ヲタッキーズ153 吸血鬼達のハロウィン
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第153話「吸血鬼達のハロウィン」。さて、今回はハロウィン目前の秋葉原で、吸血鬼や狼女のコスプレを狙った殺人事件が発生w
事件の真相に迫る不思議な劇画コミックが発見され、墓地には謎の墓碑銘。全てがカオスとなった時、浮上する18年前に幼い魂に刻まれたトラウマとは…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 吸血鬼の女王
コスプレのチャンス!
推しのミユリさんはスーパーヒロインだから、いつも変身してはコスプレを楽しんでいるが、いよいよ今回は僕の番だ←
細身のジーンズにカウボーイハット。ブーツのジッパーを上げ、銃口がラッパ型に開いた音波銃をガン回しして構える!
「テリィたん、何ソレ?」
「コレは、その、ちょっと…ハロウィンの予行演習」←
「何のキャラですか?テリィ様」
摩天楼の最上階にある"潜り酒場"で、僕の大好き女子軍団から疑問の声が上がる。ハッカーのスピアとミユリさんだ。
「見てわからないかな。"スペースカウボーイ"さ」
「でも、宇宙に牛はいないし…確か数年前にも同じコスで宇宙海賊キャプテン…」
「だから何だ?!TVで西部劇を見てた世代ナンだ。カウボーイは今も憧れ」
「もう少し進歩されてはいかがでしょう?特に味覚」←
あんまりだw
「そーゆーミユリさんのコスプレは、どう進化スルのかな?去年のセーラー戦士、最高だったけど、今年はクノイチ?悪の女幹部?」
「ヒロピンAVの見過ぎ?妄想炸裂のテリィ様ってカワイイなって思うし、出来ればお役に立ちたいのですが、今年はやめとこーかな」←
「え。メイド長がハロウィンのコスプレしない?」
ミユリさんは"潜り酒場"のメイド長だ。そして、僕は彼女のTOの重職にアル。
「いえ。御主人様方にお菓子はお配りしますが、トリックオアトリートには行かないわ。この年でセーラー戦士は少し恥ずかしい。卒業です」
「じゃあ…僕1人でお出掛けしろと?」
「ごめんなさい。他のお若い(コスプ)レイヤーを探して」
僕は、徹底的に抵抗スル。
「嫌だ。諦めナイぞ(ミユリさんのセーラー戦士w)」
傍でニヤニヤしてるスピアに八つ当たり←
「卵を子供がわりに育てる、とか言う、お店の課題は順調に進んでるのか?卵の名前を当てよう。ザックエッグフロンだろう?」
「ううん。オリバー・ツイストからフェイギンにした。フェイクと卵って意味ょ」
「ソレだとフェゲッグじゃないのか?」
電話だ。やや?万世橋のラギィ警部から呼び出しだw
「こんな遅くに死体か?ラギェッグ」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
何と殺人現場は、真夜中の墓場だ。
「いよいよハロウィンだ。枯葉。澄んだ空気。ジャック・オ・ランタンの香り…殺人事件にはピッタリの季節だ」
「テリィたん。私達警察は、この時期は大忙しなのょ。何かとトラブルが多いの」
「墓石って1つ1つが物語の宝箱だなぁ…エリザ・ドラデ。没年が"?"になってる」
殺人現場の傍にある墓石を覗き込む僕。
「いつ死んだか不明ってコト?あら。サスペンダー?」
「ハロウィンパーティのコス合わせしてた。ラギィもコスプレしておいでょ」
「またヒロピンAV系?」
バレてる。ラギィは現場の警官に聞く。
「状況は?…な、何?ウソでしょ!」
「こりゃ痛そうだ。心臓に杭?吸血鬼ハンターの仕業?」
「とゆーコトは…彼女は吸血鬼ってワケ?」
警官が手にしたタブレットから超天才の声。
「牙を見て。取り外し出来ないの」
「え。じゃモノホンなの?差し歯の可能性は?」
「ってか、吸血鬼の可能性は?」
超天才のルイナは史上最年少の秋葉原D.A.大統領補佐官。車椅子の彼女は暇を見てラボから鑑識を手伝ってくれる。
「IDも携帯もナイそうょ。目撃者もナシ。抵抗の跡がある。殺害前、頭を墓石にぶつけたor誰かに殴られてる。杭はトドメね」
「ずいぶんと手間のかかる殺し方ね」
「犯人は、きっと狼女だ。15世紀から吸血鬼と戦い続けてて…まぁそんな仮説もある」
牙をむき、口を薄く開け、空を見つめる女吸血鬼(の死体)。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の検視局。女吸血鬼の裸体に杭が直立している。ラギィがビニ手で掴んで、力任せに杭を抜き取ろうとするw
「ま、待て!よせ!」
通り掛かった僕は、慌ててラギィを羽交い締め!
