プロローグ
とある山奥に、古くからある神社があった。
その神社は「願いが必ず叶う」と言われ、たくさんの人々で賑わっていた。
拝殿の前に列がつくられ、鈴の音がガランガランと鳴り響く。
「この神社に来てくれた人が皆幸せになりますように。」
「そうだな。これからもたくさんの人を幸せにできるといいな。」
祭を開いたりなんかもして、屋台が並び、子供の声が聞こえて、神社は賑やかな雰囲気に包まれていた。
しかし、現在は人々の信仰心も薄れ、参拝客はみるみる減っていき、賽銭箱の中身も空になることが多くなってきた。
今では拝殿に列ができることも無くなり、建物は苔むしている。
屋台のあった場所は寂しく砂利が残る。
ある日とうとう神社のお金は底を尽き、取り壊されることになった。
「神主ぃ。私の神社がぁ。」
「まあ仕方ないよミカゼ。」
号泣するのも無理はない。
ミカゼはこの神社に宿る神様だからだ。
ミカゼは前世で死んだ後、神様として生まれ変わり、そのまま何年もの間この神社で暮らしてきた。
そんな神社が目の前で壊され、崩れていく。
「よし、ミカゼ。僕と一緒に街に来ないか?」
「神主と?」
長年居た土地に未練があるが、ここに残っていても誰か来る訳でもない。
「行く!」
ミカゼは神主の手を取り、歩き出す。
ーー
ミカゼは初めて人間の街へと降りることになった。
神主とアパートを借りて暮らすことにした。
「私の…神社…。」
ミカゼはまだ落ち込んでいる。
神主はミカゼを必死にあやす。
「ミカゼ、街もいい所だよ?せっかくだし楽しもうよ。な?」
「神社で一生だらだらしてお賽銭もらって暮らしたかったのにぃ!」
「そっちかよ!それでいうと、ミカゼが全然願い叶えないから参拝客減ったんだろ!だらだらすんな!」
「なに?私のせいにするつもり!?神主が掃除サボってたのが原因でしょうよ!」
しばらく言い争っていたが、すでに取り壊された神社のことを話していても仕方がない。
ミカゼたちはこれからのことを考えることにした。
「とりあえず仕事しようか。」
「頑張ってね。私も応援してあげる。」
「ミカゼも働くんだよ!」
神主はすぐに職に就くことが出来たが、ミカゼは苦戦していた。
「電車はこのカードをタッチすればいいんだな。」
ピンポン
「もう1回。」
ピンポン
「なんで!?」
「お金をチャージするんだよ。」
「なるほどな!タダで乗れると思ってた!」
「そんなわけあるか!」
何とか面接にたどり着けたとしても、まず職歴が神様の時点で怪しすぎる。
「ミカゼさん。前職は神様…とはどのような仕事だったんですか?」
「えーとぉ、大っきい家でごろごろしてたらお賽銭を入れてくれるの。」
やはり願い事を叶える気はないらしい。
面接官は戸惑いながら次の質問をする。
「志望理由を聞いてもよろしいですか?」
「死亡理由は…なんだったかなぁ。足を踏み外した気がする。」
「足を踏み外した…?前科があるということですか?」
こんな調子で落ち続け、気づけばミカゼはニートになっていた。
毎日食べて寝て遊んでを繰り返しているミカゼを神主は諦めた。
「いやあ、コンビニって便利だねぇ。たむろしてる人は怖いけど。」
ガチャッ
「あはは、仕事?行ってらっしゃーい!」
「…信仰されてない神なんか、神じゃない。」
「え…。」
神主に言われてようやく自分が何もしていないことに気がついた。
「このままじゃまずい!神主に捨てられる!」
なにかをしないといけないと思い、とりあえず走って外へ飛び出した。
すると、偶然巫女だったヒカリに出会った。
「あれ、ミカゼさん。神主様は?」
「ヒカリちゃん!私、神主に捨てられる!」
「まあ!酷い!」
神主が仕事から帰ってくると玄関前に怒るヒカリと泣くミカゼがいた。
「これは、どういう状況だ?」
ヒカリが怒りながらヒカリから聞いた話を話す。
神主は呆れたようにミカゼを見る。
「おいおい、そもそも僕は捨てるなんて言ってない。あと働け。」
「ミカゼさん、ただのニートじゃないですか。」
ミカゼに2人から冷たい視線を送られる。
「わ、私は人々から信仰を集めて神社を再建するの!」
「そんなこと出来るの?」
「私は神様よ!やる時はやるの!」
「じゃあ仕事もしてくれよ…。」
ミカゼは信仰を集めるために、人々の願いを叶えてまわることにした。
アパートの近所で早速活動を始める。
「ね〜がい〜ごと♪願い事♪」
「石焼き芋か!」
「あ!神主!おひとついかが?」
「いらない。心配だから着いてきた。」
1時間くらい歩くが、困っている人は探してみると案外居ないものだ。
ミカゼは公園のベンチに座り込む。
「はあ、はあ、歩くの疲れた。」
「まあ思ったよりは頑張ってるな。」
そこに子供が走ってきた。
「お姉ちゃん可愛い!遊ぼ!」
「よし!初のお願いだ!」
子供が笑顔になっていくのを見て、神主は安心して先に帰った。
夕方になり、子供が帰る。
「はあ、つかれたぁ。セパタクローなんて遊び初めてやったよ。でも1人増やせた…。やった!」
嬉しそうにミカゼが帰ってきた。
久しぶりに頑張るミカゼの姿を見た神主とヒカリは神社再建に動いてくれていた。
「ミカゼ。1000人増やせたら神社再建してくれるってさ。」
「ほんとに!?でもまだ遠いなぁ。」
「いつか…私の願い、神社復興が叶いますように。」
はたして、神社は復活できるのか!?
いつも全然伸びてないけど今回特に酷かったので書き直しました。
読んでくれてありがとうございました!
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