17 エーリク視点 〜辺境伯家の人々
新しいエピソードです。辺境伯家の人々のお話です。
エーリクの弟が新たに登場しています。
イリーナ嬢との話し合いが終わり、一夜明け。
――ガッシャーン!!
私は、いきなり殴り付けられていた。
「結婚するんだってな?エーリク。お前みたいな甘っちょろい奴が良くもまぁどうして所帯を持とうなんて思えるんだ?聞けば、結婚相手に自分の要求ばかり強いようとしてたらしいじゃないか?取り敢えずぶっ潰すから、掛かってこい!」
「お前!いつ、帰って……」
「いつ帰ってきてもお前には関係無いだろう?
ふざけてんのか。今!帰ってきて!そんですぐにお前をぶん殴ってんだよっ!」
――ちょっと待っ……!!
言葉を発せずにまた壁に打ち付けられる。
くそ、相変わらずの怪力だ。
昔からこいつの方が戦闘センスも良く、豪快で私よりも優れている次男、ジェラルド。
「親父も今回の件で考えさせられたってよ!お前みたいに人を利用出来る奴も必要かもしれないが、でも結局その女にやり込められたってなぁ!」
「あぁ、クソ野郎と呼ばれて、目を覚まさせられたよ!」
ジェラルドの顔を殴り返す。
「てめー、念願のユリアちゃんと結婚するんだろ?良かったな、反対されてたしな!なら、継承権を放棄しな。俺がそこに立つ。お前みたいに中途半端な野郎はとっとと退場しな!」
「ああ!目が覚めたって言っただろう!あっさりと平民になる事を選べる彼女の潔さに!俺も別に次期当主なんて望んでないって事にな!」
二発目は脇腹に蹴りを入れる。
――流石に壁までは吹っ飛ばないな。
「だから、次期当主はお前でもいいんだ!」
ユリアとその子供が居るから、貴族の地位は捨てられない。全てをお膳立てしてくれた彼女に申し訳がなさすぎる。
騎士団で身を立てるか、父に頭を下げてもいい。
『あんた父親になるんでしょう!?』
イリーナ嬢の言葉を思い出す。
このままで居られるか。守るものが出来るのに。更には小さな命も増えるというのに。
「おう、マシな顔になったな。兄貴。正直、俺は戦うしか能がないし領主なんて柄じゃないしな。面倒なそういう仕事は兄貴がやった方が効率もいい。弟のランドルも大差ないだろ」
それに、とジェラルドが言葉を続ける。
「兄貴が思っているほど、ユリアは弱くないぞ。あんだけ周りから実の親のせいで反対され、平民だと見下されて。更にこれから産む子供の為に母親の権利も捨てようとしたんだ」
――そうか。私が誤っていたのかもしれない。
ユリアを勝手に弱い者だと判断して、勝手にイリーナを実家に虐げられている可哀想な存在だと思った。
(傲慢だった。彼女たち二人に対してあまりにも)
「そうだな。反省して彼女たちに誠心誠意、謝罪しよう。またクズ野郎と言われないように、逃げずにこの場で踏ん張ってみるよ」
――いつの間にか人を駒のように考えていたのか。
反省はあれど、無かった事には出来ない。
ここから、私自身が判断されるのだ。
(せめて、クズ野郎は脱却しないとな)
「親父、別に俺達は見世物じゃないんだけど?」
いつの間にか、父上が扉に寄りかかってこちらを見ていた。
「エーリク、これからお前はいつでも勝手に人に判断される立場に立つんだ。役に立たないと判断されたらそこで見限られる。当主とはそういう物だ。足元を掬われないようにな」
「そうそう。面倒な古参の家臣とか煩い中央貴族とか。気合い入れてくれよ、本当に!」
ガシッと首に手を回される。
頼もしい弟だ。
これは、父上も後押ししてくれたという事か?
出来る限り、全力でやらないといけないだろう。
(私はこれから父親になるのだから)