「な、何ょ血相変えて。松の廊下?」
「杭を抜けば吸血鬼が蘇る!」
「ロンギヌスの槍?望むトコロょ。そしたら、殺人じゃなくなるから、私、帰れるわ」
妙な理屈をこね、ひと抜きにするラギィ。
「…生き返らない。やはり、人間?それとも別の生き物?」
「人間ょ。牙はセラミックの差し歯だった。大腿部に2つの傷口がアル」
「太ももを噛まれたか。エロいな」
ラギィに睨まれる。
「人工毛も付着してた。犯人はカツラをつけてた模様」
「にしても、杭を打ち込むのは大変だょな」
「胸郭を貫くには石でガンガン撃ち込まないとね」
ラギィが抜いた杭を見ると、取っ手に黒いシミがアル。
「犯人の手の汚れかな?」
「鑑識に回しましょ。とりあえず、指紋はデータベースにヒットなし。目ぼしい失踪届も出てないわ」
「差し歯を見せてょ」
ラギィから渡され、シゲシゲと眺める。
「何かワカルの?」
「全然ワカラナイ。こーゆーコトは"牙師"に聞こう」
「"牙師"?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その店は、神田リバーに近い新幹線のガード下にある。
蝋燭の灯りに浮かぶ店内に、頭蓋骨の模型や魔物コス。
「ホントにココで良いの?」
「そうさ。その筋じゃ有名な店なのに知らない?ちょうど良い機会だ。ラギィのハロウィンのコスプレを決めよう!…今年はミニスカポリス!」
「勝手に妄想してなさい。試着はお断り」
せっかくパンツ丸見えの超ミニスカがアルのに…
「他のに決めてるの?悪の女幹部?」
「行かないカモ」
「え。そんな」
カウンターの呼び鈴を鳴らすラギィ。すると…
「テリィたん!久しぶりね。ミユーリのお赦しが出て、やっと牙をつける気になったのね?」
白衣女子が出て来る。ドクトレス?いや、彼女は歯科医←
「フラン、今日は事件の捜査だ。ラギィ、こちらフラン医師。歯科医だけど、映画"プーの1族"の小道具係として、ダシキ首相の差し歯も作った有名な牙師ナンだ」
「完璧な御紹介thank you。まぁ牙のコトならお任せを」
「牙をつけた女性が殺害されました。センセなら面識があるカモと」
スマホ画像を見せる。すると、即決←
「烏だわ。2ヶ月ほど前に私が施術しました」
「苦労?」
「吸血鬼コミュニティでは、みんなアダ名で呼び合うんだ。ラギィやテリィみたいにさ」
画像を覗き込むフラン。
「何があったの?事件?」
「捜査中です。本名か住所をご存知ですか?」
「記録を調べます」
後ろの赤いカーテンの奥に消える。意外にアナログだ。
「テリィたん、何してるの?」
「別に。ホラ吸血鬼っぽい?ガブっと噛んであげようか?」
「私こそ噛むわょ」
牙をつけて振り向いたんだが、ラギィは驚きもしない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原の安アパート。1Fのシャッターには落書きw
「マシュの部屋よ。意外かもしれないけど、あぁ見えて、静かで問題のナイ子でした」
「最近何か変わったコトは?」
「そりゃ吸血鬼のコスプレにはギョッとしましたけど…最初の夫も江戸時代の鉄砲衆のコスプレが好きだったから、特に気にしなかった」
大家さんは話好きだ。鍵を開けてくれる。
「絵が上手だな」
「ほとんどコミックばかりですょ」
「初期の小澤サドルみたいだ」
ココでラギィが意外な発言。
「いつのサドル?808時代?青7時代?」
「すごくセクシーな発言だ。潜水艦コミックに興味が?」
「テリィたん。私を知った気になるのは、まだ100年早いわ。貴方は、私について何も知らない」
そーカモ…黒い画帳を見つける。
「おい見ろよ。劇画も描いてるぞ」
「なかなか才能があるわ。彼女の家族については?何か聞いてますか?」
「聞いてないわ。なんていうか、一匹狼って言う印象だったし。昼間はデザイン学校に通ってたから、余り顔を合わせる機会もなかったの」
画帳のページを繰りながらラギィがつぶやく。
「学校に聞けば、クロウの親族に会えそうね…大家さん、彼女が友達を連れて来たコトはありますか?」
「女の子を何度か見たわ。彼女は仲間よ。笑った時に牙が見えたから…でも、先日2人で大喧嘩して、彼女は大声で怒鳴って帰って行った」
「どんな子でしたか?」
記憶力が良いのか大家さんはスラスラ答える。
「腰までの長い黒髪」
「長い黒髪?名前は?もしかして…南沙織?」
「誰ソレ?美味しいの?でも、その筋では有名な人みたいよ。何でも彼女のサイトがあるって話だし」
今どきSNSは珍しくもナイ。
「PCのブラウザ履歴を見てみよう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"vampire lovers net."だw
「本物なの?いや、胸じゃなくて牙ょ」
「彼女はヴィセ・クイン。"淫らな集い"の主宰者だって!マリレ、こーゆーの詳しいでしょ?」
「私、ナチじゃナイから!でも、いわゆる教会の活動や、クラブみたいなモノょ。ゴルフ好きは一緒にプレイするでしょ?みんなで集まって血を吸うフリして楽しむの」
全員ドン引き。あ、ヲタッキーズのエアリとマリレが参戦し場は華やかだ。彼女達はメイド服。ココはアキバだからね。
「え。何で?元カレがこの手のヒトで…」
「血も涙もなくフッたンだな?」
「テリィたん、お上手!」
僕とエアリはハイタッチ。
「でも、別れたの。棺の中でセックスを求められたから」←
「…ヴィセ・クイン女王様の連絡先は?」
「メアドだけね。でも"淫らな集い"は今夜だし…ああん、こっから先はパスワードが必要だわ!」
「マリレ、元カレに聞けょ」
「ムリ。もう1年ぐらい会ってナイの…え?」
みんなに睨まれる。僕はスマホを渡す。
「聞くだけょ。棺で寝ないから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
赤いライトのパーティルームのアチコチで、吸血鬼コスプレの男女が血を吸い合う仕草を繰り返す。
神田リバー沿いの古いホテル。踏み込んだラギィにシャアーと息を吐きながら迫る吸血鬼。僕には…
女吸血鬼達が群がって来る。ブラボー!
「ん?ノンケはお断りだ」
銀髪の吸血鬼?に警察バッジを見せるラギィ。
「ヴィセ・クインは何処?」
銀髪は、急に白けた顔になると奥を指差す。その指の先で女が寝そべり、他の女が覆い被さり、血を吸い合ってる?
