2011年5月8日⑩ 許す者
2011年5月8日 午後10時50分
《YOU WIN》と画面に表示がでた。「お~勝った!」
《倒した相手をどうしますか?》
・とどめをさす・身ぐるみを剥ぐ・捕える・何もしない・
(本来なら頭刺したら死んでるはずだけど・・ここら辺はリアルじゃないな・・)そう思いつつコマンドを見て、
捕えるってなんだ・・と思った裕太はすぐに100ページはあろうかという分厚い説明書をパラパラとめくりはじめた。
[男性キャラクターの場合、奴隷船や奴隷兵として、女性キャラクターの場合は娼館に売ることができます]
なるほど・・人身売買ってやつね、少しはお金が増えそうだな・・
で・・とりあえず身ぐるみを剥ぐを選ぶと、相手の装備品と所持アイテムそして所持金が表示された。
《装備》
鉄の剣
布の服
《所持アイテム》
薬草
《所持金》
2303ジスパ
「ふ~ん23万円くらいか・・装備品はたいしていいもの持ってないな」
(しかし、凄いゲームだな23万円奪えて、現実世界で換金もできるんだから・・)裕太は思った。
「た、助けてくれ」倒した相手プレイヤーが言葉を発してきた。地面に頭をつけて深く土下座をしている。「この通りだ頼む・・・・」
「まいっか・・あんた壁にぶつかったんだろ。そんな負け方、不本意だよね。まあ、次からは注意するんだな!」裕太はそういって《なにもしない》を選択した。
「あ、ありがとう」勇者風のプレイヤーは裕太にお礼を言った。「あ、あの・・」
「ん!なに?また闘るの?」裕太は相手を見て言った。
「あ、いえ。よかったら仲間にしてくれませんか?」勇者は言った。
「仲間か・・まあ、めんどくさいからいいや!とりあえず一人でいろいろ動きたいからさ」
「そんなこと、言わずに兄貴ぃ」
「兄貴ってなんだよ。」
「いいじゃないですか兄貴ぃ、兄貴は命の恩人っす。折角貯めたバイト代で何とかこのゲーム買って、貯金を全部、ゲームのお金に換金してたんです。これ取られたらもう俺の人生終わるとこだったっすよ」
「おいおい!お前バカか?全財産持ってるのに、人に喧嘩なんか売るなよ!早死にするぞ!」
「ハイ・・反省してます」
「じゃあな!」裕太はそういってバトルモードを終了した。
PC画面に戻るとさっきの勇者風のキャラクターがついてくる。
「おい、仲間にしないって言っただろ?」チャットで話しかけた。
「あ、いえ気にしないでください。勝手に付いて行ってるだけなんで・・とりあえず名前は[ヒサシ]といいます!よろしくお願いします」
「勝手にしろ!」ちょっと嫌な顔をした裕太はそう言い放った。