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白い結婚!?それなら、私の戸籍をあげちゃいます!〜え?拾った彼は公爵様でした!?  作者: しぃ太郎
第一部 お嬢様と双子と、白い結婚

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21/73

20 詳しく聞かせてもらいます


「それで、既にイリーナから聞いたと思うが……。こちらに、最近新たに公爵位を継承した方がお見えになっているんだ」


「ええ、その方が何故か私を『辺境伯の養女にしてほしい』と打診してきたと聞きました。更に、王室舞踏会ですか?そんな所に私を招待したとも。考えると心当たりが無くはないんですけど……、ちょっと一から説明してもらおうと思いまして」


 ――ええ。やっぱり本人から直接聞かないと。


 この流れで理解できない人は居ないだろう。

 

 幼い頃に出会った、何か訳ありな綺麗な双子。

 浮浪児にしては、頭が良く。

 所作も綺麗だったから、すぐに侍従にもメイドにもなった二人。


 更には知らない間に、情報ギルドなんかに通って諜報員になっているジョン。


 その彼らが今、私の側に居ないのだ。


 私がそんな大変な事になっているなら一番に駆け付けて側にいてくれる彼らが居ない。


 これが答えだ。


  (そろそろ、本当の名前や事情を聞こうと思っては居たけれど!)


 まさかの公爵閣下ですって?

 そんなに高貴な血だったの?

 あの、いつも笑顔でこちらをすぐに茶化してくるあの彼が?


「ジョン!出てきなさい!どうせこの会話も聞いているんでしょう!?もう!騙し討みたいで生意気よ!」


 やはり居た。気配を感じさせずに、窓の外から中に入ってくる。


「酷いなぁ、お嬢。というか、俺からも言いたいんですけどね〜、本当にあなたは浮気者だ。騎士の後は、今度はこっちですか?」


 ――だから、違う!見惚れてただけよ!


「もう!浮気者でいいから!……あなたから話をしてほしいの」


 いつも通りのジョンに噛み付く。だって彼は変わっていない。――でも、本当に?ここまで見た目が変わっているのに?


「ただの客人なのに申し訳ない。少し二人きりにしてもらえますか?」


 そう彼が退出を促すと辺境伯ご一家は言うとおりにして出ていってくれた。


「お話が終わったらお呼びください、閣下」

 扉を閉める時にエーリク様がそう言って頭を下げた。


 閣下。閣下?本当はこんな事は無礼なんだけれど……。

 でも彼に聞いてみなくては。


「閣下?ジョン?本当の名前は?私はなんてあなたを呼べばいい?」


 目の前には上質な仕立ての服を着た、立派な紳士。

 ――そして、彼の目に映るのはエプロンドレスを着たただの平民の女。


 どう、彼と接したらいいのか。

 私に判断は出来ないから、彼の言葉を待つしかない。


「お嬢。俺は、あなたのお気に入りのままです。この瞳がお気に入りでしたよね?この翡翠色が。『ジェイド』、翡翠という意味の名前です。これが俺の本当の名前だ」


 ――彼は本当に、宝石だったのだ。

 誰からも求められる存在。本物の宝石で宝物だった。


「素敵な名前ね、ジェイド様。じゃあ、彼女の本当の名前は?」


「クロエだよ。妹も瞳の色から名付けられた。お嬢の好きな色だろう?」


 二人とも素敵なちゃんとした名前があって、本来は身分が高く、寧ろ私が彼らに敬語で話さなくてはいけないのだ。



 撫でつけられてセットされた髪は何だか初めて会う人のよう。お洒落な黒いフロックコートを着た彼は、最早知らない男性だ。


 ――そっか。うん、そっかぁ、そうなんだ。


 不意にお母様とお別れした時を思い出した。

 きっと、今この瞬間に何かを失った。

 ずっと握っていた大切なものが、気づいたら無くなっていた。


 そう。いつもの事。それが何年もずっとずっと大切にしていた物だった、それだけだ。

 うん。いつもの出来事。ただそれだけの事だ。


「止めてくれ!そんな顔をさせたくて元の場所に戻った訳じゃないんだ。お嬢!俺は何も変わらないよ。お願い。そんな顔しないで」


 彼が苦しいくらいに強く強く抱きしめる。

 

 あ。今、私は――。

 手放そうと思ったんだ。そうか。

 

 そう。確かに今、彼を手放して諦めようと思ってしまった。


「ジェイド様。いえ、公爵閣下。無事のご帰還と公爵位の継承をお祝いいたします」


 腕に力を込め彼の抱擁から抜け出して、伝える。

 

 勝手に王室の舞踏会なんかに招待したから、怒ってやろうと思った。

 勝手に辺境伯家に、私の養子入りの打診をするから叱ってやろうと思っていた。


 でも、実際に彼に会ったら無理だった。

 どうしても今まで通りに出来ない。何故?

 身分なんてお互いに気にしないのに何故?


 ――何だか、私のものじゃなくなった彼が。

 そろそろ手放す頃なのかな、と感じてしまったのだ。


「まぁ、お嬢ならそう言う可能性もあったよね。本当は臆病な人だから。俺に捨てられて一人になったとでも思ってるんでしょ?」


 ジェイド。新たに知った彼の名前の通りに、その瞳は私を睨み。キラキラと強い光を放っていた。



 

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