ホントにコレはジェスチャなのか?まさか…くわえていた女の手首を離し、僕達にシャアーと息を吐きかけ微笑む。
ヴィセ・クインだ。
第2章 狼女達の晩夏
「すべてのプレイは合法ょ」
「聞きたいのはソレじゃないの。マシュ・フリマを知ってる?」
「誰?美味しいの?」
"翻訳"する僕。
「"クロウ"だょ銀髪の」
「クロウ?彼女、何か問題でも?」
「殺された。墓地で心臓に杭を打ち込まれて」
大笑いスル女王様。
「悪い冗談はヤメて。私達のコト、馬鹿にしてる?」
「残念だけど事実ょ」
「リアル?ウソォ!一体誰がそんなコトを!」
割と普通のオバさん系リアクションw
「ソレはコッチのセリフょ。ヴィセ・クイン、昨夜の11時から0時の間何をしてましたか?」
「ココにいたわ。私が犯人だと?」
「杭に人工の黒いカビが付着していた。彼女の太ももには噛み跡があった」
ちょっち追い込みをかけるw
「私じゃないわ。殺してない。だって…百合の1人だもの」
「おいおい自白したよーなモンだ。愛憎の果てにって奴?古今東西、殺しの動機ナンバーワンだぜ」
「待って」
「待つわ。昨日は彼女と会った?」
「3時半に彼女は帰った。あぁナンてコト!」
「2人は口論してたと言う情報もゲットしてルンだが」
「ソレは!…彼女が浮気してたからよ。でも、仲直りして2人でプレイした。だから、その時の髪がついた」
百合不倫、サレ女王、仲直り…理路整然と弁明スル女王様w
「百合不倫の相手は誰?」
「デモン・ピクル。クロウに劇画を描くよう説得した男…」
「リアル男?ソレとも"タチ"?」
イライラと首を振るヴィセ。
「リアル。死んだのは奴のせいょ。東秋葉原に住む吸血鬼だけど、モデルはNYに実在する。とても危険な人物なの。百合の強敵だわ」
「え。百合専門のリアル吸血鬼?」
「自称ょ。本名はモガン・ロカビ。彼は、この集いの創立メンバーでもアル。でも、何かあって、頭がおかしくなっちゃって、ホントに自分がリアル吸血鬼だと思い込んでる。今は夜になると墓地を歩き回ったりしてる。普通じゃない。イカレてるけど…馬鹿テクなの」←
ほおを染めるヴィセ。意外に乙女w
「で、彼は今どこに?」
「馬鹿テクってドンなんだ?」
「アイツ、私じゃなくてクロウを選んだの!本名ナンて知らないわシャー」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ゆるふわ百合カップル(吸血鬼だけどw)を次々と毒牙にかけたデモン・ピクル、またの名をモガン・ロカビめ、許せん!
しかし、馬鹿テクって…(以下省略w)
「私、理解出来ないわ。吸血鬼のコスプレで集まったり血を吸ったり。吸血鬼の行動をマネるのは、結局は百合のため?」
「男女のカップルも多いから…中年カップルの倦怠期対策の線もあるンじゃナイか。いずれにせょ、大した意味があるワケじゃない。そーゆー人は変わってて、結局は、社会の中で自分の居場所を探してるだけナンだ」
「つまり…ヲタクってコト?なら、わかるの。でも、死に対する異常な関心は何?血を吸ったり、棺でセックスとかも理解出来ないわ」
昔は、メイド服を着るだけで十分変人だったがなw
「心理学的には、こんな感じかな?例えば、幼少期にペットの交通事故を目撃したり、家族の葬儀でリアル遺体を見たり。または、身近なリアル友達や親が亡くなったとか。そのトラウマから吸血鬼に走る者もいれば、警察官になる者もいる」
「じゃあテリィたんの(スーパーヒロインのw)死に対する関心はどこから?」
「テリィたん!」
答えに詰まるトコロでヲタッキーズが捜査本部に帰還。
「クロウことマシュの家族の住所をデザイン学校が開示したわ。青森県の三八上北。電話番号はコレ。クラブの方はどーだった?」
「モガン・ロカビを調べて。因みにバンパイヤとしてのネームは、デモン・ピクセ」
「どっちが本名?」
「両方ともニセモノかも…何?ヲタッキーズでしょ?ちゃんと調べて」
デモンのネームカードを手に困惑顔で出撃するメイド達。
「ラギィ、大丈夫か?」
「嫌な仕事だけど…遺族に電話をかけなきゃ」
「僕もそばにいようか?」
「no thank you。1人の方が気が楽だから」
「そっか」
立ち上がる僕。ラギィは電話をかける。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局、マシュの家族、フリマ一家は、青森から地底超特急で上京、新末広町ステーションからアキバ入りして万世橋へ。
「フリマさん、犯人の心当たりは?」
「全くナイわ。ただ、我が子ながら、秘密の多い子でした。例の仲間達については、私達はよく存じません」
「あんな連中と一緒だったとは。私が止めていれば」
実直そうな夫婦だ。奥さんのジャニが少し出しゃばり?
「お嬢さんは、デザイン学校を卒業しましたか?」
「いいえ。退学したわ」
「最後にお嬢さんに会ったのは、いつですか?」
引き続きジャニが答える。夫のアラムは口を挟めないw
「そりゃ何ヶ月も前ょ。その時には、もうクロウだった。黒ずくめの服装で青森に帰って来た。腕には骸骨のタトゥ。アイライナー。それに牙もしてたの!」
「あの時、もっと強く私が止めておけば…」
「ホラ!昔はあの子も普通の子だったじゃナイ?でも、アートに夢中になってから、急に気難しくなった。そして、あの連中とつるむようになったのょ!2〜3日前にも、泣きながら電話してきた。とても動揺した様子だったけど、結局、理由はわからずじまい!」
やっと一言挟むアラム。
「私も辛い」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
引き続き、万世橋の捜査本部。
「で、ヲタッキーズ。進展は?」
「ラギィ、残念ながらヴィセ女王様はシロね。アリバイは成立。吸血鬼仲間やサイトも確認済み」
「マジ?ルイナ、絶倫モガン・ロカビは?」
いつの間にか絶倫になってるw
「精神疾患を持つ35才。長く浅草橋の精神医療センターに収容されてたけど、移転問題のドサクサに紛れて脱走、以来誰も見てナイ。住所は空欄。追跡不可能ょ…あら?テリィたんは?」
