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エリス・ミドル  作者: 飴色茶箱
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2010年11月27日 意志あるところに道はある

2010年11月27日


三日ほど寝ていたのだろうか・・・絵栗珠はベットの上で目を覚ました。


「ああ、先生。そこにいらしてたんですね。」


ベットの横で絵栗珠をじっと見つめていたサラサラの白髪で切れ長の目の男に話しかけた。


高橋一真。絵栗珠の美容整形の担当医だ。


表向きは美容外科の院長!裏の顔は「美の追求と不老不死」を生涯のテーマに掲げる闇医者。違法な臓器収集から薬の開発までありとあらゆる事に手を染めていた。


「先生?私は何日ぐらい寝ていたのでしょうか?」


一真はチラッとアエロナバルをみて「三日と13時間です」と答えた。


「結構、寝ていたんですね。私が寝ている間、世の中では何か変わったことありましたか?」


「フフ・・絵栗珠さん三日くらいじゃ世の中何も変わりませんよ」


「それもそうですよね」


世間の話題は市川海老蔵が酒の席で殴っただの殴られただのという、どうでもいいワイドショーを面白可笑しく連日やっていた。

こんな話題がトップニュース。なんて平和な国なんだと一真は思ったものだ。


「ああ、それにしても完璧だ・・君は私の最高傑作だよ。絵栗珠さん」


「ふふ、先生にそういっていただけると私も嬉しいです。」


亀井絵栗珠はニコッと笑った。



その笑顔を見て高橋一真はゾクっとした。

悪い感覚ではなく、体の下の方からゾクゾクする快感が込み上げてきた。

あまりにも美しい笑顔が観れたからだ。



「先生?ところで今回はどこを治してくれたんですか?」


「分からないかい?」怪訝な顔で一真は訊いた


「ええ、どこでしょうか?」もう一度、絵栗珠が尋ねる。


「全身だよ・・私が新たに開発した薬を全身に投薬した。

三日間の集中治療で肌年齢が10歳は若くなったはずだよ。とはいっても、君は元から美しいからそんなには実感はないかも知れないですけど・・」


絵栗珠はそういわれて自分の手を見て、さらに自分の顔に触れた。


「そう言われると・・なんだか10代の頃の肌に戻ったような感じがしますね。このハリ・・」


亀井絵栗珠は今年で36歳だが、見た目は本当に16・7歳くらいにしか見えなかった。


透き通るようで潤いのある白い肌。

艶のある黒髪。

そして、絵栗珠自身が気に入っているのは移植した目だ・・鮮やかで澄んだ緑色の目。

心臓病で亡くなったドイツ人とフランス人のハーフの少女から移植した目だ。


この目を買うのは苦労した、少女の親を納得させるのに2週間と6000万円の費用がかかった。

だが一真はこの苦労も絵栗珠の美しい姿を見るとすっかり忘れるのだった。


一真と会う前、絵栗珠はカラーコンタクトをつけていたが今はその必要もない。

日本人の良さを生かしながら、最大限に魅力を増大させていた。


「絵栗珠さんはいつも、私を信頼してくれて助かります。おかげで今回の研究も無事、終わりました。」


「ええ、私は一真先生の腕は信頼していますから・・それと、美しさに対する追求も・・」落ち着いた声で絵栗珠が喋り、鏡で自分の今の容姿を確認する。



絵栗珠と出会った時の事は今でも鮮明に覚えている・・四年前の渋谷・・

あまりの美少女が歩いてきているので思わず声をかけてしまった。


驚いたのは年齢、32歳。そんなことは微塵も感じさせない美しさと可愛らしさを備えていた。


彼女は京都出身で職業は京都大学の助教授。

そして彼女の祖父は地元では有名な名士だった。政界や経済界にも幅広い人脈があるらしい。


こんな完璧な女性が世の中にはいるものだなと高橋一真は不思議に思ったほどだ。


そんな完璧な女性の美しさをさらに引き出す。

一真はそれに喜びを感じていた。


あれから四年か・・そんな事を思いながら闇医者、高橋一真が不敵な笑みを浮かべた(時間は経つのにあの時よりも美しくなっている)


「ところで、絵栗珠さん・・・少し話題を変えていいですか?絵栗珠さんの興味を持ちそうな話題が手に入ったので・・」


高橋一真はエメラルドグリーンの絵栗珠の瞳を見つめながら言った。


「ええ、どんなお話ですか?一真先生」

絵栗珠はいきなり話題を変えたいと言った一真の言動が少し気になった


「絵栗珠さんは、御堂賢一という人物をご存知ですか?」


急に人の名前を出してきたので一瞬、一真が何の話題を持ち出したのか分からなかったが、情報経済学、教授の絵栗珠はすぐに自分の記憶と繋がった。


「御堂賢一ですか・・・確か・・日本で最も有名な投資家の一人ですよね」


「そのとおりです、さすが教授!お詳しい!」期待通りの回答に一真は冗談っぽく持ち上げ、説明を続けた

「資産総額は正確には公開されていませんが日本で10指に入る投資家であるのは間違いありません。で、その御堂賢一なんですが・・私の知り合いの医者の情報によると、肺癌でそう長くはないそうです」


「肺癌ですか・・・」この話のどこが面白いんだろうなと少し絵栗珠は困惑した。

全く自分には関係ない話ではないか・・


「で、この話の面白いところがですね。御堂賢一には家族というものがないんです。どうやら、幼いころから児童養護施設で暮らしていたそうです」


「そうですか。ということは御堂賢一が死んだあとは残された莫大な遺産はどうなるんでしょうね」絵栗珠は単純に思ったことを口に出した。


「そう、そこなんですよ、絵栗珠さん!さすが鋭いですね!」一真は絵栗珠の回答を絶賛した。


「そうねぇ、身寄りがないというのは面白くて気になる存在ですね。近いうちに会ってみようかしら・・おじい様のコネクションを使えば会えるとは思うんだけど・・ところで一真先生がこの話をされるということは先生は御堂賢一に何かをお望みですか?」


「はい、不老不死の研究にはそれなりに莫大な資金が要ります。御堂賢一がその気ならば私の研究も大きく前進するのですが・・」


「ああ、この間、お話しされていた、人体の完全移植の件ですね。確かに今、御堂賢一に上手く話をすれば・・・でもね、一真先生。私は先生のお話を聞いて、ほかの考えが浮かんだんです・・」


「他の考えが浮かんだ?」



「ええ、御堂賢一の資産をすべて、私のものにする計画が・・」



そう言った絵栗珠の美しいエメラルドグリーンの瞳の奥にダークな光が宿るのを感じた一真はゴクッっと唾を飲み込んだ。



恐ろしいほどの魔性の魅力を放っていたからだ。



そして期待と暗鬼の色が混じった声で聞いた。

「ほう、それは興味がありますね。そんなことが出来るものなのですか?」


「ふふ、不可能を可能にするのが私の趣味ですから。一真先生は私の座右の銘って知ってましたっけ?」



今度は楽しそうな表情をして絵栗珠は聞いてきた。



「知ってますよ!確か・・ジョン・F・ケネディーの・・・《意志あるところに道はある》でしょ」


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