2011年5月8日⑦ 情報通
2011年5月8日 午後10時17分
相良晋吾は絵栗珠からの電話にすぐに出た。
「もしもし、絵栗珠?」
「あっ、相良君!繋がった!どう?最強のニート決定戦は?2次試験が終わったっていう情報が入ってきたんだけど・・」
「どこで、そういう情報が手に入るわけ?」晋吾は不思議そうに質問した。
「まあまあ、そういう細かいことはいいから」絵栗珠はさりげなく話題を逸らす。
「で?今はゆっくりしているところかな?」
「そうしたいんだけどね・・どうもそうさせてくれないみたいだぜ。」
「どういうこと?」絵栗珠は疑問の声を発した。
「もう始まってるんだ。三次試験・・」
「ええええ。それはきついね。やっぱりこのテレビ番組でなくてよかったぁ。私だったら絶対死んじゃう」
「おいおい、自分で出場させておいて。その言い方は冷たいな。絵栗珠」
「あははは、怒った?相良君?」
「いやいや、怒ってないけどさ」
「まあ、相良君なら、二次試験ぐらい全然、楽勝だったでしょ?」
「確かに・・もう少し、難関だと思ってたけどね。」
「でも三次試験からは大分、人数が絞られてきたんじゃないかな」
「そうだな・・80人って言ってたな。2次試験突破者は・・」
「80人かぁ・・あのね、相良君!その80人の中には私の仕入れた情報によると結構、曲者が揃っているわよ。」
「情報通だね絵栗珠は」
「まあ、私もいろいろコネクションがあるからね」
「それで、注意した方がいい人っているの?」
「教えてほしい?」
「教えるために電話してきたんだろ?」
「そうよ!相良君には勝ってもらわないとね。要注意人物!まずは春日優季菜。20代前半の女よ。彼女、一次試験も二次試験もトップ通過みたいね。それと、三輪裕太!一次試験は同点トップ通過。で職業はクイズ番組の賞金ハンターってとこかしら注意が必要ね」
(どっちもよく知ってるよ・・特に裕太は高校時代から知ってるしな)と答えたいところだったが「わかった注意するよ」と答えた。
「それと・・」
「それと?」
「この番組に警察の関係者も参加しているみたい。何人かね・・」
「ふ~ん、警察がなんでこのテレビ番組に・・」こっちの情報はためになりそうだ晋吾は直感的に感じた。
「なんでも、この番組宛てに脅迫文が送られてきたらしいわ」
「脅迫文が?なんで?」
「私の考えだとね。これは、警察が仕組んだ事なんじゃないかって思うんだよね」
「警察が脅迫文をテレビ局に送ってそれを口実に番組に警察官を送り込んでるってこと?」率直な疑問を晋吾が口にする。
「そういうこと。あくまで私の想像だけどね。それをするメリットって何だと思う?」晋吾に質問を投げかける。
三秒ほど晋吾は考えて・・
「確か・・・最強のニート決定戦ルールでは[優勝者が一般人でない場合、公務員や会社に属している場合だったときは、遺産の譲渡を無効とする]っていう項目があったと思う。でその場合は御堂賢一の秘書に遺産は渡される」
「正解!私も脅迫文の黒幕は御堂賢一の元秘書、紺野由美だと思うのよね。そして警察は紺野由美の計画をわかった上で協力している」
「なるほど・・警察も自分たちがいかに優秀かを国民に披露するいい機会なんでしょうね。たぶん選りすぐりの精鋭を送り込んで来ているね」
「ふふ、さすが相良君、まだ、入り込んでる警察関係者の名前は不明だけど。次の試験までは調べておくね!」
「わかった。助かるよ」
「あっ、いっけない!」今思い出したように絵栗珠が言う。
「ん、なに?」
「一番伝えたいこと、忘れるとこだった。この番組の参加者で一番の危険人物。」
「危険人物か・・誰?」
「長門大我!」
「ナガトタイガ?」
「高校生の参加者よ」
「わかった、覚えておく・・あっ絵栗珠!そろそろ始めないと・・三次試験。」
(優季菜とゲーム内で待ち合わせしてたんだった。)
「うん、頑張って、相良君!」そういって絵栗珠は電話を切った。