「さぁ。証拠品を漁ってルンじゃナイの?何で?」
「行くんでしょ?」
メイド服のママ異様に顔を近づけるエアリ。
「(ち、近い!)どこへ?」
「"潜り酒場"のハロウィンパーティょ」
「考え中。貴女達は?」
何を馬鹿なコト聞くの?って顔のエアリ。
「行くニ決まってるわよっ!」
「コスプレは(まぁ今のママでもメイドだけど!)?」
「知りたいなら是非来て。乞う御期待ょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラギィのデスクに靴を載せ、ふんぞりかえって劇画を見てたら、彼女の柔らかいお尻で叩き落とされ、つんのめるw
「御熱心ね」
「クロウの劇画、かなり面白いょ」
「モガン・ロカビもシロだった」
ファイルを見せ、溜め息つくラギィ。
「おや?劇画に出て来る"モロク"にソックリだ。ほらほら。このページだょ」
「あら!ヴィセが言ってた"絶倫男"が劇画に登場?」
「ん?ラギィ、さくらんぼの香りだ」
鼻と鼻が触れそうな距離にラギィの顔w
「テリィたん!指紋が…あ、あら?」
慌てて離れる。髪の毛を撫でるラギィw
「も、もしかして、お邪魔かしら?」
「とんでもない!」
「全くだ!」
後ろの2つは異口異音。気を取り直してラギィ。
「で、エアリ。指紋がどーしたの?」
「クロウの胸の谷間に刺さってた杭についてた指紋だけど、ヴィセの推測通り…」
「モガン・ロカビね?」
マリレが続ける。
「YES。でも、探すのは不可能ょ。住所も電話番号もわからないわ」
「うーん可能カモしれない。ほら、劇画のこのページ」
「あら。神田北乗物町と神田紺屋町の角だわ」
背景に落描きのある壁が描かれたページを指差す。
「劇画だと、ココがモロクの隠れ家ナンだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
劇画コミックを広げたママ現場に出ると、何と全く同じ落描きの壁がアル。
摩天楼の谷底のサニーサイド。古い舗装が剥がれ、雑草が生い茂っている。
「この廃ビルだ!」
僕が、入口の階段を駆け上がろうとスルと、ラギィとヲタッキーズが引きずり下ろす。
文句を口にスル間も無くラギィがライトと音波銃を構えて突入。ヲタッキーズが続くw
「コッチだ!」
劇画コミックを手に後ろから指図スル僕。すると…
「何コレ?ウッソォ!」
「マジなの?」
「劇画通りの展開だ!」
蝋燭が灯された暗闇の中に何と"棺"が置いてあるw
「冗談でしょ?モガン・ロカビはこの中?」
「吸血鬼なら…確かに日中は棺の中で寝てるカモ」
「テリィたん、援護するわ!」
音波銃を構えるラギィw
「お、おい!一緒に開けようょ!」
「そ、そうね。3つ数えるわ。3、2、1…」
「わ!」「ぎゃ!」「神様!」
2人?でフタを開けたら…棺の中は空っぽだw
「空っぽょ!なーんだ」
「私達、ビビり過ぎたわ」
「女々しいぞ!」←
突然、屋上から黒い人影が僕の首筋目掛け飛びつく!僕は振り解こうと暴れるが、絶対に離れない!首筋に冷たい感触w
「おろせ!外せ!」
「離れなさい!さもなくばテリィたんごと射殺スル!」←
「噛まれた!僕は噛まれたぞ!」
その時、摩天楼の谷間を黄金色に染める黄昏が一閃、割れた窓から差して男?の顔を照らす。
すると、男?は泣き叫び、のたうち両手で顔を覆うが、その顔面は見る見る焼け爛れて逝くw
「リアル吸血鬼…なの?」
音波銃を構えたママ、呆然と立ちすくむラギィ。
第3章 黄昏の狼女
何事かブツブツと呟きながら留置場に入れられる男。
「彼は吸血鬼じゃなかった。因みに"blood type RED"」
「でも、日光を浴びて火傷を負ったぜ?」
「吸血鬼病とも呼ばれたポルフィリン症。光に対する過敏な反応は、その症状の1つ。光を浴びると水泡ができ、精神疾患の症状が出るコトも。さらに、他に幻覚や妄想の症状を来すコトもアルわ。つまり、精神性疾患の患者ってワケ」
僕のタブレットから解説してくれるのは、医師免許も持つ超天才のルイナ。大統領補佐官の激務の合間をぬってヘルプ。
「伝染性の疾患かな?」
「遺伝性疾患。テリィたんの首筋には、大量の抗生物質を塗ったみたいだから、もう大丈夫。他に質問がなければ大統領府に戻っても良い?イスラエルとハマスの軍事衝突が深刻で…」
「ありがとうDr.ルイナ。噛まれたテリィたんがピーピーとうるさかったでしょ」
タブレットのルイナは微笑し離脱。僕はぼやく。
「吸血鬼はもうこりごりだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の留置所。
「来るぞ。奴が来る。急げ」
「モガン・ロカビ。貴方、クロウを知ってる?」
「あの恐ろしい女め。斑点だらけだ。斑点だらけ!」
ラギィの質問に意味不明な応えw
「ロカビ。貴方はクロウと一緒に墓地に行った?」
「辺りが血だらけだ。そこら中が血の海だった。わー」
「クロウは殺されたの。わかる?クロウと墓地に行ったでしょ?彼女を刺した杭に貴方の指紋があったの」
全く意に介さないロカビ。
「猫が鴉を殺す。お前も埋めるべきだった」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
続いて万世橋の捜査本部。
「ロカビの公選弁護人にアドバイスだ。心神喪失を主張しろ。あの状況じゃ罪には問えない」
「精神科医ならロカビの言葉を解読出来るカモ」
「無理でしょ」
ラギィと話してたら彼女のスマホが鳴動。
「ラギィ…わかった。ありがとう。ラボから報告ょ。杭についてたシミは墨汁だって。きっとゴミを漁ってて手についたのね」
「墨汁だって?墨汁って古代は"マシ"と呼ばれ、紀元前4世紀から使われてる。耐水性があり、重ね塗りをしても滲まない。それでコミックの文字入れに使われるようになった。多分クロウはコミックの絵描きで…」
「ロカビが文字入れを?でも、なぜ杭に指紋が?」
作風の対立で喧嘩でもしたのか?
