11 辺境伯領に到着
この話は本編と全く同じです。
読み飛ばしても大丈夫です。
「長旅ご苦労さまでした。セイムズ辺境伯家、並びに使用人一同がお嬢様のご到着を歓迎致します」
ズラッと並ぶ使用人に、屋敷の扉の前に立つ三人の男女。
男性二人は深い真紅の髪色に黒い瞳の色で血縁だとわかる。
女性の方は、年嵩ながら綺麗な姿勢で立っており、金髪碧眼の綺麗な方だ。
あの一番年若い紳士が今回の縁談相手のエーリク様か。
「遠くからよく来てくれた。私は辺境伯のリーギル。こちらは妻のマリエットだ」
「辺境伯閣下、辺境伯夫人、初めてご挨拶させて頂きます。シーベルト伯爵家のイリーナでございます。此度の伯爵家への申し入れ、そしてこの歓待に感謝致します」
辺境伯、辺境伯夫人の二人に挨拶を返し、視線を横に少しずらす。
「イリーナと申します。エーリク様には今後ともよろしくお願いします」
「ええ。こちらこそよろしく。夜に、少しお話ししましょう。立ち話もなんですし、お疲れでしょうからお部屋にご案内させます」
「まぁ、ありがとうございます。夜にお話ですね?何が聞けるのかしら!こんなにご立派なお屋敷に、使用人たちにも温かく歓迎されたんですもの。お付き合いのある方々に、さすが辺境伯家でしたと自慢できてしまうわ!」
大袈裟に喜んでいる振りをして様子を見てみる。
(……息子の方は、顔が引きつっているわ。夫人はよくわからないわね。辺境伯は面白そうな瞳で見てくるわ)
「くくく。息子の話は既に聞いているのかい?そんなに肩肘張らなくても大丈夫だと約束するよ。今回の結婚は息子が無理を通して貴女に求婚したんだけれどね」
スッと目を細めて。
「あまりにも卑劣な事をしたり、君に無体はさせないから」
――やっぱりここで一番発言力を持っているのは辺境伯ね。お人柄も悪くなさそう。こんな無礼な小娘にもちゃんと対応してくれるわ。
「あら、そんなつもりはありませんでしたのに……。お気遣いありがとうございます。私ったら」
「では、長旅で疲れただろうから、今日の晩餐は部屋でゆっくりとったらいい」
「感謝致します。皆様、それでは御前失礼致します。――ジョン、ジェーン、後は宜しくね」
二人に目配せをする。これで私の言いたいことが伝わる筈だ。情報収集。特にエーリク様とその恋人について少しでも調べておかないとね。
エスコートは無しかな?そう思っていたけれど……。
「イリーナ嬢。お部屋までエスコート致します」
婚約者のエーリク様から声がかけられた。
親公認の、世間でも公然の恋人がいるお方なのよねぇ。
(うーーん。どうやって付き合っていけばいいのかしら。あまり親しくしても彼の恋人にも悪いし……)
とりあえず。
「よろしくお願いしますわ、エーリク様」
難しい問題は先送りにしたのだった。




