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仙女の碁盤!  作者: あべもちけい
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第14話 始動×囲碁!

「いろいろと、お世話になりました」

爛柯とまおは、西王母に向かって深々とお辞儀をした。

「そんなにかしこまらなくてもいいわ。あなた達とはもう、家族のようなものじゃない」

「そう、ですが」

昨日の昨日までは上司でしかなかった。爛柯にとっては。

まぁ、まおの方も実感があまりまだ沸いていなかっただろう。

煌びやかな仙界の衣裳に二人とも着替えていたが、まおにいたっては馬子にも衣装で、ある。

(まおにも衣装……?)

思わず吹き出しそうになるのを、爛柯は必死に堪えた。

「また、二人で遊びに来てちょうだいね」 

「……」

爛柯はどう応えようかと逡巡したが、それよりも先にまおの方が答えていた。

「はい! 何があっても、爛柯でまた、仙界に来たいと思います。今度は、みんなも呼んで!」

「それは楽しみね」

「まお……」

爛柯が複雑そうな顔をしてこっちを睨んでくるのが分かった。

まおは、どうどうと、爛柯を抑えつける。

「俺、絶対に来ますから!」

「~~~~~~」

こちらの事情は知っているはずだ。知っていてもなお、この男は……何か策でもあるというのか。

「まお、爛柯がキレないうちに、下界に戻すわね~」

「ありがとうございますっ」

二人は、光の中へ、消えて行ったのだった。

(あの子……強くなって。爛柯の事情は私も把握しているつもりですけど、いったいどうするというの……)

まおは、きっと、爛柯の事も世界の事も救う気なのだろう。

(男の子ねぇ……)

自分は、ここから見守る事しかできない。が、二人が帰って来るまで、ずっと待っていよう。

この世界で。

「まお、よろしく頼みます」


「あ、おかえり、まお、爛柯!」

戻った場所は店の中であった。メンバーも全員揃っていた。

「やだー、まお君、何その恰好~。花婿さんみたーい」

「げほげほごほごほっ」

弥生の茶々にまおはむせた。

「なんだ、まお。七五三はとうに済ませたのではないか?」

みお副店長が頭の上からつま先まで眺める。

「……まおにも衣装?」

みお副店長の言い方に、爛柯は我慢できずに噴き出した。

「わ、私と同じことを考えるんですね」

「おーい、言われてるぞー、まおー」

「言ったのは……母さん、じゃないですかっ!」

「……っ」

みお副店長はその言葉に思わず顔を綻ばせる。

「いやー……その呼び方を言ってくれるまで、約10年がかりだったねぇ……

母さん、嬉しいよ」

「……っ」

まおは、顔を真っ赤にして俯く。一同も、まおの肩を励ますように叩いた。

「その……爛柯っ?」

「え、私にも言えと?」

「こらこら、爛柯は娘じゃないだろう。養子でもあるまいに」

「いえ……この度、俺と、爛柯は、仙界で結婚して来ましたっ!」

「まお……っ!」

「えええええええーーーーーーーーー!!!!」

一同は大騒ぎである。

「あちゃー。せいぜい、実の親と仲良くなれるかなーくらいまでは予想していたけど、

それは予想の斜め上だった」

「ええ?! えええええ!?!? えええーーーーー!?!?!?!?」

弥生とコウが中でもパニックになってる。

「でも、めでたい話なら、喜ばしいことネ! 祝杯ネ!」

イネッサも祝ってくれていた。


「いやはや。これで、試合の方も勝ち進められれば本当に万々歳、だな」

「そうだ、みんなもそれぞれ、特訓していたんだろう。成果はあったのか?」

「全員、合格、だ。ま、地獄かと思うほどつきあってやったよ。いっしっし」

見れば、みんなどことなくげっそりしているかのようだった。

「で、大会の方も無事に申し込んできた。今回の大会はすごく革新的なことを

するようだね。一応団体戦、ではあるようなんだけど、やり方はペア碁のような

形で、メンバー全員がそれぞれ石を打つような形らしい。これならメンバー全員

参加できるな」

「なるほど。あくまでも頭脳戦、チームワーク戦という事か」

二人という単位ではないのが斬新だ。

「どうやら、フィールド環境や、自分の振られた能力によっても、

石の陣地の総力が変化していくらしい。今時流行りの携帯パズルゲームのような

感覚だな」

みお副店長は大会のパンフレットを爛柯に見せる。

「へぇ……陣地はあくまでも9路盤サイズか。その分、逆転の余地もあるわけだな」

「最後までどうなるか分からないというところだな」

「色は一人に一色づつ。味方の石の色が分からなくなる。まるで、一色碁のような感覚にも

なってしまう。ポカミスも引き起こしやすい。だが、取れた石の色によっても総数が変わってきたりもする」

「なるほど。今までにない囲碁、というわけか」

「よく考えたものだよ。これなら、プロ・アマチュア関係なく、初めての囲碁の戦いっていう事になる」

「まさしく、スーパー囲碁ネ!」

「なるほどな。どうやら、この大会の主催者は、囲碁界に新しい風を吹きこみたいのだろうな。

プロ・アマチュアの垣根のない世界を作りたいのかもしれない」

「……」

考え込んでいるまおをみお副店長は見つめた。

「まるで、AI囲碁そのもののっていう感じですよね。その発想。逆に言えば、プロ・アマチュア関係

なく、やっつけようというか」

「人間もろとも、っていう事か」

「……もしかして、AI囲碁って、黒石の意思だったり、しないですよね。黒石って言わば、白石よりも

弱いこと前提じゃないですか。それこそ、だからこそ、置き石なんていうものもある」

「まお、まさか」

「敵は黒石そのものである、という可能性も、ないかな」

「……なるほど。黒石そのものがおそらくは邪鬼そのもので、ある意味今回の事件は、黒石そのものの

デモのようなものか。そしておそらくは、黒石が自ら碁盤からいなくなった、と」

「爛柯みたいな存在がありえるのなら、そういう可能性もないのかなって」

「私の中にいる腸内菌が独立運動を起こしたようなものか」

「爛柯~~~~そのたとえは」

「いわゆる、囲碁の擬人化とかいう話ネ? それこそ今どきのアバターっぽい話ネっ!」

「……黒石と白石のかけざんはよくやってたけど、石単独での発想はしたことなかった!