「そこだょな。謎だ」
「エアリ、ロカビの身元捜査は?」
「今、やってるわ。テリィたんも手伝って!」
ヲタッキーズは、僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団で、民間軍事会社の形態をとっている。僕はCEO。
「おいおい。仮にも僕はCEOだぜ?ソレに…あ、マズい!カボチャをくりぬく時間だ。オーランタン作らなきゃ!」
肩をスボめ天を仰ぐメイド達。フランス人みたいだw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラ居心地良くて常連が沈殿。客の回転率急降下で頭が痛い。
で、今は営業そっちのけでカボチャくりぬいてるしw
「テリィたん!ソッチのカボチャは順調?」
「概ねな、スピア。カボチャ彫りのコツは余白を理解するコトにアルんだ」
「あえて見えないモノに目を向けろって?」
僕は目を細める。片手にカボチャをくり抜く電動ドリルw
「良い生徒だ」
「あら、御屋敷の巨匠さん方。今年はどんなジャックオランタンをお作りですか?」
「ミユリ姉様。私は、伝統的な怖い顔のカボチャのお化け」
ミユリさんだ。ハッカーのスピアがカボチャを見せる。
「僕のは"吸血鬼ノスフェラトゥ"のワンシーンだ」
「姉様。テリィたんは仕事で吸血鬼にハマってるの…ソレと吸血鬼に噛まれたせいカモ」
「うぅ古傷が…」
首に手をやる僕←
「やっぱりテリィ様は役者になるべきでしたね?」
「姉様も一緒に作らない?」
「今からメイド組合の寄合いなの」
着ていた黒ガウンの前をはだけると…スンゴイ胸の谷間w
「姉様すごーい!どーしちゃったの?テリィたんと倦怠期?」
「今、解消されたトコロだ!」←
「またまた嬉しいコトを…で、もう頼んだの?」
僕の大好き女子2名がカウンターを挟んで密談w
「未だょタイミングを計っているの」
「待てょ何の話だ?」
「"チョベリバ"のハロウィンイベントの日、お出掛けしても良い?太客から同伴に誘われてるの」
ハッカーのスピアは、暇な夜は東秋葉原のスクールキャバの老舗でバイトしている。僕も同店の"学級委員"だ。
「ヘルプだろ?良く太客なんかついたな」
「スク水効果ょ。ねぇ行っても良いでしょ?」
「うーん仮にもスピアは僕の"元カノ会"の会長だ。軽はずみな行動は謹んで欲しいが…」
カウンターの中からミユリさんの援護射撃。
「テリィ様。逝かせてあげて。スピアは、テリィ様より遥かに大人です」
「そっか。でも、何か居心地悪いと感じたら、直ぐSOSだ。何があろうと僕は絶対に元カノを責めたりしない。だから、必ず連絡スルんだぞ」
「約束スルわ。でも、何も起きないし…それと、実はもう1つお願いが」
出た。何だょ?
「お手柔らかにプリーズ」
「フェイギンの子守」
「え。孵化させるのか?」
スピアは、卵を差し出す。
「まさか。でも、パートナーのペィジも"同伴に同伴"だから育児放棄になってしまう。子守が必要なの。お願い!」
僕は、メイド長を見る。
「私はメイド組合の予定が…」
「わかったょ任せろ。赤ちゃん卵の面倒は僕が見る。でも、シングルファーザーとは呼ばせないぞ。だから、太客によく言っておけ。何かスピアに悪さをしたら、アキバのヲタクが黙ってないとね」
電動ドリルを顔の横に持って来てスイッチオン。不気味に高笑いしたら、頭を抱えるスピア。溜め息をつくミユリさん。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
精神科医を留置所に連れ込むラギィ。
「Dr.ホロイ。叫んだり暴れたりはナイけど、何かを知ってそうなの」
「体当たりして来るのは、何かの意思表示かもしれませんね、ラギィ警部。完全に心神喪失してるように見えて、フト正気に戻る瞬間がアル。妄想と現実の区別が出来ていないようだ」
「コレ、彼の影響を受けた被害者が描いた絵ナンだけど、コレからロカビについて、何かわかる点は?」
渡された"高くて薄い本"をパラパラと見るホロイ医師。
「も少し丁寧に見てみないと何とも言えませんねぇ。ただ気になるのはこの女性です」
"高くて薄い本"の1ページを指差す。天使?使徒?
「と言うと?」
「天使として描かれているが、常に背景は暴力的な構図です。恐らく作者は、この天使として描かれている女性について、過去にトラウマを持ってますね」
「出たぁトラウマ!やっぱり万事トラウマだょな!」
ココから僕が合流。
「Dr.ホロイ。彼はテリィたん。顧問です(違うけどw)」
「どうも。顧問のテリィです(違うけどw)」
「はじめまして。Dr.ホロイです」
僕はラギィの肩に卵のフェイギンを載せ挨拶させる。
「フェイギン、センセにご挨拶は?…こんにちはDr.」
ドン引きとする精神科医。ジョークなんだが…
「実は、ロカビ氏を引き取るよう、精神医療センターのスタッフに連絡しましたが、この方のコトも頼みましょうか?」
「この方は…間に合ってます、一応。テリィたん、その卵は食用?吸血鬼に噛まれてどうかなっちゃったの?」
「"チョベリバ"のハロウィンイベントで出た課題さ。キャバ嬢に多いシングルマザーの現実を体験させようとしてるらしい。今夜は太客の同伴に逝くからベビーシッターを任されたワケ」
「え。太客の同伴?」
ワケ知り顔のラギィだが、ココでスマホ鳴動。
「はい。ラギィ」
「警部?ヲタッキーズょ。デモンの住所が割れて、今、アパートに来てる。浅草芝崎町」
「芝崎?東秋葉原のお隣じゃナイの」
その時、エアリとマリレは"死体"を見下ろしているw
「ソレが…来たら驚きなの。彼女、死んでる。胸の谷間を撃たれて家は荒らされてるわ。ソレと…彼女は狼男、いいえ、狼女だった」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
浅草芝崎町の安アパート。
「銀の銃弾か?」
「いいえ。9ミリHzの音波銃」
「何だ。ニセ狼男か…いや、ニセ狼女」
エアリ&マリレから状況を聞く。何とデモンは"女"←
「人工毛を瞬間接着剤で顔と手につけてる。ほら、この通りハロウィンの仮装ね。SFXレベル」
「免許証によると本名はジョス・ウスフ。デモンの本名ょ。モガン・ロカビも偽名だった。アキバ大の大学院生で法医人類学を専攻」
「だから、骨があるのか」
北京原人?の頭蓋骨のレプリカに触れてみる。
「テリィたん、触らないで!現場を荒らしちゃダメょ」
「はーい」
「近所の聞き込みをしたら、数日前不審な破裂音がしたらしいの。遺体の腐敗と腐ったタイ料理の臭いから、クロウが殺された数時間前に殺されたと思う」
なかなかの"鑑識眼"を披露するエアリ。
「エアリ。そのタイ料理店を調べて、配達した時間を聞いて。あと配達の時に部屋に誰がいたかもね」
