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白い結婚!?それなら、私の戸籍をあげちゃいます!〜え?拾った彼は公爵様でした!?  作者: しぃ太郎
第二部 公爵家で頑張るお嬢様

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11 ジェイド視点〜 いつまでも格好悪いまま

よくあるゆるふわ設定です。

ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。



 ルフィーナの部屋から追い出されてしまった。

 クロエとレイアスから何を聞いたのか知らないが――。

 

 初恋というのなら。

 

 十三歳のあの日。追っ手から逃れて、汚い裏路地で力尽きて倒れた、あの瞬間。


 俺が見上げた先――空と一緒に視界に入ってきた小さな天使。

 

 ――その女の子以外にあり得ない。


「あらら失恋?公爵様も失恋を経験して、これからもっと――」


「黙れ」


 最近は彼女に頑張らせすぎていた。

 この屋敷の雰囲気も、きっと彼女には毒だったのだろう。

 

 更には、自分を追い出そうとする人間が何人も現れるなんて傷ついても当たり前だ。

 

 彼女は自分を『強いから大丈夫』だなんて簡単に言っているけれど、痛みに慣れすぎて自覚がないだけだ。


 何故、他の碌でもない人間に彼女が貶められなければならない?

 あの粘着女が彼女に劣等感を与えている。なんて醜悪で救いようがないのか。


 ――また、彼女に捨てられたかもしれない。情が深い彼女は本当には捨てないけれど。


 大切な物と、その他のものを心の中で明確に区別するんだ。


 あの時一瞬だけ、それでも確実に失望された。

 俺はここまで彼女に執着して、絶対に彼女だけは手放さないのに。


 ルフィーナはあっさりと捨てるんだ。

 理由もわかる。

 彼女の境遇を考えたら理解も出来るが――。

 許せるはずもないよね。



「もう、いいかなぁ。事故や事件で女が一人消えたって一週間後には皆忘れてるじゃん。消しちゃおうかなぁ、あの女も裏切り者もみんな」


 全てが嫌になり、投げ出したくなった。

 別にこの公爵家が、国がどうなろうと構わない気がしてくる。


「ジェイド、大丈夫?」


 レイアスが恐る恐る聞いてくるが、大丈夫な理由がない。

 そういえばお嬢がこいつを嫌いだって言っていたっけ。

 確か意地が悪いと指摘していた。

 

 あ~、こんな奴を会わせるんじゃなかった。こいつも彼女にとっては害だったか。


「レイアス、正直に答えろ。ルフィーナになにか余計な事をベラベラと吹き込んだだろう」


「いや、それは――」


「不愉快だ。お前に理解して欲しいなんて頼んでいない。お前に、ルフィーナを評価して欲しいなんて思ってもいないよ」


 もうレイアスの顔を見ているだけでも苛つく。

 奴をすぐにでも排除してやりたい。


「俺は、彼女を傷つける人間が死ぬほど嫌いだ。自分の理想を俺に押し付けるな。あの女とお前、もう一緒に片付けてもいい。嫌なら早く俺の前から消えろよ」


 レイアスに背を向けて、部屋に戻った。

 

 ――それなりに信頼していた相手だった。

 お互いに、前公爵への復讐心を持っていたために、公爵家を一人で追い出されたあいつをギルドに誘ったりもした。


「ルフィーナ……。なんでそんなにすぐに俺を捨てるの。俺って君にとってそれだけの存在なのか」


 ――でも、それでも構わない。

 俺が絶対に手放さない。


 愛に飢えている、臆病な彼女を捕まえて。

 閉じ込めて、閉じ込めて、愛情をいっぱい注いだら。

 彼女もわかってくれる筈だ。


「もう、いいか。みんな邪魔」


 目障りな事が多過ぎる。


 ――王妃のお茶会?王位の継承争い?

 もう放っておいて欲しい。


 両親の仇が討ちたかっただけで、そこまでこの地位に拘りは無いのに。


 ◇◇◇



(また、夜に会いに行っても迎えてくれるかな)

 

 彼女が俺に甘い事は知っている。

 粘れば、甘えれば、また部屋に入れてくれるだろう。


 一目でも彼女に会いたくて夜のバルコニーから外に飛び降りようとすると――。


「ごめんね!ジェイド!正直そんなに怒るとは思ってなかった。それに……」


 バルコニーの階下にいたレイアスが、敏捷な動きでここまで登ってきて、俺に謝ってくる。

 目障りすぎる。


 ――叩き斬ってやろうか。

 

 そう思わなかったといったら嘘になる。が、話くらいは聞いてもいいと思った。長い付き合いだ。


「ある方から、ルフィーナ嬢の事を見極めろって言われていたんだ。随分と君を心配されている。それにヘレン嬢の事もちゃんと把握して報告はしているよ。動きがあればすぐにでも知らせるからさ」


 そう言って、小さなメモに書かれた物を見せる。 

 白い百合の絵。だだそれだけが書いてある紙。


 (そんな物まで見せて、謝ってくる、ねぇ) 


 ――世間にはあまり知られていない、王妃が好む花。本来はただそれだけの意味だが、レイアスが伝えたい事情がわかった。

 今、それだけの危険を犯して俺に打ち明けていることも。


「もう勝手はしないよ。あの方にも君たちの事を上手く伝える。だから。……僕の家族は君とクロエしかもう残っていないんだ。頼むよ」

 

 レイアスの母、つまりは俺の乳母は前公爵に殺された。だから、俺たちを家族だと思っているのは本当なんだろう。

 

 溜息をこらえる。

 

(どうして、こうも揃いも揃って歪んでいるのか)


「じゃあ、クロエをお嬢から引き剥がして話をする時間を作ってくれ。ついでにお前は暫く俺の前に顔を見せるなよ、本当に斬りたくなる」


 それだけを伝えて、レイアスを追い出した。

 

 水を差された気分だ。

 今日はもう、彼女をそっとしておいてあげよう。

 臆病な本心を隠して、そんな言い訳をして部屋の中に戻る。


 それよりも早く、奴らの裏を取らないと。

 ルフィーナに見捨てられてしまう。


 彼女の一番になりたい。

 そう思っていても、きっとクロエの方が彼女に近いんだろう。

 弱りきった時に最終的に頼るのは、いつも妹の方だ。


(ああ、俺は本当にあの頃から変わっていない)

 

 夜の森を、恐怖の中を駆け抜けた記憶。

 あの無力感――。

 それは、俺の中に根強く残っていて、偶にこうやって現れては俺の自信を奪っていく。


「あーあ。いつまでも格好悪いままだな、俺は」



 

いつも、読んで下さる方、ブクマしてくださる方、評価してくださる方、リアクションしてくださる全ての方に支えられています。

ありがとうございます!本当に励みになっています。

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