第11話「アメリカ、チーズと牛肉と自由の味」
坂田雄一、36歳。今日のカップ麺は、自由の国の胃袋サイズ。
でかい、こってり、でもどこか憎めない。星条旗は今日もチーズの香りを揺らしていた。
土曜の夜。
外から聞こえる蝉の声も、東京の蒸し暑さも、もうどうでもよくなるほど、部屋の中にはチーズとビーフの香りが充満していた。
「こいつは……アメリカの主張だな」
坂田は、超大型サイズのカップ麺を見下ろした。
アメリカ製『ビーフ&チェダーチーズ・バーベキューヌードル』
見た目からしてとにかく“圧”。赤と黄色のパッケージに、「BBQ」「100% BEEF」「EXTRA CHEESE」といった謳い文句がでかでかと踊る。
「やりすぎ。……でも、嫌いじゃない」
麺は極太、乾燥具材の袋にはゴロッとしたサイコロ状のビーフチップ、そして真っ黄色の粉チーズがどっさり。
まるで、ジャンクフードの祭典である。
お湯を注ぐとすぐ、**“自由の匂い”**が立ち上がる。
スモーキーなバーベキューソース、チェダーチーズ、ビーフグレイビー。
これはもう、味のバーガーパーティーだ。
4分後、フタを開けた瞬間に、坂田の脳裏に浮かんだのは**“ハイウェイを走るピックアップトラック”**だった。
助手席には犬、後部座席にはこのカップ麺。
麺をすすると、想像以上のパンチ。
とろけるチーズがスープにしっかりと溶け込み、牛肉の旨味とスモーク感が暴力的に広がる。
「これは……胃袋の独立宣言だな」
舌に残る濃厚さは、最後まで薄まることがない。
あまりのコッテリさに途中で水を2杯飲んだが、それすらこの麺の“セットリスト”の一部に感じられる。
たしかに重たい。だが、その重さの中に、「これでいいんだろ?」という無敵の笑顔がある。
「うまい。いや、“やったもん勝ち”って味だな」
【日付】7月31日
【麺名】アメリカ製・ビーフ&チェダーチーズ バーベキューヌードル
【評価】★★★★☆
【感想】味に遠慮がない。すべてが「MAX」だけど、不思議と許してしまう。栄養よりテンション。これぞアメリカン・スピリット。
坂田は、空になった巨大カップを見つめた。
まるでハンバーガーを2個食べたような達成感。
ちょっと疲れて、でもなんか笑えてくる。
「たまにはこういう日があっていい。人生も、麺も、バカでかいくらいがちょうどいい」
――濃すぎる味の奥に、自由があった。
世界三杯紀行、第11話、完。