指示を飛ばしながら、ラギィはテーブルの上の"アバターになりきろう"という文字が踊るパーティのチラシに見入る。
「10月27日?クロウ殺害の日だわ。ココに行こうとしてたのね?何かつながりがありそう」
「クロウ殺しの犯人もココにいたのかな?」
「何かを探していたのかしら」
ラギィが手近な箱を開けると中から"杭"が出てくる。
「げ。何なのコレ。クロウを杭で刺したのは、やはりロカビなの?揉み合ってインクの瓶が割れたとか…」
「違うわ。彼が殺されたのは昼間よ。"モロク"ならカリカリに焦げちゃうわ」
「では、クロウを殺してない?となると、なぜ杭に指紋がついてたのかしら」
全員で頭をヒネる。僕のjustアイデア。
「ひょっとしてクロウを助けようとして指紋がついたのかな。死亡時刻は何時だっけ?」
「倒れた時に腕時計が壊れてる。27日の4時みたい」
「モロクでないなら、犯人は誰?探し物は何?」
「とりあえず、被害者が隠してたモノはコレかもな」
テーブルの裏にテープで止めた封筒を見つける僕。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「ジョス・ウスフ。法医人類学の修士取得まで、あと一歩だった。僕も子供の頃、よく骨を集めたな」
「テリィたんは、過去に何があったの?ねぇ教えて。なぜ殺人に興味を?死体を見たとか?」
「そういえば、スピアはいつ帰るのかな?フェイギンは親と離されトラウマになりそうだ」
僕の過去に迫ろうとするラギィ。
「ごまかさないで教えて!私の過去は色々とほじくり返したくせに」
「いや、単なる新作のためのリサーチだ。僕としては…アレ?コレ見ろょ。2年前の記事だ。港区白金の自然教育園で女性の殺害遺体を発掘。捜査当局は、埋められたのは何年も前だと推測」
「ソレが?何でソンな記事がファイルされてるの?」
僕が見ている新聞の切り抜きを覗き込むラギィ。
「復顔術で、遺体から被害者の顔を再現した。ソレがこの写真だけど…クロウの劇画に"死の天使"として何度も登場するキャラだ」
「クロウはデモンのリサーチ対象に興味があった。でも、なぜ隠すの?」
「殺されるほどヤバいコトだからだ。ホラ、ココにサインがアル。この絵は4年前に描かれてる」
2019年4月と記されたクロウのサインを指差す僕。
「あり得ないわ。遺体が発掘されたのは2年前ょ?」
「確かクロウは"blood type BLUE"でスーパーヒロインに覚醒した腐女子だったょな?彼女のパワーは地中の死体を透視スル霊能者だったとか?」
「もっとシンプルに、単純にその女性を知ってたかだ」
スマホが鳴る。
「あれ?スピアからだ…同伴は順調か?」
「ソレがテリィたん、相棒のペィジが大変なの。お酒が入ったパンチを大量に飲んだみたいで」
「同伴でパンチ?とにかく、すぐ行く!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
意識不明のワンダーウーマンを抱き抱え御帰宅スル僕。大好きなレトロフューチャーな絵柄…あ、あれ?パンダなのか?
「タイヘン。大丈夫?」
「ミユリ姉様、ごめんなさい!同伴とか言いながら、実はコスプレ乱交パーティのコンパニオンのバイトだったの。王様ゲームで飲まされちゃって。私は止めたんだけど」
「コス乱交?とりあえず、ミユリさん水を頼む」
泥酔した"パンダーウーマン"を御屋敷で介抱w
「ほっといてクラハイ!」
「吐いたり気絶したりはしてないか?」
「してないわ」
ソファに寝かせる。
「彼女のTOに連絡スル」
「ヤメレクラハイ。叱られちゃう。今夜は泊まらせてクラハイ。フォネガイれす」
「あ…(意識が)飛んだ」
意識を失うペィジこと"パンダーウーマン"。
「彼女、なんだって?」
「ロレツが回ってない。多分"TOに電話しないで。今夜泊まらせてください"だと思うけど。テリィたん、どうしても連絡する?」
「もちろんだ。連絡先を教えて」
「ものすごく叱られるし、もしかしたら"推し変"されちゃうカモ」
「コス乱交のバイトだろ?どっちにせよ"担替"だ」
唇を真一文字に結び、意を決したスピアは、スマホを取り出しペィジのTOに電話スル。目の前のミユリさんは溜め息。
「とりあえず、水を飲ませろ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝。朝焼けに染まる"秋葉原マンハッタン"。
「マシュが"アドラ"と呼んでたキャラょ。あの子は何年も前から描いてたわ」
「誰ですか」
「さぁ?妄想の産物でしょ」
捜査本部の会議室。またまたフリマ一家が集合。
「姉は自分だけの霊だと言ってました。夢にも悪夢にも現れるって」
「この女性は妄想の産物ではありません。実在しました。ホントに見覚えありませんか?近所の人とか何かのセンセとか?」
切り抜き記事とか被害者の顔を再現した画像たかを見せる。
「全く見たコトがありません」←
キッパリと言い切るジャニ・フリマ。
「マシュに子供の頃のトラウマはありましたか?」
「と言うと?」
「このコミック画を精神科医に見せたら、作者は子供の頃に何かショッキングな光景を見たのではないかと。暴力的なコトとか、恐ろしいモノとか」
「思い当たるようなコトは何もありません」←
またまた断言だ。唇を噛むラギィ。
「他にも彼女が描いた絵はありませんか?」
「全て秋葉原へ持って行きました」
「デザイン学校を受ける時に提出した作品集に何枚か入っているかも。姉は大事な絵は全部そこに入れていました」
家族の中では妹が1番彼女を理解しているよーだ。
「ありがとうロズィ。見てみるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部にエアリとマリレのメイド2人組が帰って来る。
「あら?テリィたんは?」
「まだょ。昨日遅かったみたい。何か?」
「地元の警察に、例の女性について聞いてみた。すると、彼女についての質問はこの2週間で2人目だと言われたわ」
2人目?
「あら。1人目は誰かしら」
「ジョス・ウスフ」
「デモン・ピクセ?!」
クロウをそそのかした(絶倫w)男だ←
「当時の鑑識に聞いたら、どうやら彼女は18年前に心臓を撃たれて殺されたらしい。しかも、デモンの時と同じ9ミリHz口径の音波銃。そこで2つの音波弾道を分析し、比べてみたら音形が見事に一致した。2人は、間違いなく同じ音波銃で殺されてる」
「18年前の事件を詳しく調べ直して。女性の身元は?」
「確認中。でも、彼女が殺された時、クロウはまだ2才ょ。そんな年で記憶ってある?」
ソレがトラウマって奴だょ。マリレは画集を開く。
「クロウの作品集ね?」
「YES。見せたい絵があるの」
「この絵に見覚えは?」
夕暮れが迫る晩夏の空に向かって伸びる、二股の木の下で女性が胸から血を流して横たわっている絵柄。恐らく…死体?
