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エリス・ミドル  作者: 飴色茶箱
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2011年3月8日 記憶の中で人は甦る

2011年3月8日



紺野由美は御堂賢一に何回か連れて行ってもらった六本木ヒルズと東京ミッドタウンの間にあるBAR「アグニール」に入った。



カランカラン、扉を開くといつもの音がした。



店に入ると独特のクラシックな雰囲気・・今日はしっとりとしたジャズ音楽がBGM。


「あっ、紺野さん!いらっしゃいませ」

バーテンダーの佐藤が瞬時に紺野由美に向って、にこやかに挨拶をした。


「佐藤さん、こんにちは!」


「紺野さん、先日はお疲れ様でございました。葬儀はすべて紺野さんが取り仕切ったそうですね」


「いえ、佐藤さんも御堂のためにおいでくださって本当にありがとうございます。御堂も天国できっと喜んでいると思います。」


「そうだといいんですが・・」


「そうですよ!きっと」紺野がしんみりと言う。


「紺野さん、実は昨年のクリスマス・イブに御堂さん、いらっしゃったんですよ!」


「ええ、その事なら聞いています。自分の後継者を佐藤さんにも推薦してもらうんだって、言って出かけましたもの」


「そうですか・・紺野さんはご存じだったんですね。失礼いたしました。」


「それで、一つ聞きたいんですけれども・・」


「なんでしょうか?」


「その前にせっかくですし、一杯、頂こうかしら」


「アラウンド・ザ・ワールドはいかがですか?」


「ああ、御堂が一番好きだったカクテルですね」なんで佐藤がこのカクテルを勧めてきたのかすぐにわかった。


「はい、今日は私のおごりです。紺野さん。一緒に一杯だけ飲んでもいいですか?」


「ええ、喜んで!」




ミントとパイナップルの香りが広がった。




紺野と佐藤はそこに御堂が美味しそうに飲んでいる様子を想い出し、その匂いが二人の脳裏に生前の御堂賢一を蘇らせた。



「それでは、御堂賢一の冥福を祈って、乾杯!」

そう言って二人はグラスを合わせた。


「・・・で、紺野さん。聞きたいことというのはなんでしょうか?」


「ああ、そうでした。佐藤さんは、御堂に頼まれて、実際に誰かを《最強のニート決定戦》に推薦したのかなって思って・・」


「一人だけ、紹介させてもらいましたよ。とても、将来性のある青年です。」


「差支えなければ、お名前だけでも教えて頂けないでしょうか?」


「城戸さんという方です。残念ながら名字だけしかわからないんですよ。いつもそう呼んでいますから」


「どういう方なんですか?」


「若い商社マンです。毎日、忙しそうですよ。でも目を見るといつも生き生きしてるんです」


「佐藤さんが、いいというからには本物でしょうね。そのキドさんという方は・・」


「いつから始まるんですか?そのテレビ番組は」佐藤は聞いた。


「4月30日から収録が開始されます。予定ではそれから3ヶ月くらいです。なので、番組が放送されるのは8月以降になりますね」


「そうですか。今から楽しみです。城戸さんの活躍が・・」嬉しそうに言った。


「ええ、そうですね。私も応援しますわ」

そう言いつつ、紺野由美は別の事を考えていた・・

(キドか・・利用できるものなら利用しないとね。大我さんを優位にするために・・)


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