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18ジャスミンの行動を問いたいだけなのに

「こ、駒沢、先生。ええと、私の友達が控室に行ったのが見えたので、どうしたのかなと思いまして。先生は、どうしてここに居るのですか。先生方もお昼の時間ではないでしょうか?」


「私も同じですよ。たまたま、朔夜さんを見かけたので、声をかけたまでです」


「そ、そうなんですか」


「ええ、それで、朔夜さん、もうすぐ二年生になりますが、ゼミの方はどこに所属しようと思っていますか?ゼミは三年生から始まりますが、早めに考えていくことは悪いことではありません。どこのゼミに行くのか決めかねているようなら、話を聞きますが」




「本当ですか!蒼紗さんは、私と一緒に駒沢先生のゼミを受けたらいいと思って、そのことを何度も伝えているのですが、なかなかいい返事がもらえなくて。先生自ら先生のゼミの魅力を伝えたら、きっと蒼紗さんも先生のゼミに入りますよ!」


「朔夜さん、どうでしょう。今日の授業後、時間があったら、私の研究室に立ち寄ってゼミについての話をしましょう」


 駒沢は、綾崎さんが一生懸命話しているのを無視して、私の方を向いて話しかけてくる。あろうことか、二人きりでゼミの話をしようと誘ってきた。話がゼミのことだけになるはずがない。私の特殊能力、さらには私の特異体質について追及されるかもしれない。


 私の能力と特異体質は、すでに九尾やジャスミン、車坂は知っている。今更、私を知る人が増えても問題はないだろうが、駒沢には知られたくなかった。駒沢は、独自の調査で私が能力者で特異体質なことを見抜いているが、それが本当かどうかの確信は持っていない。確たる証拠がないからだ。駒沢からのあの、嫌な視線が生理的に受け付けないし、彼自身の妖怪に関する研究に付き合わされるのはごめんである。そのため、何とか用事を作って、駒沢の誘いを断る必要がある。




「いえ、今日の午後はあいにく用事があるので、遠慮します。それに、私はおそらく、先生の話を聞いても、先生のゼミには入らないと思いますので、私と話すのは時間の無駄だと思います。それなら、駒沢先生のゼミに興味があり、入りたがっているそこの綾崎さんと二人で討論した方が、時間の有効活用だと思います」


「あ、蒼紗さん。そんな、もったいない。先生は忙しい人ですよ。その先生自ら話しを聞いてくれるというのに……。話だけでも聞いた方がいいです。先生の妖怪についての話は聞いて損はない……」


「綾崎さんは、少し黙っていてもらえますか!私は駒沢先生と話しています」




「ガチャ」


『アッ』


 控室にジャスミンがいるのをすっかり忘れていた。駒沢が来て、つい興奮して大声を出してしまった。私の声が大きかったのか、控室からジャスミンが顔を出した。そして、私たちがいることを確認すると、驚いた表情を浮かべていた。


「ぐ、偶然ね。蒼紗は控室に何か用事でもあったの?わ、私の用事はもう済んだから、部屋に入っていいわよ。ごめんね、私が使っているのに遠慮していたのよね」


「控室には用事はありませんが、ジャスミンには用事があります。授業後一緒にいつものファミレスで少し話をしませんか?いろいろ聞きたいことがありますので、嫌なら、力づくで」


「それって、蒼紗が言うと、シャレにならないんだけど……。でも、その誘いは、今日は無理。また明日にしてくれるかしら」


「いいえ、今日でお願いします」


 それは困る。今日でなくてはダメなのだ。ジャスミンが私の誘いを断れば、私は駒沢と二人きりで話す羽目になってしまう。



「今日が無理でも構いませんが、話を合わせてください」


 仕方ないので強硬手段に出ることにした。私とジャスミンの身長はそれほど変わらない。ジャスミンに近づき、グイっと胸倉をつかんで自分に引き寄せる。そして。耳元でこっそりとささやいた。


「駒沢が私と二人きりで話したいと言っているのです。ジャスミンは、私のことが好きですよね。だったら、どうすればいいのかわかりますよ、ね」


さらに、ふう、とジャスミンの耳もとに息を吹きかける。



「ななななななっ!」


 ぼんと顔から火が出るかと思うほどの勢いで顔を赤くなるジャスミン。効果てきめんだった。少女漫画などでこのようなシチュエーションはあるが、まさか自分が男の立場を演じるとは思わなかった。


 しかし、私は自分の服装を思い出す。このシチュエーションは、イケメンが女子の耳もとにささやくのであって、今の私の服装では滑稽でしかない。「ただしイケメンに限る」という言葉があるが、ジャスミンはその言葉を使わない人らしい。


 私の行動に、ジャスミンはしばらく放心状態だったが、ハッと我に返ると、駒沢に対して、びしっと人差し指を突き出した。先生に対して指をさすとは失礼極まりないが、今この場面においては注意しないでおこう。


「駒沢先生、残念だったわね。蒼紗はあなたより、私の方が好きみたいよ。だから、私との予定を優先してくれるそうよ。お気の毒に」


 勝ち誇ったように話すジャスミンの身体には興奮して自分を抑えきれないのか、うっすらとうろこのようなものが身体から出始めている。



「そういうことですので、駒沢先生、ゼミの話はなしということで。では、私たちはこれで失礼します」



「待ちなさ」


『さっさと次の授業の準備に取り掛かりなさい!』


 面倒になったので、つい能力を発動させてしまった。私と駒沢の周りが黄金に光りだす。そして、私の瞳も光っていることだろう。私の能力にかかった駒沢は無表情でわかったと言うと、おとなしく、私たちに背を向け、歩き出した。


「ふう、やっといなくなりました……」


「いや、綾崎さんが居るけど、どうするの?」





「大丈夫だよ。僕が記憶を消しておいてあげるから」



 またもや面倒な人が現れた。ジャスミンの様子を観察するだけだったのに、どうしてもこうも面倒事が押し寄せてくるのか、一度お払いをしてもらいに神社にでも行った方がいいのだろうか。



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