「新聞記事の切り抜きにあったのと同じ木だわ。女性の遺体が発見された時の写真と同じ構図。夢で見ただけじゃ、こんなに正確には描けない。クロウは…実際に目撃したのね」
「彼女が殺されるのを目撃したとして、彼女は当時いくつ?」
「2才」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「ミユリさんだろ?ドタバタ中にフェイギンの子守をしてくれたのは?」
「YES。お利口さんで楽でした。誰かさんと違って文句も言わずに寝てくれたしクスクス」
「誰のコトだょ…ヲタッキーズ、おかえり。2才のクロウは果たして1人で殺人を目撃したのかな?」
きっと大人が誰かついていたハズだから、18年前のフリマ一家のコトを調べてもらったのだ。ベビーシッターとかさ。
「ソレが…世にも不思議なお話ょ。テリィたんに言われてフリマ家の過去を調べた。そしたら、フリマは継母ジャニの姓だったの。父親のアラムが再婚時に改姓してる。連れ子のマシュも一緒にね」
「へぇ再婚してマスオさんに?何か隠しゴトがありそうだな」
「エアリ、アラム氏の旧姓は?」
ミユリさんが口を挟む。
「マクギ。姉様、確かに隠しゴトはあったの。アラムの最初の妻のエリザだけど、18年前、乙女ロードで行方不明になっている。失踪したママ見つかってないの」
「彼は嘘をついた。娘が誰を描いてたか知っていたのに教えなかった。殺されたのはクロウの実母ょ」
「乙女ロードは遺体が出た秋葉原からも遠くない。車で行けるし」
僕は、さっきから気にかかっているコトを反芻してみる。
「エリザ・マクギ。もしかして、前妻の旧姓はドラデかな?ドラデ…エリザ・ドラデ?!」
「誰ですか?また元カノ?」
「違うょミユリさん。実は、現場に没年が"?"の墓石があったンだ。やっぱり墓地には物語がアル。ミユリさん、僕と物語を紡いでくれないか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ミユリさんと墓地。夕闇迫る頃なので、念のためにムーンライトセレナーダーに変身してもらう。痴漢とか出そうだし←
「ムーンライトセレナーダー、この墓石だ。"エリザ・ドラデ"。墓碑銘は"your family will never forget you"だ」
「テリィ様。献花が未だ新しい。やはりクロウはココに来ていたのですね」
「姉様。管理事務所の記録では、エリザの失踪の5年後に実家のドラデ家が葬儀を行ったそうです」
エアリもマリレも"変身"してついて来るw
「クロウもエリザの事件を調べてた。その中で見た特徴的な"二股の木"にインスパイアされるのは必然ね」
「そして、長年家族がついてきたウソに気づく」
「この花を献花した時に、クロウは父親のアラムを連れて来て責めたのカモしれません」
夕闇にたたずむ僕達を天使の像が見下ろす。
彼女達は、涙を流しているようにも見える。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アキバに開いた"リアルの裂け目"に絡む事件は、全て警察と南秋葉原条約機構との合同捜査が原則だが、今回は例外。
取調室のアラムをムーンライトセレナーダーが取り調べる。
「貴方は、お嬢さんに事実を話さなかった」
「家族を守るためだ」
「いいえ。貴方が守ったのは貴方自身。貴方は妻を殺した後、18年後にそのコトに気づいた娘も殺した…コトの容疑がかけられています」
スーパーヒロインによる取り調べには、弁護士の同席が許されている。また、アラムは対テレパス用ヘッドギアを着用。
「アラム、何も答えなくて良い!答えるな」
「私は犯人呼ばわりされたんだ!確かに言わなかった。当時真実を語るには娘は幼過ぎたからだ」
「何より、貴方は妻殺しの容疑をかけられていた」
アラムは怯まない。
「妻が死ねば、真っ先に疑われるのは夫だ。だが、証拠は出なかった。私は、犯人じゃないから当然だ。その後、幸運にもジャニと再婚出来た。私達は新たなスタートを切るコトが出来たンだ」
「ジャニは、お宅のメイドであり、クロウことマシュのベビーシッターだった。そして、事件後に貴方はメイドと結婚した」
「ジャニは1番辛い時期に私を支えてくれた。マスコミが連日押し掛け、妻探しのチラシ配りで夜も眠れなかった日々に娘のマシュを育ててくれたのはジャニだ」
必死に抗弁するアラム。
「では、なぜ私達にウソをついたのですか?」
「何も知らない娘のロージの前で、そんな話は聞かせられるか!実の姉と慕っていたマシュが亡くなったばかりだぞ!一体どうしろと?」
「真実を語るべきでしょう」
瞬間、絶句したアラムはガックリ肩を落とす。
「マシュが、初めて実母の絵を描いたのは9才の時だった。ソレを見た時には、まるで幽霊かと思ったが、幼い娘の頭の中には、未だ実母が生きていた。だが、1度ついたウソは、時が経ち、現実と化していく。ジャニはジャニで、実母は失踪したとは言えなかった」
「もういいですか、ムーンライトセレナーダー?」
「何言ってるの?これからょ」
依頼人を庇った弁護士を切り捨てるw
「乙女ロードを所管スル東池袋警察が、ジャニの実家で9ミリHz口径の音波銃を見つけたわ」
「馬鹿な!」
「きっとエリザとデモンを撃った音波銃ね。今、音紋と波動を照合中ょ」
アラムは一挙に顔面蒼白だ。
「アラム、何も言うな。答える義務はナイんだ!」
「じゃ黙ってコレも見て。お嬢さんは、実母が殺されるトコロを目撃してる」
「違う。そんなコトはあり得ない。ナゼこんなコトを…」
二股の木の記事の写真とクロウの劇画を見せる。
見比べて呆然となり言葉を失うアラムと弁護士。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
茫然自失のアラムと弁護士を残し取調室を出る。
ジャニ・フリマが突っかかって来る。仕上げだ。
「ねぇスミマセン!何の説明もナシ?いつまで私達を待たせるつもり?」
「ジャニ・フリマさん。未だ捜査中です」
「そうなの…」
廊下で待機していたジャニは、諦めてイスに戻るが、斑点のコートを着ている。斑点だらけ。お前も埋めるべきだった…
「テリィ様。今のはモロクの"つぶやき"ですか?」
「YES。泥酔したペィジと同じで翻訳が必要だけど…ラギィ、モロクは?」
「言われた通り、1番手前の房に入れてアルわ」
僕は、廊下を振り向きジャニに話しかける。
「フリマさん。お待たせして悪いね。あっちに自販機があります。こっち。そこを左に入って」
制服警官がゲートを開けてくれる。
「こっちだ。そこを左に入って…真っ直ぐそのまま…あ、間違えた」
次の瞬間、モロクが唸り声を上げ襲いかかり鉄格子に激突!
