01 馬車の事故と追われる双子
【短編】『白い結婚!?それなら、私の戸籍をあげちゃいます!』の連載版です。大幅加筆しております。
よくあるゆるふわ設定です。
ご都合主義でも温かい目で読んで下さると嬉しいです。
「おかぁさま……。今、何が起きたの?どうなって……」
ガラガラ……と岩が崩れ、地面に転がる音がする。
「馬車の事故だ。馬車が崖から落ちたらしい。クロエ、父上が全然動かないんだ。……母上は?」
横転した馬車の中、父の腕の中から妹に声をかけた。
視察の道中、崖から馬車ごと落ちたらしい。
「……ジェイド、クロエ……。無事なのね」
微かな母の声が聞こえた。
泣きたくなる程安心する。
「母上!お怪我は?」
「ちょっと……動けないみたい……。二人とも大丈夫?動ける?」
「俺は動けそうです。でも、助けは?護衛は何処に行ったのでしょうか」
「クロエも、怪我は大丈夫かしら?」
「はい、お母さま。でも、でも……お母さまの足が……」
見ると……母の足は馬車の上に落ちた岩に潰されてしまっていた。これは。早く助けを呼ばないといけない。
どうしてこんな事に。
助けは来ないのか?
父もまだ息があるのかもわからない。どうすればいいのかもわからない!
「ジェイド、クロエを連れて街まで行って。誰にも見つからないように。逃げなさい」
(それは。その意味は……。馬車が狙われた?まだ危険が迫っているということか?)
「私は、大丈夫だから。お父様とここで少し休んでいくわ。自分の身を守る事を優先しなさい。信じる人を見誤らないで」
――それは公爵家のものを信じるな、という事なのか。裏切り者がいると。
「クロエ、行くぞ。俺が外に出て上から引っ張り上げるから、お前も手を伸ばせ」
「ジェイド、でも……!」
母と父を置いていく事に納得ができないのだろう。もしくはまだ状況が飲み込めていない。
ここに、護衛騎士が居ない事がどういう事か。
早く逃げないと、誰かにこのまま殺されるという事に気づいていない。
「クロエ、早く街まで行って助けを呼んでこよう。俺たちしか動けないんだ。急げば助けられる」
口先だけの嘘。騙すためだけの甘い、ありもしない希望を言葉にする。
「さぁ、行くぞ」
でも、俺はクロエを助ける。
この生意気な双子の妹を絶対に死なせたりしない。
「母上、約束します!絶対にクロエを守ってみせます。俺自身も簡単に死んだりしません」
きっと時間が無いんだ。
ちゃんと話も出来ないまま、このまま……。
母は微かに笑った。我慢しても涙が滲む。
昨日までの平和な時間がこうも呆気なく消え去り、いきなり放り出されることになるとは。
――どうして。どうしてこんな事に!
馬車から出て、森の中へ。早く、早く急がなければ。
きっとすぐにでも、馬車を確認しに来る。
『おい、あれだ。中を確認するぞ。怪しまれないように頭を岩で潰せ』
聞こえてきた残酷な言葉に、クロエがヒュッと息を飲み込んだ。
ここで声を出したら気づかれる。
クロエの口を塞ぎ、後ろから羽交い締めの様な形でその場から逃げ出す。
『おい、ガキ二人は?一緒に居るって話じゃなかったか』
『見つけて始末しないと、報酬が貰えないぞ』
――見つかるな見つかるな。絶対に殺される。
何処かに隠れる場所を探すんだ。
夜になれば、まだ逃げられる可能性が上がる。
どっちに向かったらいい?
馬車は西の街に向かっていた。
どうする?戻ったほうがいいのか。それとも進んだほうがいいか?
さっき通った街は、規模は小さめだが貴族達の別荘も多く綺麗な所だった。
ならば、もっと大きな西の街に行くべきか。
人混みに紛れやすくなる筈だ。
いつの間にか、落ち着きを取り戻したクロエが小声で服を引っ張る。
「ジェイド、あっち……。あっちに小さな窪みがある」
クロエが指をさした先には低い崖があり、子供が二人入れるかどうかという小さな窪みがあった。
「あぁ、いいかもな。入り口を隠せばバレないかもしれない」
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