16 ジョン視点 〜何人も破滅させる男の愛する人
新たに書き加えたエピソードです。
彼を書くのは楽しいです。
夜、一人で馬を走らせる。
「さーて、伯爵邸に忍び込んでっと」
伯爵には色々な感情が湧き上がる。
幼いお嬢様をずっと放置して愛人宅に通っていたこともそうだ。
前伯爵夫人が病に倒れても顧みず。
自分が連れてきた後妻やその娘の横暴にも目を瞑って、お嬢様を蔑ろにし続けてきた。
「破滅させるにしても……。財政破綻させたら意味がないし。汚い事をしたらお嬢が悲しむかなぁ」
――さて。どうしようか。
まずは諜報の基本である、金の流れを調べてみるか。
後は違法なものに手を出していないかどうか。
これは証拠をでっち上げてもいいんだが。
綺麗な世界しか知らない彼女に、汚い物なんて見せたくない。気づかれないように。全てを覆い隠してしまおう。
「あははは。伯爵が殺人でも犯してたら随分と楽なんだけどね?」
お嬢様の叔父にも当たってみないと。
上手く釣れれば、こちらに協力するだろう。
「お嬢。こんな俺だけど十分役に立つし。期待して結果を待っててよ」
――それにしても、あのクズ野郎。
俺の大切なお嬢様になんて事をさせようとしたんだ。
一番に幸せになるべき人なのに。
愛人が産んだ子を自分が産んだと偽り、母親として育てろって?
白い結婚?あんなに綺麗な人が、誰にも身体を許さず愛されず、衰えて死んでいけって?
誰よりも母親を愛していたあの人が、自分が母親になりたくないわけがない。
それが、体の問題なら諦めもつくだろう。
だが、他人に強要されて納得出来るような人じゃないんだよ、馬鹿野郎。
でも、どうせ攫っていく予定だったからこれで良かったのかもしれない。
――俺自身、叔父の事がまだ片付いていない。
お嬢様の結婚が決まるのがあまりにも早すぎて、先に攫うしか方法が思いつかなかった。
同時進行で、現公爵にも堕ちてもらおう。
証拠は何年も探し回り、大体揃っている。父を裏切った奴らも逃さない。
後は本来の後継者の俺が現れ、罪を告発すれば。上手くいけば奴らの首に縄をかけられる。
それが無理でも最低でもその座からは降りてもらう。
そうしたら、『ジョン』ではなく。
母がつけてくれた、この翡翠色の瞳が由来の名前。
『ジェイド』と呼んでもらえるだろう。
同じく緑を意味する『クロエ』も。
あの時、俺たちの前に現れた可愛らしい金髪碧眼の天使。
彼女の性格はちょっと変わっていて思っていた以上に苛烈だったけれど。
好奇心が強く前向きで、そして可愛らしい。
「あの日から、貴女はずっと俺の救いなんですよ」
あなたはずっと、俺たちに言い続けてきた。
――俺たちがいれば、他に大切なものなんてないから平気だと。俺たちが宝石よりも価値のある大切な宝物だと。
貴女の方が最も価値がある宝物なんだ。
あの時、何もかもを無くした俺達が見つけた綺麗な宝石なんだ。
他の物なんて貴女に比べたら塵屑以下なんだ。
――だから、もっと俺に頼って依存して愛してくださいよ。
俺もクロエも、もうお嬢様から一生離れるつもりなんてないんだ。
「お嬢、イリーナ。俺を本気で惚れさせたんだから、ちゃんと責任持ってくれないとね」




