2011年3月11日 待ち合わせ
2011年3月11日
東急大井町駅のスターバックスの入り口にツヤツヤな黒髪の制服を着ている少し不安そうな顔をした女子中学生が立っていた。
雑誌の切り抜きの写真と彼女を見比べて確認した亀井絵栗珠は彼女に近づいていきこう言った。「亜理紗さんですか?」
女子中学生は目を大きく開いて、応じた。
「はい!え~と・・亀井さんですね。めっちゃ早いですね。まだ待ち合わせの30分前なのに」
携帯で時間を確認しながら亜理紗は言う。
「フフフ・・亜理紗さんも早いじゃないですか。地震があったのできてくれないかと思ってたわ。ここに来る途中大変じゃなかった?」周りを見渡しながら亜理紗の状況を尋ねた。
「そうですね。ちょっと道は混んでたけど走ってきたんで、大丈夫だったです」
「今日は大変なことになっちゃったわね、あなたに話したいことがあるんだけど。また日を改めようかしら・・お父さん、お母さんが心配しているんじゃないかな・・早く帰らないと」
「パパとママならだいじょうぶ・・でも仙台の青葉区にいるおばあちゃんと連絡が取れないんだ・・心配で心配で心臓が痛い・・」亜理紗は少し青ざめたような顔をしている。
「仙台の青葉区ね・・」そう言って絵栗珠はスマートフォンをエルメスの鞄から取り出した。
「ええと、おばあちゃんの家は青葉区のどのあたり?」亜理紗に聞いた。
「下愛子です」
「下愛子かあ・・待ってて・・」
絵栗珠は地図を検索し地域データベースを取り出した。
「下愛子地区は仙台市の西の方ね・・地盤も強そうだし、津波の心配もないわね」
「ほんと?そうだといいんだけどなぁ」そう言いながらも亜理紗の不安な表情は消えなかった。
それを見た絵栗珠は今日、亜理紗に話をするのはよくないと判断した。
「亜理紗さん、今日は本当に家に帰った方がいいわ。でもおばあちゃんと連絡が取れないのは携帯の基地局が多分壊れているだけだとおもうわ。もし、明日になっても連絡が取れないようなら私が何とかしてあげる。」
「ありがとうございます。嬉しいです。」絵栗珠の力強い信頼できる表情を見て亜理紗に笑顔が戻った。