン嬢と対決。勝者はクロエ!
よくあるゆるふわ設定です。
ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。
そして、向かった高級ブティックで出会ってしまった。
――今問題のヘレン嬢。
「あら、クロエ様!お久しぶりです、ヘレンです!偶然ですね」
外でもマナーを守らない彼女に、クロエの眉間に皺が寄っている。
「お元気そうで良かったです。私、お二人の無事を毎日祈っていたんですよ」
そう言った彼女はうっとりとした顔で指を組み合わせる。
「ジェイド様もとても素敵になられてましたわ。昔から綺麗なお顔でしたけど、今は美しさに逞しさまで加わって男性らしくて魅力的ですわ。――もちろんクロエ様もとてもお美しいです」
「――ええ、ありがとう」
(取ってつけたようにクロエを褒めるなーー!クロエは可愛くて綺麗で!貴女の百倍は魅力的よ!)
「公爵邸に伺っても、毎回お忙しいみたいで中々会えませんでしたね?」
ひそり、とクロエが呟く。
『白々しい。どうせ、ここに来たのも使用人の誰かが伝えたんでしょう』
「お久しぶりね、ラスマン伯爵令嬢。あなたが公爵邸に来ていたなんて全く知らなくてごめんなさい。誰かが訪問カードを毎回無くしてしまっていたのね」
(チクリとした嫌み。いい感じね、クロエ!)
「ルフィーナお義姉様、こちらはヘレン・ラスマン伯爵令嬢です。私の昔馴染みです」
紹介されてヘレン嬢がお辞儀と自己紹介をする。上目遣いでチラリとこちらを伺う様子は確かに可愛らしいかもしれない。
「そして、こちらの方が私の兄、ジェイド・ベルンスト公爵のご婚約者のルフィーナ・セイムズ辺境伯令嬢ですわ」
私も紹介されたのでお辞儀を返す。
「宜しくお願いしますね、ラスマン伯爵令嬢。ジェイドからこんな可愛らしい幼馴染が居たなんて聞いた事もなかったから、会えて嬉しいわ」
「そうですか?お二人はあまり会話をなさってらっしゃらないのかしら。ジェイド様と私は昔から仲良く過ごしていたのです。彼とは婚約目前でしたの」
そして照れたように微笑み、コテンと小首をかしげる。
(毎日、会って会話してますけれど!?)
まあ、今は少し喧嘩みたいになっているけれど。
「公爵邸の使用人からはよくお似合いだと言われて。私なんかがジェイド様となんて烏滸がましいのですけれど……」
――よし、やり口は把握したわ。
自分の方がお似合いだと匂わせつつ、自分では謙遜する。
私が高圧的にやり込めたら、色々な方に囀るんでしょう?
「あら、小さい時は二人ともお可愛らしかったでしょうね。子供だった頃の二人の遊ぶ姿が目に浮かぶわ。私でもお似合いだと微笑ましく思うもの」
「え、えぇ。ありがとうございます。ルフィーナ様は彼を助けてくださったんでしょう?感謝してもしきれません。きっと彼も私と同じように思っている筈です」
――上から目線!ジェイドが自分のものみたいに話すのね。これがマウントね。
そこで一際大きな声で私に言った。
ブティック店内にいた客――主に貴族の方々がこちらに注目し始める。
「それに貧しい中で、匿うのは大変だったでしょう」
――私が、元平民だと当てこすってくる。そうよね、当然これが弱点だわ。
「今は辺境伯家のご令嬢よ。失礼じゃないかしら。それに勿論、私の事も助けてくれたのよ?さっきからお兄様の話ばかりするのね」
すかさずにクロエの援護射撃が入る。わかってくれる、さすがクロエ。
「ジェイドも勿論、私の大切な婚約者ですけれど、クロエとも姉妹のような関係なのよ。あまり彼の話ばかりだけすると――ねぇ?変な勘違いをしてしまいそう」
「そ、そんなつもりじゃ!お二人とも、私の無礼をお許し下さい。謝りますので、どうかお怒りにならないでください。私はただ……ジェイド様と特別に仲がいいと言っただけで。そんなに嫉妬なさらないで」
大袈裟に頭を下げて謝り、店中からの視線を集める彼女。
チラリとクロエが私を見る。
――ここが引き際らしい。
「まさか、怒るなんてあり得ませんわ。……私ってそんな風に見えてしまうの?こちらこそ謝らせてしまってごめんなさい。どうしましょう、可憐な女性を怖がらせてしまうなんて……」
心底困ったように眉を下げ、辺りを見回し助けを求めているように見せる。
自分の顔の使い方くらい理解してるわよ。
(一方的な被害者面なんてさせないわ。あなたには同じ様に振る舞ってあげる)
「ねぇ、クロエ。私が悪かったの?私がラスマン嬢に嫉妬する所があったかしら……。彼女は何故こんな勘違いを?私、使用人達と同じようにラスマン嬢を褒めたつもりだったのに……」
私は、わからないと首をかしげる。
「幼い子供の頃のお二人は微笑ましくてお似合いでしたでしょうねって。それとも今現在の事――?あぁ、でもきっと違うわね。まさか婚約者本人の前でそんな発言は品位がないもの」
クロエの腕を掴み、悲しげな声を出す。
よしよし、面白そうな顔を隠せていない貴族たちが聞き耳を立てているわ。
「もしかしたら、自分が彼と婚約していると勘違いしてらっしゃるのでは?ラスマン伯爵にもジェイドにも誤解を解いてもらったほうがいいと思いますわ」
そこで、少し間を置いて声を高くする。
――さっきの彼女の真似よ!
「ラスマン嬢がまさか不貞をするようなそんな方だとは全然思っていないから安心して下さい。でも未婚のご令嬢が、私の婚約者と仲がいいと伝えてくるなんて驚いてしまって……。婚約していると勘違いしてしまっていたんでしょう?」
ハンカチで目元を拭う振りをする。
「お義姉様に悪い点なんて無かったですよ。きっと何か思い違いなさったんでしょう?ね?」
クロエから答えを求められ、更には自分で集めた注目でさっきのやり取りを周囲に伝えられた彼女は……。
「す、すみませんでした……。私ってすぐに勘違いしてしまうみたいで。お会いできて嬉しかったです、失礼します……!」
そう言い残し逃げて行った。店から足早に去っていく。
――よし!やってやったわ!
そして、まだ店内の注目を浴びている今が追撃のチャンスだわ。
「でも、何度も公爵邸に来ているなんて知らなかったわ……。本当に訪問カードを私達に見せるのを忘れた使用人でもいるのかしら……」
「ええ、本当に。まさか、彼女が自分の邸宅みたいに公爵邸に気軽に来ていたなんて。お兄様も知らなかったみたいよ?だって執務室にも応接室にも彼女は通されていないもの」
そこで、手を口元に当てて驚くふりをする。
「あっ!きっと使用人の中に会いたい人でも居るんじゃないかしら?使用人に会いに来ているから、何度も公爵家に入れるんだわ!」
おぉーー!物凄い止めを刺したわね、クロエ。
少なからず使用人との噂が立つわ。
横恋慕疑惑に使用人の恋人疑惑。
貴族令嬢としては傷がついたわね。
(ジェイドより、クロエの方が頼りになるかも)
――やっぱり王族に会いに行くときはクロエに付いてきてもらう方がいい気がしてきた私だった。
「よーーーし!今度は甘い物よ!英気を養うために、いっぱい頼んでしまいましょう!」
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