02 だってこれが私だもの
よくあるゆるふわ設定です。
ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。
ノックの音に、入室を許可する。
「お嬢様!メイドのミスは認めますが、何度も冷水で顔を洗わせるなんて!あまりにも横暴な振る舞いです!」
――入ってきたのは、メイド長。
成る程、理に適っているわね。
(ふふふ。伊達にこっちも嫌がらせを受け続けたわけじゃないっていうのよ!)
「あぁ、メイド長ね!三日続けて冷水が用意されていたからお手本を見せてもらっただけなのよ。それで、何故か泣いて謝られてしまったから、私の感覚がおかしいのかと思って……」
それで――と洗顔用のボウルに目を向ける。
「洗面用の水を持ち上げたら、重すぎて頭から被ってしまったわ。でも私にはやっぱり冷たすぎるわね。凍えてしまって無理みたいだわ」
勢いよく入って来たメイド長はその場で言葉を無くし。アンの顔色は真っ青になっている。
「――今から着替えるわ。その間に医者を呼んでくれる?風邪を引いたみたい」
「軽い風邪ですね。これから熱が上がるかもしれないので、解熱剤を出しておきます。しかし……この時期に冷水を被るとは、お気をつけ下さい」
そう言ってお医者様は薬を枕元に置いて部屋を出て行った。
「……もう!お嬢は何でこんな無茶ばかりするんですか!俺かクロエに言えばいいだけでしょう!」
「そうですよ、お嬢様!あんな嫌がらせを受けているなんて!あの子たち大事なお嬢様によくも!」
双子が興奮している。心配してくれているのよね。
やっぱり、クロエとジェイドはかわいい。
「うーーん。やっぱり、告げ口は好きじゃないのよ。自分の体を張って大事にしてやらなきゃ気が済まなかったの。そうじゃなきゃ有耶無耶にされるでしょう」
あの後、アンの霜焼けなんて話題にもならず。
部屋に押し掛けたメイド長も黙った。
――まぁ、自作自演と言われる可能性もあるけれど、その前に冷水を用意できたのはアンだけだったしね。
すぐに言い掛かりをつけに部屋へ来てくれて助かったわ。
「――俺は偶にあなたが恐い」
ジェイドが言う事はきっと正しいわ。
でも深くは考えたくない。私の本質。
結果が良ければそれでいいじゃない。
「私はここで舐められたら終わりなのよ。でも理不尽な事はしたくないの。だから、無闇に罰を与えたりはしたくない。なら身体でもなんでも張って証拠を掴んで相手を叩いたほうがいいでしょう」
「お嬢。あなたの考えも分かりますが、ここは俺の邸宅で彼らは俺が雇った使用人達だ。あんな人間達をあなたに付けた責任もある。彼らの処分に口出しはさせません」
ちょっとした騒ぎにして、私に手を出したら痛い目を見ると教えたかっただけなのに。
それに義妹からの嫌がらせに比べれば、上の立場だからやり返しやすい。
お茶が不味ければ、その場で本人に飲ませればいいし、料理が腐っていれば、作った本人を呼んで食べさせればいい。
さすがの権力。実家より全然楽だわ――と思っていたけれど、深刻そうな表情のジェイドに心が痛む。
「ごめんなさい。ジェイドにそんな顔をさせるつもりはなかったのよ。私は健康で風邪にも強いし、すぐに治るわ。クロエもそんな顔しないで」
きっと、自分の領域で起きた事だから責任を感じているのだ。でも、昔もよくあったことじゃない。
「兎に角、早く風邪を治してください!私はやっぱり元気でお馬鹿なお嬢様が一番好きです!……あとは、ジェイドに叱られてくださいね?」
――クロエ。お馬鹿って。ずっとそう思っていたの?
そしてやっぱりジェイドの冷たい空気とお説教は怖い。
クロエが部屋を出ていき、ジェイドと二人になった。
「…………。」
沈黙が気まずいの……。
「あ、でもあれよね?雇用主のジェイドに惚れてるメイドが居たとしても、今回はタイミングよく全員なんておかしいわよね?」
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