2011年5月7日① 親友との再会
2011年5月7日 午前3時30分
三輪裕太は少し早めに試験会場に到着した。
「あ~寒い!流石にまだ夜中だから冷えるな。」
春だというのにあまりの寒さに顔をしかめた。
「裕太?裕太じゃないか!」後ろから声がした。振り返ると赤い縁の眼鏡をかけて、肩まで髪の伸びた長髪の男が立っていた。
「ん?ああ、君か・・晋悟、ずいぶん久しぶりだな」
相良晋悟、同じ高校で高校生クイズでは一緒のチームで闘った仲間だ。
「見たよ、この前のクイズ番組、また優勝か・・さすがは裕太と言ったところか」
「六年か・・」裕太は言った。
「えっ!」
「高校を卒業してからの時間さ」
「ああ、そうだな6年ぶりだな」
「晋悟は、今何してるんだ?」
「俺?今は大学院に通ってるんだ。IT系のね。なかなか楽しいぜ・・裕太は相変わらずクイズか?」
(IT系か・・そういえば晋悟は数学とか科学が得意分野だったな、クイズでもこのジャンルでは晋悟に勝てなかったっけ・・)裕太は少し昔を思い出した。
「ああ、クイズで喰って行けたらって思ってる、まあ、この前の賞金1千万でしばらくまたリッチな生活ができるよ、そうそうこの前初めて、海外のクイズ番組に出てきたよ。もう少し英語が堪能になれば、海外でも全然いけそうだね。」
「学校は休んでも大丈夫なのか?」
「ああ、なんとか都合つけてきた、こんな面白そうな番組初めてだからな」
「そういえば、サッカー部で晋悟はスポーツも得意だったよな、しかも理系の試験がいつも俺より上だった、それで高校生クイズの時、こいつは使えると思って誘ったんだよ。」
「そういう、お前も、スポーツ得意だったじゃないか。クイズオタクなのに体育の時間じゃやたら張り切ってたしな、なんだこいつって思ってたよ」
「そういえば、晋悟、一次試験の時、東京会場にいた?」
「いや、俺は大阪会場で試験を受けてたんだ。大学院が京都大学だからさ」
「ああ、そうなんだ」
読売新聞東京本社前にセットされたステージに女性が立った、テレビ局のベテランアナウンサーだ。
「今日はお寒い中、また大変早い時間にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。」「それでは、二次試験の説明をさせていただきます」