「恐ろしい女め!斑点がクロウを…人殺し!」
「許してぇ!」
「おや、知り合いか?」
恐怖に半狂乱となるジャニ。モロクが吠える。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室。僕は紙コップ入りのコーヒーを手渡す。
「…なぜだ」
「貴方を奪うため、ジャニは貴方の前妻エリザを殺した。ソレを隠そうと娘のマシュも、マシュの友人のデモンも殺した。デモンは、マシュが誰も信用出来ズに証拠を預けてたばかりに殺された。でも、ジャニは、いつか犯行がバレるのを恐れ、家まで追いかけてデモンを射殺した。昔、エリザを撃ったのと同じ音波銃で」
「マシュは?」
絞り出すようなアラムの声。
「あの日、マシュは実母の墓石に向かってた。花を供えようと…一方、ジャニはデモン殺害の後で杭を見て思いついた。貴方が日頃毛嫌いしている吸血鬼連中に罪を着せるコトをね」
「ジャニはマシュを育てたんだ。モノホンの母親のように」
「しかし、マシュがいる限り、ジャニは罪を忘れられない。そう考えた時、ジャニはもはや母親ではなくなっていた」
泣き崩れるアラム。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
会議室から憔悴し切ったアラムが出て来る。
「パパ!」
ロズィとアラムは抱き合う。傍らで立ちすくむ弁護士。
「大丈夫だ。大丈夫だょ」
父と娘は出て逝く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
解散が決まり、後片付けが始まった捜査本部。
「妹のロズィ、心配だわ」
「しばらくは辛いだろうな。でも、やがてコレも人生の1部と思える日が来る。その時、彼女は作家になってるカモ」
「あら。警官カモしれないわ」
ラギィのデスクのサイドに座る。
「ところで、なぜテリィたんが殺人に興味を持つようになったか、未だ聞いてないけど」
「アレは5才の夏、家族でお台場に行って、僕は結構1人で自由に遊んでた。ある日、色々と歩いていると、かなり遠くまで来てしまった。すると、何かが波に打ち上げられているのが見えたんだ。クジラか亀かと思って、走って近寄った」
「そしたら何だった?」
身を乗り出すラギィ。
「男の子さ。同い年の。メイドの子供だった。何かが起きたばかりで生々しく血がべっとり残ってた。前日に缶蹴りをして遊んだばかりなのに」
「なぜ死んだの?」
「わからなかった…なんちゃって!」
一瞬で鬼の形相になるラギィw
「作り話?」
「僕はプロだぜ?」
「絶対リベンジょ!覚悟して!」
僕は立ち上がり、ラギィの猫パンチを避けるw
「今宵のハロウィンパーティは9時からだ!ラギィのコスプレ、楽しみにしてるょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局"江戸川乱歩"のコスプレだ。ところが…
「どうした?コスプレしないの?」
「今宵は遠慮しとく。パーティの気分じゃナイの」
「どーした?」
ソファでスピアがショゲてる。椅子を引き寄せ正面に座る。
「テリィたん。ペィジが卵を潰した。もうすぐ孵化したのに。私に怒ってのコトだわ。ワザとじゃないと言ってるけど、私に仕返しをしたのょ」
「ペィジのためにやったコトが全て裏目に出たか」
「あんなに世話したのに…なぜソンなコトが出来るの?」
ミユリさんの前だが…スピアをハグw
「さぁ。でも、そーゆーコトが知りたくて、僕は小説家になったんだ。人間は互いに理解出来ないような行動をとる。だが、忘れるな。何があっても、僕はヲタ友を守る。守り続ける」
「元カノが乱交コスパのコンパニオンをしてても?」
「たとえ…街を去ってもね。さ、コスプレしておいで。永遠のスク水ガール」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ハロウィンパーティが始まる。クレオパトラやフランケンシュタインが闊歩スル会場で、僕の漢字系コスプレは大ウケ。
「今宵は僕が調合したスペシャルドリンクを楽しんでくれ。飲めば飲むほど別の生き物に変身してしまう。そして…服を脱ぎ捨て踊りたくなるのだ(高笑いw)!」
「あら。私好みのドリンクね!じゃ」
「わ。脱ぐなょ未だ」←
血染めの手術着に白衣のスピアがパラリと脱ぐと…スク水w
「ミユリさーん!ラギィを見なかった?」
「さっき、仕事が残ってて来られるかわからないって…」
「おまちどおさま!」
ラギィは…真っ黒なロングコート?ゲシュタポ?
「コスプレは?」
「ガッカリさせてゴメンね」
「コスプレは必須だ。ちょっち怖い格好で来てくれょ」
口を尖らせる僕に、流し目でコートのベルトに手をかける…
「怖くは無いけど、セクシーで」
え。まさか…思わズ息を飲んだ僕にバネ仕掛けの猫パンチ!
「やったー!」
「おい!セクシー過ぎて鳥肌だぞ!」
「キャーハハハ…」
ハロウィンの夜にラギィの高笑いが響き渡る。
「私のビキニ浴衣も見て、テリィ様」
「しかし、デモンの馬鹿テクってどんなんだろう?」
「テリィ様は今のテクで十分です」←
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"ハロウィン"をテーマに、謎の墓碑銘と共に葬られた女、吸血鬼コスプレで殺された女、女を唆すヲタク、牙師、女王様、メイド、狼女、連続殺人犯を追うヲタッキーズ、超天才や相棒のハッカー、敏腕警部などが登場しました。
さらに、被害者の心に刻まれたトラウマ、吸血鬼愛好家の世界などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、ハロウィン気分のインバウンドでにぎわう秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。