06 頑張っている私は癒されたい
よくあるゆるふわ設定です。
ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。
「今日から、公爵家の配下の中で爵位を持つ者達と、ご親戚の方々、公爵家と近しいお付き合いをしている貴族家の序列を覚えていただきます。お人柄やその家族、その家で行っている事業などの詳しい事柄まで把握出来るように努力なさってください」
――早口!台詞が長い!そして、全然自信がないわ!
「取り敢えず、優先して覚えるものはどれかしら?」
眼鏡を掛けた、いかにも文官といった形のシンプルなデイドレスの女性。これから私が色々と教わる先生である、ケリー・ラスマン伯爵令嬢。
某有名アカデミー出身で、実直な性格らしい。
しかし、ちょっと無表情で厳しそうな雰囲気ではある。
「まずは公爵様のご親戚方ですね。こちらを覚えなければ話になりません」
それはその通り。
親戚すら覚えてないなんて駄目よね。
パラパラと貴族年鑑をめくって公爵家の系譜を辿っていると。
(――って!ジェイドって第一王子と従兄弟じゃない!え、親戚!?嘘でしょう!)
王妃様とジェイドのお母様が姉妹だわ……!
怖っ!ジェイドの肩書きがもう盛り沢山で胸がいっぱいよ……。
ジェイドの癖に……。あぁ、いつもの文句も出て来ないわ。
「王妃様や第一王子殿下も親類にあたるんですよね?まさか、直接お会いしたりとかは……?」
「勿論です。いずれはご挨拶しなければいけません」
いや、確かに貴族のトップである公爵家だからと覚悟は決めていたけれど。
王族とご親戚か。それはそうか。高貴な方々はそうやって血を繋いでいるものね――。
(やっぱり逃げたくなるんですが。私の性格をわかっていて、意図的に伝えなかったわね、あいつ)
「じゃあ、ベルンスト公爵家は第一王子を支持する事になるのかしら?」
――現在のこの国、アルセリア王国は王太子争いが勃発している。
そろそろ立太子してもいい筈の、正妃の実子である第一王子がいるのだが――。
反対勢力というものはいつも存在するのだ。
隣国のエルムハイツ王国から嫁いできた側妃の息子である第二王子派も根強い。
側妃が隣国の元王女なので、ここで少し厄介な事になっている。
「そうですね。ジェイド様はあの方々を支持すると表明しております。前公爵を投獄する際にも殿下と連名で罪を追及していますから」
成る程。ジェイドは第一王子の派閥の筆頭ということになるのか。
しかし、まずは目先の事だ。
――この量を覚えなくてはいけない。
侮られるなんて許せない。
セイムズのお義母様に、中央貴族やその他の基本的な事は詰め込まれたとはいえ、ここまで詳しく覚えなければいけないのか……。
公爵夫人なんて、会話の中心になるべき存在だものね。
ジェイドに啖呵を切った手前、弱音は吐けない。
そう決意して、また分厚い本に向き合うのだった。
ケリー嬢の授業から解放されて自分の部屋に戻り。
「クロエーー!!癒やして!そのお胸で私を癒やしてーー!」
部屋で待っていたクロエの胸にダイブする。
覚える事が多すぎる。頭が爆発しそうだわ……。
「お嬢様、お疲れ様でした。甘い物を用意してますよ。疲れによく効くお茶もありますから」
頭を撫でてくれる。癒やし。あぁ癒やしだわ。
クロエ大好き。やっぱりいい匂い。
「お嬢!俺も癒やしますよ、ほらほら!」
ジェイドが両手を大きく広げて私に話しかける。
――本人はいつもの冗談のつもりだろうけれど。
「ジェイドも癒やして!双子成分が足りてないからジェイドも沢山甘やかして!頭を撫でて、沢山褒めて!ギュッとして!」
彼の胸にも飛び込む。逞しい胸に頭をグリグリと擦りつける。はぁ、ジェイドにも癒やされる。というか何だか幸せ。……うん。好き。
「お、お嬢。……流石に予想外過ぎて……!かわいすぎるっ……!これは……!クロエ今すぐに出ていけ!」
彼が口元を押さえ、私から顔を背けて何か呟いているけれど。
私は彼の心臓の音を感じる事に夢中になっていたのでよく聞こえなかった。
いつも、勝手に私の事を抱きしめてくるんだから。
お互い様よね?
ジェイドとクロエの口喧嘩も聞こえる気がするが、これも私の日常だ。
明日からもまた頑張らなくちゃ。
しかし、王族まて絡んでくるなんて!
ジェイドの癖にーー!私が大変じゃない!
「お嬢かわいいね。頑張ってて偉い偉い。あー本当に我慢できない。もう、どうしてくれよう……」
でも、そんな言葉が聞けたから私の心が幸せに満たされるの。
よし、また明日も頑張りましょう。
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