新しい境地だわ! 囲碁の擬人化万歳っ!」

なぜか、弥生だけやたらと大はしゃぎである。

「そう言えば、これって、五行思想だネ? ほら、色も、青・赤・黄・白・黒だし」

ある意味、日本人より日本・アジア文化に詳しいイネッサであった。

「なるほど、五行思想か。だとしたら、この色の中に、白と黒が入っているのも納得だな。

だとすると、能力は、雷風・火・山地・天沢・水と。なるほどな」

「爛柯、それってつまり」

「囲碁は陰陽五行思想の影響がある。つまりは宇宙、神羅万象、だな。

もしすると本当は五色のゲームにしたかったのかもしれないが、あまりにも複雑になりすぎるから、

陰陽の白と黒だけにしたのだろう」

「ある意味原点回帰ネ?」

イネッサも感心してパンフレットを読んでいる。

「そんなハイパー頭脳戦だったらみんなお手上げだろうな」

話についていけていなかったコウも、ただでさえお手上げ、という感じであった。

「まぁ、ちょうど、仙女の碁盤の方も同じようなイメージで改良して来ていたから安心した」

爛柯は、アプリを起動させる。

「おそらくは……この世界そのものは私の心象世界のようなものだ。だからきっと、

このアプリとも連動されたものができているのだろう、という確証がある」

「なるほど」

「この世界が私そのものであるという事を逆手にとってみた」

「それぐらいの干渉は可能、ということか」

「まあ、な。ただ、VR酔いとやらはどうしても治らなかったが」

「平衡感覚の問題もあるからじゃないかな、それは。仕方ないよ」

「そうなると、みんなの足を引っ張る事になるかもしれない。すまない」

「今時は、そのぐらいの方が、萌えだネ!」

「確かに。その方が、みんな萌えるね」

「……萌え?」

爛柯は首を傾げ、まおの方を見るが、どうやらまおの方も分からない話のようだった。


「大会は、3日後か~! VR参加だから、こういう時移動しなくてもよくて助かるね」

「それまで、きっちり最終調整ができるな」

弥生とコウも、意気投合している。

「イネッサは、陰陽五行の勉強でもしてみるかなっ。何かに役立つかもしれないネ!」

「みんな、よろしく頼む」

「いや、ここは」

弥生が一同を見渡した。

「囲碁レンジャー、始動よ!」

「えい、えい、おー!」

一同はスクラムを組んで、叫んだ。

「いいなぁ、青春だな。私もこんな青春送ってみたかったなぁ」

みお副店長はしみじみと涙ぐんでいた。

「まだまだ、みんなこれからじゃないか。どんな困難な試合だって、逆転してみせるっ!」

まおは、ガッツを決めた。

「人生全てに言えるのかもねぇ」

みんな、大きくなったものだよ、としみじみと一同を見渡す。しれっと夏休みの宿題の事は

忘れ去ってしまっているようだが、それはそれ。世界の一大事を食い止めてから考えればよい。


「とりあえず、大会当日まではあとはゆっくり自分自身の調整をする事。

心身ともに、どっちも大事だからな?」

みお副店長は、最後に一同へそうアドバイスをするのだった。

「ありがとうございましたっ!」

コウと弥生とイネッサはそれぞれの家へと戻る。


「……やれやれ、やっと静かになったか。なぁ、まお、爛柯。大会まで後数日ある。

それまでさ、ちょっと、家族で旅行にでもいかないか?」

「今から予約なんて取れるのか?」

まおは疑問に思う。

「家族うんぬんに関わらず、ずっと、3人で旅行に行ってみたいと思っていたんだ。

安心しろ、すでに予約はとってある」

「旅行」

「爛柯も、電車とか乗るのははじめてだろう?」

「……ま、まぁ。それを言われると、バスすら乗ったことがない」

「この3日の間にさ、そこで囲碁祭りが開催されるんだよ。囲碁ファンが有志でやっている

お祭りらしいんだが、いろいろ囲碁三昧できて、楽しめるぞ?」

「囲碁三昧! 今時は、下界でもいろいろ囲碁のイベントがあるんだな」

「おー、爛柯の目が輝いている」

みおとまおは、お互い顔を見合わせた。

「イベントは基本ほとんど運営側だったからなっ。客として参加できること自体が喜びだっ!」

だが、喜び方が予想の斜め上であった。

「職業病だな、それ……」

やれやれ、とまおはため息を吐く。

「ま、喜んでくれるなら嬉しいよ」

「思えば、この3人で、写真も撮ったことなかったな。かれこれもう数週間経っているのに」

「そうだね。思い切り、笑顔で撮ろう。3人で」

「3人で!」

爛柯は、予想以上に、自分が旅行をする事に対して喜びを見出している事に気が付いていた。

(おそらく、これが、この世界での……)

仙界、下界、関係なく、自分最後の旅行になるのかもしれない。

だからこそ、二人が楽しんでくれるように、自分も振る舞おう。

せめて、この世界が好きだった、と思えるように。

爛柯は、祈るのだった。



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